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2章:締め切りと夕立ち
奇妙な共同生活が始まった。
ウィルは昼間は棺桶で眠り、夜になると街へ出た。何をしているのかは知らない。知ろうとも思わなかった。ただ、時折私の机へ金貨を置いていくことがあった。
『 原稿料か? 』
「似たようなものだ」
どこから得た金かは訊かなかった。
ある夜、私は原稿を書きながら何度も目を擦っていた。
文字がぼやける。
インクの染みが滲んで見える。
『 どうした? 』
ウィルが背後に立っていた。
「最近、目の調子が悪いんだ」
『 病なのか? 』
「老いだよ」
私は笑った。
「作家には辛い。文字が読めなくなれば終わりだ」
ウィルは黙っていた。
その横顔は妙に深刻だった。
『 治るのか? 』
「眼鏡を作れば多少はな」
『 |очки《メガネ》... 』
彼は知らぬ言葉を飲み込むみたいに繰り返した。