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文スト数年後妄想
ト書き(台本風)です
メモ書きの集大成みたいなものです
かなりの妄想の産物です
キスも何もしていませんが、性的関係をチラッと匂わせる描写が最後の方にちょこっと、少しだけ出てきます。(ハグ程度)
それでも良い方は、どうぞ。
また、縦書きでも見れるようにしています。
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太中 太宰の旅立ち
中也の家。
夕食をせびる太宰に、中也がキレながら用意する。
中也「ん」
太宰「わー! パスタ?」
中也「残さず食えよ。……味の素はかけんじゃねェ」
二人にしては珍しく、穏やかな時間。
夕食も消え、太宰がソファに寝そべっている。
その傍で中也が本を読んでいる。
突然、太宰が口を開く。
中也、目を本からあげ、本をテーブルの上に置く。
太宰「四年前、ちゃんと『行ってきます』聞いてくれてありがとうね」
中也「……」
中也、その話か、と思い視線を外す。
中也「車の爆破はやりすぎだろ」
太宰「ごっめーん、つい!」
中也「つい、で済む話じゃねェッ!」
てへぺろ、とあざとい表情で返す太宰。
中也はそれを半目開きで睨むと、そっぽを向く。
中也「……『ただいま』にも返してやったろ」
再開した時の地下牢での《《仕込み》》のことだ。
そっぽを向いているが、少し恥ずかしそう。
太宰、それを見て微笑む。
太宰「(微笑)そうだね」
沈黙。
太宰が緊張したように、手を握ったり開いたりしている。
中也、気づいているが何も言わない。
結局言おうとしていたことは言わずに、違うことを言う。
太宰「ねえ」
中也「何だ」
太宰「これからだって。『行ってきます』ちゃんと聞いてね」
中也「……おう」
その日はいつも通り。
何となく夜が更け、いつもと同じような過ごし方をする。
数日後。朝。
中也、サイドテーブルに置かれた高そうな箱が目に入る。
自分が置いた記憶はない。
人を呼んだ記憶もない。
警戒しながらもそれを手に取り、開ける。
中也「ははっ……(まじか)」
呆れた笑いだが、表情は嬉しそう。
箱の中には、真新しいチョーカーが入っていた。
プラチナ色のバックルに施された装飾が美しい。
中也、大切そうにそっと触れる。箱の底にはメモがある。
メモ『À bientôt.』
中也「(苦笑)また会うのかよ…………(小さく笑って)Bon voyage.」
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芥敦 不殺の約束
どこかのひらけた土地。戦闘の後が色濃く残る。
敦「このままだと死ぬよ? 僕も、お前も」
芥川「……」
二人とも、すでにぼろぼろ。元から瀕死に近い。
芥川は羅生門を敦の首筋に当てている。
対して、敦は爪を芥川の喉元に当てている。
敦「……芥川」
芥川「僕は……この時を待ち望んできた」
敦、静かに頷いて。
敦「そうだな」
芥川「この羅生門に命を下せば、貴様を亡き者にできる」
敦「ああ。多分、僕の爪よりもお前のほうが早いだろうからな」
淡々と返す敦。ゆっくりと爪を下ろす。
敦を見て芥川は苦しげに眉を寄せる。
芥川「だが、何故僕はこの羅生門を動かせぬ!?」
敦、静かに芥川に目を合わせる。
芥川「此処で貴様を倒せば、己が強いという何よりの証拠に……! 太宰さんに認められる何よりの……! っ……!」
焦燥感を滲ませるが、やはり芥川は羅生門を動かせない。
苛立ったのか一度羅生門を引き、一気に当てようとする。
だが、それも寸前で無意識に止めてしまう。
敦「……」
芥川「……何故……僕はこうも弱いのか」
芥川、俯いて独り言のように呟く。
敦、それにやっと口を開く。
敦「弱くない」
芥川、俯いていた顔を上げる。
敦「お前は、弱くない。この僕がいうんだから、間違いない」
芥川「だがっ! 現に僕は貴様を殺せていない!」
敦「それが、弱くない証拠だ」
芥川、驚いたように敦を見る。
此処ではじめて、本当の意味で目が合う。
芥川は敦の目にびくりと肩を揺らす。
敦「人を無闇に殺すことじゃないことを、知ってるんだ。殺すことを、躊躇うように……って、なんか上から目線だな」
敦、軽く笑う。芥川、毒気を抜かれたように呆然とする。
敦「提案があるんだ」
