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第二話 月の宮の謎《前編》
「綺沙、唐菓子は皇太子殿下に渡せた?」
「ええ!喜んでくれましたよー!」
そう、ならよかった、と果菜はまた自分の顔に目をやった。化粧に不備がないか確認しているようである。
(まあ、喜んでるのは私だけどね!)
謎解きが待ち遠しい…と綺沙は頬を赤らめさせる。
「綺沙、なんなのその顔…もしかして、好きな人ができたのっ!?」
「いえいえ、もっとときめく物ですよー」
美男子と謎解きを天秤にかけたら、謎解きが大切だ。
「あと、今夜出かけてもよろしいでしょうか?」
「夜遊び!?誰と!?」
うるさい先輩を黙らせ、果菜に聞く。
「…何をしに行くのよ」
「え?えーっと…、果菜さまがすごい妃ってことを宣伝しに」
苦し紛れに嘘をついた。
「そう、ならいいわ」
(っしゃ!よっしゃ)
心の中でガッツポーズをする。
時間というのは早く過ぎる物で、すぐに夜になった。
「ねえ先輩」
「何?」
「月の宮の妃はどなたなんですか?」
「月の宮?ああ|月花《げっか》様ね」
「月花様?月の花って書いて?」
「ええ」
先輩侍女によると、月の宮の妃ーー、月花はその美しさから翠華さまの皇太子時代に見そめられて後宮に入ったらしいが、やはり皇帝は|翠陵皇后《すいりょうこうごう》にすぐ惚れてしまい、それからずっと翠華と会っていないらしい。
「翠陵皇后ってどんな人だっだんでしょうね」
「え?」
「だって、そんなに飽き性の翠華様の愛を独り占めしてたのよ?すごいと思わない?」
確かに…と思った。惚れ薬の類でも持っていたのだろうか。
(まあ、そんなわけ無いし)
先輩や果菜が皆寝たのを確認して、綺沙は静かに月の宮に向かった。
ーー月の門
(月の宮の門は…花の宮の門より派手だなあ)
花の宮ーー、貴妃の方が位は上、なのだが、まあそれだけ月花も寵を受けていたと言うことだろう。
「凛希さま」
「侍女か」
ーー私には綺沙という名前があるのですが?
怒ると女は怖えんだぞ、と凛希を少し睨む。
「なぜそこまで睨むのだ?酷いと思うぞー」
「いーえ全く」
三十秒くらい無言で睨み合っていると、はあ、と凛希がため息をつき、話を切り出した。
「では、これから解いてもらう謎の話をするぞ」
「待ってましたあ!」
綺沙は子供のように手をあげてバンザイをする。
「…その前に」
「?」
「そのままでは花の宮の侍女だとバレるだろ。月花と果菜の仲の悪さは有名だしな」
凛希が優しい笑みを浮かべた。
あ、これは図られたやつだと綺沙は後退りした。