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【第一章】5.休み時間の恋バナ
「はあぁあぁぁあ…」
「おっ、星羅のクソデカため息…何かお悩み?」
「マジでさぁ…」
塾に通い始めて一ヶ月、冬休みまであと二日と言ったところかな。
私のため息の原因は冬季講習や宿題だと思われることが多いが、そちらより大きな問題が私の脳内を陣取っていた。
「真面目に|高井《たかい》先輩に冬休み中会えないとか無理なんだけど!……っったぁ…!」
教室の喧騒の中ばん、と机を叩いて立ち上がると、椅子がバランスを崩して倒れ私のスネに直撃する。鈍い痛みに悶絶していると、それを笑いながら見ていた友達──なっちゃんこと|斎藤 奈津子《さいとう なつこ》が口を開いた。
「相変わらずの恋愛脳だねぇ、まぁわからんでもないけどさー」
「でしょ?そんで卒業近いでしょ?無理!!!」
高井先輩というのは、私がこの前まで所属していた陸上部の|高井 修《たかい しゅう》先輩のことだ。私の一つ上だから今受験生で、部活は夏頃に引退している。
同じ短距離の担当だったのもあってすぐに仲良くなり、いつの間にか好きになり、片想いを拗らせていた。
「でも高井先輩かー、確かに背は高いけど顔はあんまりじゃない?」
「なっちゃんにはあの良さがわからんかぁ…ってか世間一般的にも高井先輩は割とイケメンじゃない?」
「だってあたし一重とか奥二重好きだもん。塩顔以外はイケメンのうちに入りませんー」
しっかりセットしてあるポニーテールを揺らすと、なっちゃんはにしっと笑った。
こう言うお茶目なところがある彼女は結構モテるが、恋愛に厳しいタイプなので元カレは一人だけである。どこかの糸目とは違って。
「そういやなっちゃんの歴代彼氏みんなそんなだわ」
「歴代って…今の彼氏と元カレしかいないでしょ」
お互いに笑い合っていると、休み時間終了のチャイムが鳴る。離れた席のなっちゃんが自分の席に戻ったのを確認すると、国語の教科書を開いた。