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Overdose
使わせて頂いた楽曲 Overdose
なとり様
晴瀬です。
オーバードーズとかって依存性すごいよねって話です。
本当は解っていた。
よく、解っていた。
君を愛すことは、君と"恋愛"するのは悪いことだって。
何故なら君には、他にパートナーがいるからね。
そんな君と僕とが一緒にいるなんて世間的にNOだもんね。
僕には愛が足りない。
昔から愛されてこなかった。だから僕は弱い。愛に弱い。
僕をこれでもかと愛してくれる君。でも僕は君の一番にはなれない。その席はもう埋まってる。
でもそれに魅力があって。
僕は離れられない。そして君も離れない。僕のことをよく分かっているから。
君と一緒になれることを描いて、独りで笑った。
そんな夢が叶うはずもないし、赦されるはずもない。
でも辛い。
行き場もなく愛し続けることがこんなにも難しい。
これは誰にも赦されないんだ。
僕が君から離れれば問題は全部なくなるのに。
それでも無理なんだ離れられない。
君が愛おしくて堪らない。
--- オーバードーズ ---
そんな言葉を知った。
──薬物の過剰摂取を意味する「オーバードーズ」。 一時的な高揚感などを求め、市販のかぜ薬などを大量に摂取する行為のことである。
そんな説明と共に載る大量の市販薬の写真。
僕のことだと思った。
だめだって分かってるのにやめられない。
君に相手してもらえる一瞬の高揚感。それだけのために僕は君に尽くし続ける。
大人な君は全部分かってる。
僕がどんな想いか。分かってて弄ぶ。僕はそれを咎められない。それだって一瞬の高揚感に繋がる。
僕にとっての薬。
君に電話した。時刻は0:28。君の旦那さんはきっと、寝てるかまだ仕事か。
2コール掛かって君は電話に出た。
スマホ越し、吐息混じりの掠れた声に僕の口元は綻ぶ。
暗い部屋でヘッドホンをつけて、君と話した。他愛もない話。
「──寂しかったんでしょう?」
君は|一声《いっせい》そう言った。僕の全てを解っているから。
久しぶりの高揚感、幸福感。
あまりの甘さに吐きそうになる。
電話を切って。
少し泣いた。
これで、この声で全部忘れて眠ってしまえるでしょう?
そう自分に言い聞かせる声はいつの間にか君の声に成り代わっている。
僕はずっと求めてる。君の愛を。
--- Overdose ---
君とふたり。そうなれることを願ってる。
君が一人に別れて僕の元へ来てくれることを祈ってる。
そうなったらどんなに幸せか。
朝一緒に起きて、一緒に朝ご飯を食べて、毎日日常を話して、好きなときに抱き締めて、時々キスして、笑い合って、君が泣いたら僕も一緒に泣いて、毎日を半分に分け合いっこして、それで、僕は幸せで、。
叶うわけないけどさ。絶対。
こんな夢だって輪郭もはっきりしないけどさ。
でも、逆に君に別れを告げられるんだったらこんな風な解像度の悪い夢を見ていたい。
--- Overdose ---
ひと月ぶりくらいに君と二人で会った。
嬉しかった。楽しかった。
君と合えるだけで嬉しいのに、丸一日君は時間を作ってくれた。
幸せ過ぎて、もう死んでもいいと思った。
別れ際君は言った。
「私が居なくても大丈夫?これからまた会えるのはずっと後だよ」
僕は言う。歪な笑顔を作る。
「大丈夫だよ」
君は静かに微笑んだ。
「愛してる」
「僕も」
「大好きだよ、僕」
君は笑った。長い髪が揺れた。
---
僕の友達は言う。
「本当に分かってる?いけないことだって、分かってる?」
「分かってるけど──」
「嘘だ」
友達は僕の言葉を遮って言った。
「それ、浮気…不倫だよ?相手には旦那さんがいるんでしょ?気持ちもわかるけどさ、」
友達は僕の名前を呼んでそう言う。
「早く別れなよ。本当に悪いことだって分かってるんならできるでしょ?」
「分かってるよ」
………多分。
そう声には出さずに。
目の前に出されたドリンクに水滴がついているのが見えた。
時間だけが過ぎていく。
その時間も問答で満ちている。
友達の口から問いが飛び出る。その速度はだんだん増していく。僕は口を挟めない。
言い訳する間もなく、僕が知らない僕の秘密まで暴かれて。
きっと僕のストレスは溜まっていくんだ。
もう十分なはずなのに、まだ、まだ、って君を求めてる。
ずっと、いつまでも僕は馬鹿みたいに君の名前を呼んで叫び続ける。
