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#3 桃縄さんの過去
えー…前回応募してくれて方々、ありがとうなんですが、今回は大体桃縄さんと主人公のシーンが多くなります…ごめんしゃい。
では、本編どぞ!
トン、トン、トン…
新築だからだろうか…階段を登る音がやけに響く。
僕は、人間心理調査用ロボット、SIN。僕の仕事は名前の通り人の心の動き…心理を調査すること。今は中学生の心の動きを調査するために、転校生“|伊吹 慎《いぶき しん》”として中学校に通っているんだ。
僕は今、屋上に向かっている。それは、ある人の紙切れの影響だ。そこには、
“私がいないときはだいたい屋上にいる”と殴り書きしてある。
…あ、もう、屋上だ。
キィ…と、きしんだドアの音がする。
すると…向こう側の柵に、見覚えのあるピンク色の髪が靡いていた。あれは…
「桃縄さん!」
僕は桃縄さんに呼びかける。すると、ずっと向こうを向いていた桃縄さんはゆっくり振り向いた。僕の方を見た桃縄さんは一言、
「来たんだ」
この紙切れの差出人は、この桃縄さんだ。
「あのさ、桃縄さん。さっきは、ありがとう。巻き込んじゃって、ごめん。」
僕はすかさず頭を下げながら礼を言う。すると、
「…え?」
という、少し戸惑ったような声が聞こえた。恐る恐る顔を上げると、笑うのを必死に我慢しているような表情の桃縄さんが居た。桃縄さんは遂にプハッと吹き出し、
「プッ…アッハッハッハッハ!はははは…あははっ!」
と、大きな声をたてて笑い出した。
「う、うるさい…。」思わず耳を塞ぐ。
だけどそれも束の間。急に真面目な顔に戻った桃縄さんは、ハッとした。
「桃縄さん、えっと…どうしたの?」僕が聴くと、桃縄さんはぽつんと呟いた。
「…こんなに笑ったのって、いつぶりだっけ。」
「へ?」
「…私、最近笑う事が少なくてさ。だから、もういつぶりかな、って。」
桃縄さんはそう言う。テンションの上がり下がりが…あ、もしかして。
「桃縄さんが話してた時にクラスの人にぶつぶつ言われてたけど…あれシカトとか言うやつ?」
僕は聞く。神山さんが言うに、シカトとか言うのは無視とかの事なんだって。
「そう、かもねぇ。なんでかな?ハハッ…」
桃縄さんは苦笑した。…なんか、複雑。
桃縄さんは僕の方に向き直り、手を差し出した。
「じゃ、改めて。私は|桃縄花枝《ももなわはなえ》。よろしくね。」
ニコッと笑うと、耳に着けてた校則違反のピアスが揺れる。
「え、あ、えっと…あぁぁ、慎です。よろしく…。」
「ふふ、慎くんかぁ…私の事は花枝って呼んでね。」
「え!?」
女子を呼び捨てした事がない僕はあたふたと焦る。
だけどその次の瞬間、桃縄さんはニヤッといたずらっ子のような笑みを浮かべ、
「じょーだんだよ、冗談。好きによんでいいよwww」
と笑い混じりに言う。
こんなに楽しそうに笑う桃縄さんを見て、僕は最初に見た時と全然雰囲気が違うと思った。僕はどうしてもその事が気に掛かって、桃縄さんに聞いてみる事にした。
「ねぇ、桃縄さん。何で桃縄さんはそうやって笑って元気でいられるのに、教室ではあんな態度を取ってるの?そのままでいいと思うのに…。」
「あぁ、えっとね…」
桃縄さんは少し深刻な顔をしながら、絞るように話し始めた。
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桃縄side
?「本当無愛想な子よね…」?「そうだ。姉さんとは大違いだよ。。。」
私の親は、私と姉の差別が酷かった。
私は幼い頃から口数が少なく、感情表現が出来なかった。
だけど私の姉は、真逆で言う事はハッキリ言う賢い子。
それに比べ扱いが面倒な私は、グズグズしてると無視をされた。
そんな環境のせいか、小学校の低学年は全く友達が出来なかった。
だけど、小5のある日。転校生が来たんだ。よく笑って、よく話す女の子が。
私の事を空気の様に扱うクラスメイトを横目に、その子は、
『花枝ちゃん、これからよろしくね!』
と、今まで見た事ないくらいの大きな笑顔で言ったのだ。
私は一瞬ビックリしたけど、これは、積極的になれるチャンスかもしれないと思って、『うん。よろしくね。』と答えた。
それから私は暫くその子と遊んだり一緒に帰ったりしていたけど、なぜかある日、
「あんまり近寄らないでよ!もう迷惑なの!!」
と言われ、肩を突き飛ばされた。
