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めりーくりすます
るーとに
イルミネーションが飾り付けられ、キラキラと輝くツリー。街ゆく人々は笑顔を浮かべ、おそらくカップルだろうか。とても楽しそうに言葉を交わしている。
かく言う僕も、彼女がいる。所謂リア充という人種なのだろう。
「ねぇ、見て見て!クリスマスツリーめっちゃ綺麗じゃない?」
「そうだね」
彼女は楽しそうに街を歩く。そんな彼女を見れて、僕も幸せだ。
そうこうしている内に、時間は過ぎ、楽しかった時間も終わりを迎えようとしている。
都心部だからか、まだイルミネーションの明かりはついていて、人も少なくない。
時計の針が進むごとに、僕が彼女と居れる時間は少なくなり、やがて。
(なんか寒気が..そんなに気温は低くないはずなんだけどな)
「クソッ、リア充が..!」
ナイフを持った男がこちらに走ってくるのが見えた。彼女だけは、と直感的に思ったが、気づくには少し、遅かった。
ザシュッ、という音が聞こえるかと思ったが、そんなことはなく無音だ。強いて言うなら服を貫通した時の音くらいしか聞こえないだろう。
真横で最愛の彼女が刺されたというのに、僕はいたって冷静だ。おかしいことだとは思っているが、自分でもなぜ動けないのか分からない。
彼女は自身の腹に包丁を刺された瞬間は、刺されたことに気づいていない様子だった。
しばらくして、彼女は痛みで悶え始めた。そこで僕もハッとして、焦りが出始めた。地面には彼女の血が垂れ、血溜まりが出来ていた。額には変な汗が滲み、そこからはあまり覚えていない。
もう、最初から最後まで、訳がわからなかった。
(もし、彼女と僕が付き合っていなかったら、彼女は..)
今日も水を入れ替え、米をよそい、線香を立てる。
ふと外を見ると、まだクリスマスのムードが抜けきっていないのか、ツリーにはまだイルミネーションが輝いている。
訳の分からないお話です。クリスマスは様々な人に幸福と不幸を届けるのかも知れませんね。