全部終わってしまえばきっと楽になるのかもしれない。
君が、僕を嫌いと言って離れていく。
僕は泣いて、泣いて、叫んで、|嘲笑《わら》って、狂ったように嘲笑って、死んだようになる。
時間が経って立ち直ったらきっと、君と出会う前の日常に戻っている──のかもしれない。
きっと、そうなってくれる。はずだけど、その自信がない。
だったら、僕が思考する前に君がふっと消えてくれたら、いいのかな、。
この気持ちを放置していたら傷んで腐ってしまう。まるで甘くて弱い果実のように。
それを分かっているけれど、君に迷惑をかけるのを恐れて僕はスマホ片手に考える。
「今電話したら、迷惑かな」
「もし、旦那さんと時間を過ごしてたら」
「もしかしたら、僕以外にもまだ相手がいるかもしれない」
「だったら僕は邪魔者だ」
口をついて出るのはそんな言葉で。
深夜僕は悩む。
壊れながら僕は悩む。
だったら、いや、だから、踊って眠って全部忘れちゃえ。
「今から、会える?」
『今って、深夜じゃん』
君は少し笑った雰囲気を出した。
『だから、か?』
今度ははっきり声を漏らした。笑っている。
僕も少し愉快になって、息を零した。
「会える?」
『会おうよ』
『今日暇なんだ』
君は分かりきった嘘をついて僕に会いに来てくれた。
暇じゃないくせに。
嘘を被った君と隣り合わせで眠る。
後ろめたさからかちゃんと僕と目を合わせない君と見つめ会えたら。
--- Overdose ---
君とふたり。確かにこの狭い部屋で君とふたりでいられてる。
幸せなのに。幸せで堪らないのに。
どこかやるせない。
それはきっと、君の一番になりたいからだと思う。
やっぱり、解像度の悪い夢を見ていたい。叶えたい。
できるなら君の一番に、かけがえのない存在になりたい。
--- Overdose ---
君とふたり、この状況がとてつもなく悪いことだって分かってる。
でもなぜそれをやめないか。
きっとまだ、僕は分かってないんだ。
この関係がバレたとき僕はどうなるのか、周りからどんな目で見られるか。君がどんな目に遭うか。
解っているのに、まだ解っていない。
分かりたいのに、心がそれを拒む。
「怖くないの?これ不倫だけど」
ふと君が言う。まるで僕の心を見透かしたように。
まだ寝てなかったんだ。
そう呟いて僕は応える。
「怖くない、よ」
変に間が空いた。
僕はこんな嘘が嫌いだ。これは嘘じゃなくて強がりだから。
君にバレないように嘘をつきたいのに、強がりになってしまえば逆に心配させてしまうから。
--- Overdose ---
僕と君は、バレたら終わる。
僕らは地獄の2歩手前で生きている。
--- Overdose ---
君とふたり。
「大丈夫かな、バレたらやばいから別れたほうがいいと思う、」
不安から、ぽろりとそう零した。
「定期的に言うよね、それ」
「1ヶ月に1度くらいの頻度で別れた方がいいとか言う」
君は僕の名前を呼んだ。
「大丈夫だよ。もしバレたら、私が守ってあげる」
いつものように君は言った。
絶対それは嘘だ。君は誰より早く我が身の保身に図る人だから。
でも、君の笑みに僕は強くは言えない。
君だって僕の気持ちは分かってるけどそれを知って言うんだ。
だから僕も笑った。
ハッタリだと知りながら。
でも君が発する言葉は全て甘いから。そのハッタリだってくどいほど甘い。
その甘さに我慢できずえずいた。
--- Overdose ---
君とふたり。
いつか、どうせバレる関係だけど
いつか、きっと罰される日が来るんだろうけど
いつか、別れなきゃいけないんだろうけど
僕はこの一瞬の幸せを糧に生きていきたい。というか、この一瞬の幸せがなければ生きていけない。
どうなるか、分からないけど。
僕はまだ生きていたいから。
変に間の悪い嘘でもいいから。
どうにでも、君とふたりで、一瞬の快楽のために、甘いハッタリで少しでも長くこの関係を続けていきたい。
どうしょうもなく苦しい夜があるけど、
悪いことだって、やめなきゃだって分かってるけど、
この歌を止めないで。
僕の愛しい人。
どうか、僕を生かして。
君がいなきゃ僕は死んでしまうから。
どうか僕を、僕の人生を与えてください。
どうか僕を、与えてください、
--- |Overdose《過剰摂取》 ---
Overdose/なとり
https://m.youtube.com/watch?v=H08YWE4CIFQ