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文ストワンライ詰 BL Part2
今回は太中
時間なくて一本です
太中版深夜の真剣お絵描き60分一本勝負
太中版深夜の真剣文字書き60分一本勝負
本日のお題は「林檎」です。制限時間は60分。
https://shindanmaker.com/719301
※黒時代の話。n番煎じです。林檎要素薄い。今度書き直すかも
「ねーえ、治さん」
ある招宴会場で、俺は近くにいる一組の男女を見ていた。
男は包帯を身体中に巻き付けている。
甘い声を出しながら包帯の腕に女が絡みついている。
包帯の男はそれに見かけだけは困ったように笑みを浮かべた。
女が包帯の男の方を誘惑している、という風体だ。
だが、実際は逆なのだと俺は知っている。
「酔ってませんか? 大丈夫?」
「んー、一寸……」
女は何かをねだるような声を出しながら、絡んでいる腕を胸に押し付けた。
隣にいる俺の方にまで香水が漂ってくる。
張り付くようなその香りは、嗅いだ覚えのあるものだった。
恐らくは、薬に慣らす過程で。
僅かな催淫効果のあるものなのだろう。
女の目的は包帯の男……つまりは太宰を堕としたいのだろう。
「本当に大丈夫ですか? 部屋借りましょうか」
「うん……」
太宰の言葉に女が僅かに笑った。
女を絡み付かせたまま太宰が此方に歩いてくる。
俺は目線を外してグラスに口をつけた。無関係の人間に見えるように。
自分の耳がテノールを拾う。
「作戦暗号、『|鶲《ひたき》の|餌《え》は林檎』」
ちらりと見たその目は一切笑っておらず、唇の端には邪悪さが滲んでいた。
--- ーーー ---
「中也ー」
「こっち来んな青鯖! 化粧臭ェ!」
「えぇ、嘘」
任務も終わったあと。太宰が手を伸ばして絡みついてきた。
俺も血みどろだが此奴もなかなかだ。
この会場自体がそうなのだから仕方なくはあるが。
それよりも臭う、と文句を言うと太宰は袖を鼻に押し付けて確認している。
「先刻の香水と化粧やら、なンやら混ざってるぞ」
「うぇー。シャワーは浴びたのに」
太宰は顔を歪めた。余程嫌なようだ。
まあ、そんな香りを好んでつけるような奴は居ないだろう。
そんな事よりも任務の確認だ。
「情報は?」
「此処だよ」
彼奴はそう言うと外套の|衣嚢《ポケット》に手を入れた。
指には小さなSDカードが摘まれている。
今回の任務は、ある組織が手にしていた情報を盗み、かつ組織を殲滅する事だった。
この招宴はその組織の長と傘下企業が参加するもの。
太宰に絡んでいた女は、その目的の情報管理を行なっていた者だった。
「あー、疲れたっ! もう面倒くさいったらありゃしない。あんまりにも気持ち悪いから本番はしなかったけどさぁ」
「重い! 退けっ」
俺がそんなことを考えていると上から重いものが覆い被さってきた。
近くに首元に柔らかな熱を感じるが、それと共にやって来る臭いに辟易する。
其れに苛々しながら、俺は今回のことを回想した。
今回の作戦は、色を使ったものだった。
彼奴の言葉を訳すると、余りにも気持ち悪かった為にさっさと触って殺したのだろう。
全く、どんな|技巧《テクニック》なら、短時間でこんなにも臭いが残るほどになるのだろうか。
女の敵にも程がある。
(けどなぁ)
俺は思った。
『|鶲《ひたき》の|餌《え》は林檎』
この作戦暗号は太宰が考えたものだ。
林檎。これは誘惑や罪などを象徴するものだ。これはわかる。
だが、鶲とは。
肉食である点は、おそらく俺がその隙に行なう殲滅を指すのだろうが。
「なァ、太宰」
「んー?」
太宰が俺に覆い被さったまま返事をする。
肩のあたりにぐりぐりと押し付けられている頭が重い。
「作戦暗号。あれどう言う意味なんだ?」
「ああ、あれ?」
太宰はそう言うとふふっと笑った。
「教えてあーげない!」
「ハァッ!?」
「体も頭も小さなワンちゃんには教えてあげないよー!」
「何だと!?」
そうして何時もの喧嘩に発展していった。
会場を去っていく二人の空には、林檎のように赤く染まった月が浮かんでいた。
(止まり木の元に必ず戻ってくる|鶲《ぼく》のご褒美は、選んだ恋)
眠り姫です!
最近難産が続いて(というか産まれてない)のでリハビリに。
待ってくださっている方々、申し訳ありません!
どうかこれでお許しを
ここまで読んでくれたあなたに、心からの感謝を込めて!