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泣きたいなら
R!u.
『泣くなら俺の前で泣けよ』
『1人で泣くなよ』
『俺がおるやろ』
〜♪✴︎
石井side
『結局、不仲営業なんでしょ?』
『そういうので売れるのはちょっとどうかな』
『それでしかやっていけないのが可哀想だよ』
不仲営業。
その言葉で俺たちは売れてきたって。
そう言われることが増えた。
でも、実際は違う。
ただ本当に自分たちのプライベートに割り込まない。
それだけなのに。
「なんで、こうなるんやろ…」
枕が涙で濡れていく。
最近、こうやって気づけば泣いていることが多くなっていた。
楽屋で何言われたって平気なのに、家に帰ると止まらなくなる。
ぶつけれる相手もいなくて泣くだけ。
『お前最近目腫れてないか』
珍しくネタ以外のことで話しかけてきた相方にギクシャクして、違うと言ってしまった。
『気のせいやろ』
あの時、もうちょっと言葉を変えて頼れていれば。
もしかしたら今1人で泣く時間なんて、もう無かったかもしれないのに。
…なんて、誰に期待しているんだろう。
新山side
「不仲営業か…」
今日、とある事務所の先輩芸人に不仲営業と言われた。
本当は仲良しでした〜なんてことも俺たちにはないし、不仲営業ではないんだけど。
まあそれで売れちゃったら周りもそんな風に思うかなーなんて。
石井が家へ帰ってから静かになった楽屋でぼんやり壁を眺めている。
そういえば、アイツ最近なんか静かやな。
一度思えば気になって、楽屋の椅子を引いて立ち上がった。
「行ってみるか」
車に乗って石井の家へと向かった。
石井side
もう、なにもしたくない。
一度泣いて体力が削られると体が動かなくなる。
起動しないロボットみたいだな、なんて自分で考えて乾いた笑いが溢れた。
【ピロン】
「…誰、」
横に置いていたスマホが音を出す。
見ると新山からだった。
<「お前、今家おるか」
「は、なんやねんコイツ急に…」
「おるけど」>
<「鍵空いてるか」
「閉めとるけど、なんで」>
<「家来た、開けて」
『は?』と返信しようとしたがコイツは何言っても引き下がらないだろうと思って玄関まで行く。
【ガチャ】
「…よぉ」
「よぉ、やないし。何しに来たん」
「まあまあええやん」
「ちょ、何入ってんねん勝手に…」
諦めて新山の背中を追いかける感じで部屋へ戻る。
「…朝より、目赤なってへん?」
「なってへんわ、気のせいやろ」
最悪、泣いたばっかだから朝より酷くなってんだ。
話題を逸らそうとして「座れば」とソファへ促す。
絶対、泣いてるなんてバレたくない。
どうせコイツの前やと涙も出らんやろ、と思っていた俺がバカだった。
新山side
石井の家へ、ほぼ無理やり入った。
石井は渋々といった顔をしていた。
気になってしまうのは、目。
朝も腫れていて気になったが、今は朝より酷くなっている気がする。
本人はなっていないと言っているが、その目で言われても正直説得力はない。
そもそも赤くなって腫れた理由はなんだ?
ふと浮かんだのは「泣いた」だった。
石井によってそんなことはないだろうけど、一理あるなとは思った。
最近先輩からの言葉も強いし、なんだか暗い雰囲気の時もある。
理由がわからなくてモヤモヤするくらいなら、実践してやる。
「おい、石井。」
「なんや」
「また先輩から不仲営業やって言われたで」
「…そうなんや」
どこか悲しそうな顔をする相方にもっと追い打ちをかけるように言う。
「そんなんで売れたって、全然すごいことちゃうとぞって」
「…」
「そこまでせんとお前らは売れんのかって」
「知っとるわ」
石井の声が部屋中に響いた。
やば、言いすぎた。
そう思うのは、一歩遅かった。
「…別に不仲営業とちゃうのに、そうやって言われて新山は平気な顔してられるん?」
自嘲気味に笑った石井の目から、一つ二つと雫が落ちていく。
やっぱり、こんな風に泣いてたから腫れていたのか。
そんな石井を見て、全部を石井1人で抱え込んでいるように見えた。
居ても立っても居られず、気がつけば石井は俺の腕の中にいた。
石井side
新山の前でだけは泣きたく無かったのに。
溢れ出したら止まらないのを知っていたのに。
気がつけば俺の体は新山の腕の中に収められていた。
「…なんで1人で抱え込むんや」
いつもと違うトーンの、なんだか変な新山がいる気がする。
でもそれが心地よくて、背中に回された手に力を入れる。
「俺だって、さや香やろ。お前の、相方やろ」
また、涙が溢れていく。
「辛くて泣いてまうなら、別にそれでもええよ」
でも、と後付けするように少し体を離し目を合わせる新山。
「泣くなら俺の前で泣けよ、1人で泣くなよ。…俺がおるやろ」
その言葉を聞いた瞬間、完全に力が抜けてその日の記憶はもうなかった。
でも、ただ安心した。
俺は1人じゃないって。
そう思えた日だった。
end
お話に付き合ってくださりありがとうございました♪
ぜひ次の作品更新までお待ちください♪
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