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第二話 初日の教室
雄英高校のヒーロー科1-Aの教室
入学初日、扉が開けた瞬間、教室の空気が変わる。
「あっ、本当に来た……!」
「ウィリディス本人!?」
「ちっちゃ……いや細……」
「オーラやばくね?」
視線が一斉にあなたへ向く。教卓横では、眠そうな顔の相澤が寝袋にもたれたまま口を開いた。
「今日から編入する、吉田栞だ。知ってる奴も多いだろうが、騒ぐな」
「「「無理でしょ!!!」」」
教室が爆発する。上鳴電気 が真っ先に身を乗り出した。
「え、待って、マジで13!?!? 芸能人じゃん!!」
「No.16って普通にプロじゃねぇか!?」
瀬呂範太 も興奮気味。
その横で 飯田天哉 が勢いよくメガネを押し上げる。
「静粛に!! 本人が困っているだろう!!」
「いや飯田も声デケェって」
切島がツッコむ。
一方、窓側後方。爆豪勝己 は頬杖をついたまま、じろ、とあなたを見る。
「……随分チビガキだな、No.16」
その近くでは 緑谷出久 がそわそわしっぱなしだ。
(本物だ……!! 現場判断S級、近接・制圧・救助全部トップクラス……!!)
ブツブツ言い始めている。さらに後方では、 轟焦凍 が静かにあなたを見ていた。観察するような目つきで。そしてその隣、常闇踏陰 が低く呟く。
「植物を操る深緑の英雄……神秘的だ」
「お前そういうの好きだよなぁ」
上鳴が笑う。相澤が面倒そうに黒板を叩いた。
「#名字#、空いてる席使え。……緑谷の後ろ」
緑谷が「ぇえっ!?」と変な声を出す。
クラス中の視線があなたに集まった。
「…はい。」
(チビ…まあそうだけどさぁ!?わざわざ言う必要ないと思うんだよねうん!)
爆豪勝己 はあなたの反応を見ると、鼻で笑った。
「図星かよ」
(あれ?顔に出てたかな…)
「おい爆豪!! 初対面だぞ!!」
(うんそれはそう非常に失礼)
切島鋭児郎 が慌てて止めに入る。
「でも実際細っせぇな……ちゃんと飯食ってる?」
「切島、それ完全に近所のおばちゃん」
瀬呂が肩を震わせる。
あなたが席へ向かうと、後ろの席の 緑谷出久 がガチガチになりながら椅子を引いた。
「よ、よろしくお願いします……!!」
勢い余って机に膝をぶつける。
ガンッ。
「いっっ……!」
(痛そ…)
「大丈夫ですか…」
「デク朝から騒音機か?」
爆豪の辛辣な声が飛ぶ。
「ご、ごめん!」
一方で、前の席からくるりと振り返った麗日お茶子が、目を輝かせた。
「#名字#さんってめっちゃ美人さんやね!」
教室が一瞬静かになる。褒められ慣れてないあなたの耳がじわっと赤くなるのを、何人かが見逃さなかった。
「いや全く持ってそんなことはないです」
上鳴、小声でぼそっと。
「……今の反応かわいくね?」
瀬呂、小声もぼそっと。
「ギャップやば」
飯田も、小声のつもりで。
「聞こえているぞ君たち!!」
「飯田声デカい」
その時。ガタッと轟焦凍が立ち上がった。
「#名字#」
突然の指名に教室の視線がまた集まる。
「……お前、火に強い植物も生成できるのか?」
「轟!?第一声それ!?」
上鳴が吹き出す。だが轟は真顔だ。
「前のインタビューで耐火性の蔓を使っていた。気になった」
緑谷が即座に食いつく。
「ぼ、僕も見ました!! あれ恐らく含水率調整と繊維密度を――」
「始まった……」
瀬呂が遠い目をする。教卓では相澤がもう寝袋に入り始めていた。
「……ホームルーム終わるまで教室壊すなよ……」
「わかってます…一応使えますけども、私が知っているものだけです。あとは色んな植物を混ぜ合わせてみたりとか…」
「混ぜ合わせ……!?」
緑谷出久 の目が完全に研究者のそれになる。
「じゃ、じゃあ特性の複合も可能ってこと!? 耐火性と伸縮性とか、毒性と拘束性とか……!」
「デク落ち着けって!!」
切島が肩を掴むが止まらない。
「しかも生成系なのに操作系も兼ねてて、さらに生命付与まで……っ!」
「怖ぇよ情報収集能力」
瀬呂が引く。一方、 轟焦凍 は静かに考え込んでいた。
「……相性いいな」
「何が?」
上鳴が聞く。
「俺の氷で植物の水分維持ができる。火力調整もしやすい」
「お前もう共闘前提!?」
すると今度は爆豪勝己が鼻を鳴らした。
「んな小細工なくても火力で押しゃ終わるだろ」
「脳筋だ……」
「単純だ…」
「聞こえてんぞ半顔とチビ」
教室が騒がしくなる中、あなたの机の横から小さな声。
「……でも、すごい」
常闇踏陰だった。
「植物に命を与えるなど……神の所業に近い」
「常闇ワールド出た」
上鳴がまた笑う。だが常闇は真剣だ。
「その力、相当な精神力を使うだろう」
その言葉に、相澤が寝袋の中から片目だけ開けた。観察するような視線。
「……よく見てんな、常闇」
教室の空気が少しだけ変わる。プロヒーローたちは知っている。“命を与える”系統の個性が、どれほど精神を削るか。相澤は低い声で続けた。
「#名字#の個性は強力だが、反動も重い。お前ら、面白半分で無茶させるなよ」
「「「はい」」」
珍しく全員が素直に返事した。その直後。
キーンコーンカーンコーン――
チャイムが鳴る。相澤はむくりと起き上がった。
「じゃあ移動。初日恒例、個性把握テスト」