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私は間に合わなかった
˚₊⭑‧꒰ა 𝙼 𝙰 𝚂 𝙸 𝚁 𝙾 ໒꒱ ‧₊⭑˚
こういう一夏の恋と愛する人が死んじゃう系好きなんですよね。
エモい!
ここにミステリーとタイムワープが加わると傑作です!!…と思いませんか?
夕立のあとの空は、疲れた薄い青をしていた。
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あの人は、一途だった。
誰が見てもわかるくらい、まっすぐで。
私だけを見ていることを、隠そうともしなかった。
「また連絡するね」
「無理しないでね」
何気ない言葉の端々に私のことを思っているのが伝わってきたのに、
私はいつも、笑って、軽く受け流してしまった。
本気にしたら、怖かったから。
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「夏が好きなんだ。終わりがあるから」
溶けかけのアイスを渡しながら、彼は言った。
その横顔は、真剣だった。
「終わるってわかってるとさ、大事にできるじゃん」
あのとき私は、冗談めかして答えた。
「なにそれ、ポエマー?」
好きって言われる前から、わかっていた。
あの人が、私を好きだってこと。
でも、言葉にした瞬間に壊れてしまいそうで。
軽い関係のままなら、失わずに済む気がして、自分が傷つかずにすむようにずるいまま黙っていた。
電話が鳴ったのは、蝉も命が尽きる前に精一杯ないていた午後だった。
事故だったという。
あっけなくて、現実味がなくて。
「え…?」
病室で見た彼は、眠っているみたいだった。
今にも目を開けて、「やあ!」なんて笑いそうだった。
その手に触れたとき、やっとわかった。
冷たい手は「終わりは、本当に来る。」と語っていた。
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「終わるってわかってるとさ、大事にできるじゃん」
どうして、あのとき。
どうして私は、ちゃんと好きって言わなかったんだろう。
四年経った今も、夏になると息が詰まる。
別の誰かと歩いていても、笑っていても、ふとした瞬間に思い出す。
くしゃっと顔を歪めてちょっと困ったみたいな笑い方。
私の小さな変化にすぐ気づくところ。
何度も言いかけて、私を困らせると思ってやめた「好き」。
あの人は、一途だった。
きっと、最後まで。
伝えきれなかった想いを抱えたまま、
それでも、私を好きでいてくれた。
それなのに私は、
好きだと知っていて、何も返さなかった。
気づいたら何も残ってなかった。
彼をあっけなく失ってしまった。
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今年も、コンビニで同じアイスを買う。
ひと口かじると、甘さが胸に刺さる。
ねえ。
あのとき、ちゃんと好きって言えていたら、
何か変わったのかな。
たとえ結末が同じでも、
あなたの最後の夏に、私はちゃんと隣に立てたのかな。あなたを笑わせてあげられたのかな。あなたは心残りはないの?
溶けたアイスが指を伝う。
今さらすぎるこの言葉は、
もう届かない。
「好きだったよ」
もう間に合わない。
夏の空に向かって、そっとつぶやく。
あなたが一途だった分だけ、私は後悔する。
「終わりがあるから、大事にできる。」
その意味を、私は1人の夏にやっと知った。