能力者の脅威度に応じてランクがつけられる世界。
だが、異能者を監視・統括する『異能管理局』の判定基準は、単なる能力の破壊力にとどまらない。
どれほど強い力か、どれほど制御不能か、そして──その人物がどれほど歪んだ精神と経歴を持っているか。
隔離された「特定管理地区」に集うのは、一癖も二癖もある危険度判定済みの異端者たち。
危険度ランクという数値に縛られた彼らが巻き起こす、ダーク&スタイリッシュ異能バトル!
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目次
「FILE 00:ようこそ、特定管理地区へ。」
『これより、新任職員に対するガイダンスを開始します。』
スピーカーから聞こえる合成音声は機械的で、冷たく淡々としたトーンだった。
薄暗い会議室のスクリーンに、真っ赤な警告文字が浮かび上がる。
**`【特定管理地区:入域注意勧告】`**
『本地区に隔離されている異能者は、全て【異能危険度】の判定を受けた者達です。勘違いしてはいけません。当局における危険度とは、単なる【能力の破壊力】を示す数値だけではありません。』
スクリーンの画面が切り替わり、一人の男の写真と数値を表すグラフが映し出される。
『能力の出力、制御の難易度。そして何より、「対象者の性格」「精神状態」および「過去の経歴」。
どれほど弱小な能力であろうと、対象の精神が破綻しており、反社会性が認められる場合、危険度ランクは跳ね上がります。』
音声が一瞬、間を置いた。
『逆に言えば、当地区に存在する者は全員が「何かしらの形で狂っている」ということです。
能力に殺されるか、彼らの悪意に殺されるか。
……それでは、健闘を祈ります。』
ブツン、と音声が切れると同時に、目の前の巨大な鉄門が重々しい音を立てて開き始めた。
門の向こうに広がるのは、危険度判定で世界から弾き出された者たちの街。
**――「特定管理地区」へ、ようこそ。**
─次回「FILE 01:不適合者のコード・ゼロ」
「FILE 01:不適合者のコード・ゼロ」
「ここは…。」
鉄門を潜った先には、廃墟が建ち、人の気配が少ない、スラム街の様な荒れ果てた街。
彼─セレーノは静まり返った夜の海の様に暗く、そして月光に照らされ水面が美しく輝く様な瞳でその光景を暫くじっと見つめていた。
ふと手元にあるスマホに映し出されたカルテへと視線を落とす。
【氏名:セレーノ・フォルト】
【危険度判定:S】
【所有異能:『微細干渉/マイクロアクセス』】
【特記事項:????】
「おい、見ない顔だな。新参か?」
薄暗い高架下に踏み込んだ途端、下品な声が掛かった。
大柄な男がニヤニヤしながら此方へと歩み寄ってくる。
男の右腕が不自然に脈打ち、真っ赤な炎が渦を巻き始めた。
「俺は危険度Bだ。此処では挨拶代わりに、持ってる現金を全部寄越すのがルールなんだよ。」
彼は誇らしげに自分の能力を見せびらかし、威圧してくる。
だが、セレーノの心は静かだった。波一つ立たない。
「危険度B、か」
セレーノは不思議そうに、首を傾げて静かに息を吐いた。
「炎を出せるからBランク? ……甘いな〜…だから貴方達は、ここから出られないんだ。」
「あぁ……? 舐めた口叩いてんじゃねえぞ、ガキ!」
男が激昂し、炎を纏った拳を振り下ろす。
暴力の圧力が空気を灼く。
─だが、セレーノは避ける素振りすら見せなかった。
ただ、静かに 【微細干渉】を発動させる。
戦闘用ですらない地味な力が、僅かに空気を揺らした。
「(――……よし、。)」
次の瞬間、男の拳がセレーノの数cm手前でピタリと止まった。
「が、は……っ!? な、なんだ……何をし……っ!?」
男は突如として自分の喉をかきむしり、激しく血を吐いて膝をついた。
衣服が血濡れ、乾いた地面にも染み込む。
炎は消え去り、男の顔は絶望と恐怖で歪んでいる。
「何もしていないよ」
セレーノは倒れた男を見下ろし、静かなトーンで呟く。
「ただ、貴方が『自覚なしに抱えていた持病の血管』を、ほんの少し突いただけ。貴方は怒りで血圧が上がると死ぬ身体だった。自分のカルテくらい、まともに把握しておいた方がいい。」
能力の威力で勝ったのではない。
相手の身体構造、癖、心理状態、そして「自分の地味な異能をどこに差し込めば致命傷になるか」を瞬時に計算し、物静かに淡々と実行する残酷さ。
それこそが、セレーノが危険度Sである主な理由の一つだった。
「ひ、ひぃっ……化物……!」
倒れた男は顔を引き攣らせ、痛みなど忘れ脱兎の如くその場から駆け出した。
「失礼だな。僕はただの、心身ともに不健康な一般人だというのに…。」
セレーノは溜息をつき、一歩踏み出し再び静まり返った路地裏を歩き出す。
ポケットのカルテ画面が、一瞬だけノイズを起こしてバグった。
「……あの事故の時も、同じような顔をしてたな…管理局の人達は。」
自身が本当に恐れられている理由は、この能力の使い道だけではないという確信があった。
──遥か上空、特定管理地区を監視するビルの一室。
モニター越しに騒動の一部始終を見ていた監察官が、無線に問いかけた。
『……見たか? あれが危険度Sの不適合者だ。』
『えぇ。能力は危険度E、ですが人間性が最悪。……それにしても、彼はまだ気づいていないようですね。』
『何をだ?』
『ここが、"ただの収容所ではない"ということです。』
その言葉を最後に、電子音が静かに途切れ、監視カメラのレンズが、セレーノの背中を追い続けていた。
─次回「FILE 02:偽りの収容所」