芥川、敦に目で問いかける。
敦「不殺の約束を、改めよう。六ヶ月じゃなくて、どちらかが死ぬまで。どちらかが瀕死の状況になったら、とどめを刺しに行く。どうだ?」
芥川「(困惑して)……」
敦、その反応に慌てる。
敦「別にこれがずっとの契約じゃなくって良い。そうだ! 毎年此処にきて変えていこう。その時の僕らに会うように」
少しの間沈黙が流れる。
敦、緊張した面持ちで芥川を見る。
芥川「(呆れたように)貴様らしい愚かさだな。……だが、よい」
芥川、羅生門を消す。
敦、首から消えた緊迫感に呆気に取られる。
芥川「その契約、受けてたとう」
芥川、いつも通りの余裕ある風体で敦を見る。
敦「(吹き出して)何でそんな上から何だよ! ……わかった、相棒」
芥川「(ジト目で)やはり破棄したくなってきた……」
敦「何で!?」
二人一緒に歩いて行く。
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一、二年後 探偵社の小さな騒ぎ
乱歩「ねー、国木田。テレビ借りて良い?」
国木田「良いですが……。どうされました?」
乱歩「ちょっと面白いものが見れそうだからさ!」
乱歩、テレビをつけて、目当てのものを流す。
テレビ「紛争地やテロ予告のあった都市にいつのまにか現れては、人と未来を救い、消えて行く……ネットではBlackと呼ばれ、ファンも続出する謎の人物。……クローズアップNow。今日は、Blackと呼ばれる謎の人物に、迫ります」
有名なテレビ局の特集。
ナレーションとともに、どこかの停戦地の映像が映る。
テレビ「此処は〇〇国〇〇地方。つい二ヶ月前まで、紛争の続いていた地域です」
ゆっくりとテレビの中のカメラが動く。
瓦礫や、子供たちを映す。
風景はかなりの惨状だが、子供達の表情は何故か明るい。
その時、テレビが何かを映しだし、乱歩が笑い出す。
乱歩「ぶっ! あはっあははは! んふふふ」
笑いが止まらない、と言った様子でソファに寝転ぶ乱歩。
何度も同じ場所を再生する。
それが気になり、与謝野もテレビを覗く。
与謝野「どうしたんだい乱歩さ……ふは! こりゃさいっこうだ! あははは」
与謝野も腹を抱えて笑い転げる。
古参二人の有様に、他の探偵社員たちもテレビに群がる。
ぱりん、という音がする。
国木田がメガネを破って、ふらりと床に倒れてしまった。
そんな社長の有様を気にもとめない社員たち。
全員あっけに取られている。
乱歩によって、同じ場所が再生されているテレビ。
見たものの反応はさまざまだ。
潤一郎「……へっ!?」
ナオミ「まぁっ!」
賢治「あっ!」
鏡花「……うわぁ……(信じられないものを見る目)」
敦「……えぇえっ!?」
テレビには画面端の気づくか気づかないかのところ。
そこにギャルピをして笑う太宰の姿が映っていた。
敦「……太宰さん……(あなた何やってるんですか……)」
その時、足音もなく後ろから声が聞こえる。
太宰「呼んだ?」
一同、声のした方をハッと見る。
玄関前に、スーツケースを引く太宰の姿があった。
太宰「あ、それこの前のじゃないか! BHKの撮影してるなぁって思ったからポーズをとっていたのだよ! 驚いたかい?」
目をキラキラとさせて見詰める太宰。
その胸ぐらを、復活した国木田が掴む。
国木田「太宰ッ! 貴様!」
太宰「痛いよぉ国木田くん。あ、間違えた。国木田しゃ・ちょ・う!」
語尾にハートマークのつきそうな勢いでいう太宰。
国木田が胸ぐらを掴んだまま揺さぶる。
その仲裁に敦が慌てて入る。
敦「お、おお落ち着いてください!」
国木田がハッとしたように太宰を離す。
太宰「(敦をみとめて)敦くん! 大きくなったね」
左手を嬉しそうに振って挨拶する太宰。
それを横から見ていた鏡花が、その左手に目を止める。
鏡花「あなた……結婚したの?」
そう言われて、敦が太宰の左手を見る。
左手の薬指に、プラチナリングが収められていた。
装飾が美しい。
国木田「なっ! 貴様、現地で結婚したのか!?」
慌てたようにいうが国木田。
太宰は手を振って否定する。
太宰「まさか! 現地で色々あるから、既婚者ってことにしてしまおうと思って買っただけだよ」
けたけたと笑う太宰。嘘っぽい。
他の社員も太宰に群がり、質問を始める。
質問というか尋問。
皆、太宰自身の出来事よりも指輪の方に興味津々だ。
太宰「よしっ、じゃあ賭けをしようか!」
