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壁の住民
美咲が神森市のマンションに越してきて三日目。
隣の405号室は空室のはずなのに、夜になると必ず「トントン」と壁を叩く音がする。
だが、その日は違った。
「……ねえ、返事して」
声は、壁の向こうからではなく、壁の“中”から聞こえた。
美咲は息を止めた。
声は続く。
「ずっと、聞こえてたよね」
翌日、管理会社が405号室を開けた。
部屋は空っぽ。
ただ、壁紙の一部が不自然に膨らんでいた。
担当者が壁紙をめくった瞬間、美咲は悲鳴を上げた。
壁の中に、人の指跡があった。
石膏ボードを内側から必死に引っかいたような跡。
爪が割れ、血が乾いて黒く染みついている。
担当者は震えながら言った。
「……この跡、昨日はなかったはずなんですが」
その瞬間、405号室の照明がチカッと点滅した。
そして、壁の中から――
「……開けて。今度は間違えないから」
美咲は逃げ出した。
だが、エレベーターの前で立ち止まる。
背後の405号室のドアが、ゆっくりと開いた音がした。
誰もいないはずの部屋から、足音が廊下ににじみ出る。
トントン
トントン
それは、壁を叩いていたのと同じリズムだった。
前より少し長め