驚いて顔を上げると、皮肉そうに顔を歪めたその子が居た。
他のクラスメイト達はクスクス笑いながら全員教室を出て行った。
『____ちゃん、なんで、こんな事…』
私が言いかけたその時、その子を呼ぶ声が聞こえた。
その子は返事をすると、私の肩を叩くと同時に、服の中に何かを入れた。
その子が去ってから見てみると、それは一つの“紙切れ”だった。そこには、
“私が無視をするときには、必ず理由があるから安心してね”
とあの子特有の几帳面な字で書いてあった。
決して裏切った訳じゃ無いんだと、安堵した。
だけどそれも束の間、数日後悲劇が巻き起こったんだ。
その子が、交通事故で亡くなった。
その事をお母さんから知らされた時には、暫く放心状態に落ち行った。
何も考えられなくて、目を見開いたままその日は過ごした。
数日後、その子のお葬式が行われた。
私はたまたま行けなかったけれど、その日は黒い喪服を着ていた。少しでも寄り添いたかったから。そのお陰で、もうこの世にあの子はいないんだと確信出来た。
後日、その子のご両親が家に来た。ご両親達は私にあの子の遺書を持ってきてくれた。
慎重なあの子のことだから、いつ亡くなっても大丈夫な様に書いてたんだって。
自分の部屋に行って内容を見てみると、そこにはクラスメイトそれぞれに向けたメッセージがびっしりと書いてあった。習い事やネットの友達にも向けてもね。
私に向けた文はあるか探していたら、ページの間に手紙が挟まっていた。そこには、
“花枝ちゃんへ
今まで仲良くしてくれてありがとう。
実はね、わたしも転校するまでは無視されたりしてたんだ。
だからこの学校でもいじめられるんじゃ無いかって不安だったの。
だけど、花枝ちゃんはわたしを受け入れてくれた。
しかも同じ境遇同士。
すごく嬉しかった。
あの時は、いじめてごめん。
やっぱりわたしは弱かった。
でも、あの手紙を見てくれてたなら。
もう、言い残す事はないかな。
あ、でもあと一つ、大事な事を言っておくね。
自分の、好きに生きていいんだよ。
_____より”
と書いてあった。
本当の本当に、最後まで私の事を考えてくれてて嬉しかった。
そんな人が、なんで死んじゃうんだ。
どうせなら、悪に塗れた奴らが死ねばよかったのに…
そう思ったけど、あの子の『好きに生きていい』って言葉を思い出すと、これが自分のやりたい生き方じゃ無いって思えるから。
ありのままで生きようって、決めたの。
なのに。
中学校で、ノリが悪いとか何とかでシカトされる様になった。
なんで?
周りに合わせないとダメなの?
それを正しいって言い続けなきゃいけないの?
そうしないと死んじゃうの?
自分の意見を留めて強い奴らに従わないといけないの?
私はこいつらじゃやっていけないって思った。
だから誰も信じずに、あんな性格で生きてきたんだ。
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「だけど、君は違う。」
桃縄さんはさっきまでの深刻な雰囲気を吹き飛ばす様に明るく言った。
「こんな私の話を、最後まで聞いていくれた。それに、他の人とは違う感じがするの。君だけには、心を開ける気がする。」
そう言った桃縄さん。
「でもさ、、、僕なんかでいいの?だって、何も言ってあげられない…」
「ううん、そんな事ないよ。だって、私はただ話を聞いて欲しいだけだから。」
あ、そうだ。と、桃縄さんは手を打った。
「これから放課後にさ、こんな感じに屋上で話そうよ。」
「いいね!」
「それに、君は使えそうだしwww?」
意地悪そうな顔で言う桃縄さん。
「もー、辞めてくださいよ!」
「ハハッww」
ずっとこんな顔でいてくれたらいいのになぁ。
「あ、そういえば。わざわざ紙切れで屋上にいる事伝えてくれたのはこれの影響?」
「へ?…んー、特に意識してなかったかな。なんとなく…?」
恐るべし無意識。すると。
「おーい!慎くん!早く来てよ!授業始まっちゃうよ!…あ、桃縄さん。」
と言う声が聞こえる。華川さんかな?
「分かった、今行くから待っててー!」
僕もそう返すと、
「じゃ、放課後に集まろう。」
と言った。桃縄さんは満足そうに、
「りょーかい。」
と言った。
終わりました!今回はほぼ桃縄さんの回想ww💦
あ、桃縄さんのビジュアル公開しまーす!
https://d.kuku.lu/437642130
上:裏のいたずらっ子笑顔の桃縄さん 下:表のクール桃縄さん
次もよろしく!