一同「賭け?」
太宰「この指輪のもう一人の主を当てられた人に、今日の昼食を奢ってあげよう! 勿論際限なくとは言えないけれどね」
敦「やっぱりお相手いるんじゃないですか」
太宰「わからないよ? 私が嘘をついて賭けを始めようとしているのかもしれない」
ニコニコと笑う太宰。
太宰「さあ、挙げてって?」
一気にみんなから声が上がる。
昼食を奢る、と言われたため、みんな目の色を変える。
敦「依頼人の娘」
太宰「違う」
潤一郎「女優」
太宰「違う」
賢治「喫茶の給仕の方!」
太宰「違う」
鏡花「旅客機添乗員」
太宰「違う」
国木田「旅人」
太宰「違う」
敦「作家」
太宰「違う」
潤一郎「企業の社長」
太宰「違う」
ナオミ「ホステス」
太宰「違うけど……私はそういうタイプに見えるのかい?」
ナオミ「ええ」
太宰「ええー……」
傷ついた、という太宰に、会話の流れが一瞬止まる。
その時、与謝野が爆弾を落とす。
与謝野「森医師」
一同「は?」
空気が固まる。
惚けた面持ちの一同の中でも、太宰が一番ひどい。
太宰「え与謝野女医あの本気で言ってます? あのロリコン? 無理です生理的に無理です無理無理」
此処までを一気に言った。本気で嫌がっている。
鳥肌が立ったのか腕をさすっている。
与謝野「冗談だよ。冗句の積りだったんだが……正直そこまで嫌がるとは思わなかった」
若干引いた様子で眺める与謝野。
ずっと静かな乱歩に気づき、太宰が声をかける。
太宰「良いんですか? 乱歩さん」
乱歩「別に興味がないからな。そもそも僕が入ったら一瞬で当てられるけど、良いの?」
乱歩がニヤリと太宰の方を見る。
太宰「おっと、遠慮しときます」
へらりと笑いながら両手をあげ、降参の意を示す太宰。
それに満足そうな顔をする乱歩。
乱歩が手を叩く。
乱歩「ほらほら、もうすぐ依頼人きちゃうんじゃない? 太宰も。用があるんじゃないの?」
一同「はあい」
太宰「(苦笑)乱歩さんは変わりませんねぇ……」
乱歩「いや? 僕も変わったよ? 与謝野さんに糖質制限始められた」
太宰「おやまあ」
乱歩は、もう用はないというように戻っていく。
敦、太宰に近づくが、声をかけることを躊躇う。
太宰、左手に視線を落とすと、顔を上げる。
太宰「じゃあねー! あ、私はもう少しヨコハマにいるから!」
そう言ってドアを開けて去っていく太宰。
敦「嵐だった……」
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一、二年後 ポートマフィアの小さな会話
ポートマフィアの首領室。
芥川が任務の報告に現れる。
芥川がノックをする。
中也「入って良いぞ」
芥川「失礼します」
中に入ると中也が机につき、書類仕事をこなしている。
中也「お、芥川か。報告書だろ? お疲れ」
芥川「いえ、当然のことをしたまで」
中也が、芥川から渡された報告書を読む。
中也「……ん、良い結果だ。何より、標的を殺さずに吐かせたのが良い。……不殺の掟だろ? よくやってるな」
中也が芥川に小さく笑いかける。
芥川が少し恥ずかしそうに目を逸らす。
芥川「敦の言うこと成すことは突飛なものばかりです……話は変わりますが、首領」
中也「なんだ?」
芥川、ポケットから携帯を取り出す。
芥川「敦からこんな動画が送られてきたのですが……」
そう言って中也に見せる。
見せているのは、先の番組の太宰が映っていた場面。
中也、それを見て呆れ返った顔をする。
中也「……(心底呆れて)彼奴、何してんだ……」
芥川「この後、太宰さんが探偵社に帰ってきたそうで。そう言えば、首領も太宰さんから土産を送られていますよね」
芥川、そう言って首領室の隅の方を見る。
そこには置き場に困って放って置かれた土産の山がある。
おかしな人形、色使いのおかしい何かの壺……。
世界各地の変なものをまとめたような感じ。
中也「……あれに触れないでくれ。俺だってあれを視界に入れないようにしてんだ……」
視界に入っただけで苛つく、と頭を掻きながら言う中也。
芥川「ご愁傷様です……。先ほどの話ですが、その後、太宰さんの指にされたリングの話になったそうで」
中也「はあ……?」
芥川「お相手が誰なのかと言う話になったのですが、誰一人として当てられず」
中也「……」
芥川「して、首領。どなただと思われますか?」
中也「そうくると思ったよ! 俺に訊くんじゃねェ!」
大きな反応を見せる中也。対して芥川はいつも通りだ。
芥川「僕も、作家などではないか、と返事をしたのですが違うとの答えが返ってきました」
中也「勤務中に何でメッセージのやり取りしてんだ手前ら」
中也、呆れたように言う。
芥川「だから言ったでしょう。彼奴……敦の行動は突飛だと」
中也「いや手前が無視しろよ」
芥川「それが難しいもので」
芥川、無表情で答えるが中也に突っ込まれる。
中也、ため息をつくと芥川に口を開く。
中也「(ため息)下がって良いぞ。よくやったな。作戦に入った部下たちにもそう伝えておいてくれ」
芥川「承知」
芥川、一礼して首領室を出る。
中也以外誰もいない部屋。
中也、無意識にチョーカーのバックルに触れる。
五大幹部時代とは違うチョーカー。
あの時の、『行ってきます』の代わりのものだ。
中也、呆れや期待などの混ざったため息をつく。
中也「……はぁ」
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太中 夜の一幕
中也、セーフハウスのうちの一つにつく。
鍵を開けようとする中也。
だが、オートロックが開いていることに気づく。
中也「……まさか」
中也、そのままドアを開ける。
太宰「あ、お疲れー。流石はマフィアの首領。残業してたの?」
リビングのテーブルで太宰がワインを開けていた。
色味からして、年代物のワインを開けている。
ワインのラベルは、ロマネ。
中也「手ッ前! 俺の秘蔵のワイン開けてんじゃねェ! この不法侵入者!」
太宰を殴ろうと中也が踏み出すが、防がれる。
太宰「当たらないよー、そんなんじゃ。と言うか首領になっても脳筋のままなの? 姐さんやヴェルレーヌさんに迷惑かけてない?」
中也「余計なお世話だッ」
イライラとしながら台所で手早く手を洗う。
玄関近くにはスーツケースが放って置かれている。
挨拶回りを終えた、その足で来た、と言うふうだ。
太宰「吊れないなぁ、君と私の仲じゃない」
中也「どんな仲だよ」
太宰「(少し考えて)……さあ?」
中也「分かんねェなら言うなよ」
中也、悪態をつきながら、下準備をした牛肉を出す。
数分後には美味しそうなつまみが出来上がっていた。
太宰「お、仕事が早い。牛肉の煮込み?」
中也「もともとロマネは今日飲もうとしてたんだよ。ったく、人のワイン取りやがって」
太宰「蛞蝓にはこんな良いワイン勿体無いよ」
中也「ンだと!?」
昔のように悪態をつく二人。
一、二年会っていなかった空気など感じさせない。
数時間後、太宰が中也からグラスを取る。
太宰「そろそろ止めないと明日に響くよ。君弱いじゃない」
中也「ぐっ……(何も言えない)」
ボトルは空になっている。
中也の目がアルコールで少し潤んでいる。
太宰「君ねぇ……それ他の人の前でやってたりしないよね」
中也「は? 何がだよ」
太宰「……なんでもない。あ、私またすぐにヨコハマ出るから」
中也「……そうか」
目を閉じる中也。手に顎を乗せ、リラックスしている。
それを眺める太宰。
太宰、ふいに口を開く。
太宰「こういうのでも良いの?」
中也「何が」
太宰「私たちの関係」
その言葉に中也が目を開けて太宰を見る。
太宰はいつになく静か。
中也「手前が世界を見たいんだろ」
太宰「……うん」
中也「(笑みを浮かべて)なら良いじゃねェか」
その言葉に数秒間押し黙る太宰。
数秒後、中也に寄りかかる。
太宰「そっか。そうだね」
中也「……」
中也、黙って腕を太宰の肩に回す。
その瞬間、中也の体が反転する。
太宰が、してやったり、と言うように笑っている。
中也は、自らの上に乗る太宰を見上げた。
太宰「さて、どうせなら世の恋人がするようなことをしても良いんじゃないかい?」
中也「……リビングじゃねェなら考えてやる」
挑発するように笑って、太宰の首に手を回す中也。
太宰「(少し拗ねたように)可愛くないなァ、もう」
窓の外には、月が上がっている。
・
眠り姫です
妄想してたらなんか……こんなんができてました……
妄想の段階だったのでト書きです
補足を入れると、太宰さんは“ヨコハマに縛られずに織田作の言葉を守ること”“他の世界のあり方を知ること”を目指し、世界を飛び回っています(こんなふうに変わってたらいいなーと言う希望的観測から)
Blackの正体が太宰さんです
なんか誰かに読んで欲しくなった
いつか小説にする、かも