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目次
#1
『はるくん!こんど、みぃちゃんさわりにいってもいいー?』
『おーい!は・る・く・ん!!』
『どうしたの?』
__…ピピピピ…ピピピピ…ピピ__
『__はる…く…__』
**ピピピピ…ピピピピ**
「ん…夢、か…」
どうやら勉強をしながら、眠っていたらしい。
机から立ち上がり、充電していたスマホのアラームを止める。
アラームかけておいてよかった…寝坊しても困るし。
「それにしても…懐かしい夢だな」
幼馴染の音羽に、昔飼っていた猫のみぃちゃん。
音羽とは、中学で別の学校に通うことになってから、少しずつ距離が離れていった。
まぁ、家が隣同士だから、完全に会わないわけではない。
それに、異性の幼馴染なんて普通は離れてくよな。
みぃちゃんはもう息を引き取ってしまったし、今はうちに猫はいない。
「さて…勉強の続きするか」
アラームは5時にセットしているから、まだ勉強できる時間はある。
俺には行きたい高校があり、元々勉強熱心な性格ということもあり今は受験勉強を頑張っていた。
「さてと…あれ、どこまで解いたんだっけ…」
まだ脳が起きていない。
さっきの夢のことがなぜか頭に浮かぶ。
普段は起きたら、夢なんて秒で忘れているのに。
中学でも、俺は受験して少し遠くの中学に電車で通った。
音羽は、そのまま通っていた小学校からの進学先の、受験のない学校へ自転車で通った。
それが、俺と音羽の距離を遠くしたきっかけだった。
「…こんなこと思い出してないで、勉強しなきゃじゃん…」
そうだ。そうだよ。
俺は勉強をしていたんだ。
自分に言い聞かせるように、勉強をしろと頭の中で唱えた。
あまり集中できなかったが、6時になったので俺は勉強をやめた。
明日はもっとちゃんと勉強しないと。
---
それから、数ヶ月のときが過ぎた。
今日は、高校の合格発表日だ。
俺は受かっていた。
急に息が抜けた。
ほっとした。
---
それから、入学手続きや入学説明会など、なんやかんやしたあと、入学式がやってきた。
俺はソワソワして、アラームが鳴るより早く目が覚めた。
そのまま顔を洗って、少し早めに朝ごはんを食べ、歯を磨いて、余った時間でスマホを見ていた。
すると、家を出る時間が近づいてきた頃、LINEの通知音がした。
見ると久しぶりの相手から_メッセージが来ていた。
音羽だった。
「なんかこうやってやりとりするの久しぶりだね。合格発表の日は言わなかったけど、私、はるくんが行きたいって言ってた高校受かったよ。そっちはどこの高校?」
え…。
音羽が…?
もしかして、俺と同じ高校に_?
急いで返事を打つ。
「え、音羽もあの高校受かったの?俺もそこ受かったよ」
するとすぐ既読がついて、すぐ返事が来た。
「入学式、一緒に行く?」
俺は、少し戸惑ったが、さすがに断るのは失礼な気がするし、どうせひとりで行くよりはいいかなと思って、「わかった」と返事を打つ。
送信を押す。
そこで、ひとつ思い出した。
今日は帰りは、親と帰るのだった。
なぜか俺の母は過保護で、こういう大事な日は送り迎えしたりしてくる。
俺的には少し迷惑なのだが…。
そのことは行きに伝えよう、と考え、どうせもう時間なので俺はすぐ準備を済ませて家を出た。
音羽はまだいなかった。
が、ほんの一分ほど待つと音羽は家から出てきた。
「こうしてちゃんと顔合わせるの、久しぶりだね」
「…まぁ、うん」
勉強しかしてこなかった俺には、女子との付き合い方などわからない。
まぁ、音羽は幼馴染なのだから、少しくらいは親しく話せる。
---
そのまま入学式を終え、俺は車で家路に着く。
その頃、音羽がどうしているかなど考えもしていなかった。
が、音羽は今、別の場所で、大きな転換点を迎えていたのだった_。
#2
「やったぁぁ!高校受かった〜!!」
「私もー!音羽、今日お祝いでどっか行こうよ」
「あ、じゃあ新しく建った駅前のカフェとかどう?」
「いーねー」
…これで、はるくんと同じ高校に通える…!
私はこっそり、心の中で呟いた。
もちろん、友達の花鈴と結芽と同じ高校に通える、というのもあるのだけれど。
これが、…一番の目的だった。
はるくんはこんなこと知らないだろう。
今すぐにはるくんに伝えたい気持ちもあるけれど、花鈴と結芽とカフェに行くことになっちゃったから、あとにするしかない…か。
はるくんのことバレたくもないし…。
昔から、私は引っ込み思案だった。
でも、はるくんだけは一緒にいてくれた。
花鈴と結芽と友達になれたのも、私に寄り添ってくれたはるくんのおかげ、と言ってもいいかもしれない。
はるくんに、友達が欲しい、と相談して、「勇気を出したら、きっと仲良くなれるよ」と言ってくれたあの頃のはるくんは、とても輝いていた。
私にとっては、いつでもそうだった。
はるくんは隣の家に住んでいて、保育園に通うより前からずっと一緒に遊んできた、幼馴染…でもあり、私の…好きな人、だった。
いつからか私は、密かにはるくんに想いを寄せていた。
でも、はるくんは中学受験をして、遠くの学校に行ってしまった。
小学校の頃、はるくんは行きたい高校を教えてくれた。
だから私は必死で受験勉強をして、高校受験をしたのだ…。
「カフェ美味しかったね〜」
「ね〜」
私たちは電車に揺られて帰る。
はるくんは今頃、なにをしているんだろう。
花鈴と結芽と話していても、なぜか気にかけてしまう。
花鈴と結芽と別れて、私は家路についた。
家の鍵を開けるときも、はるくんの家をちらっと見てしまう。
「高校での生活、楽しみだなぁ…」
---
部屋に入ると、はるくんに『高校に受かった』というLINEを送るのも忘れて、ベッドに寝転んだ。
高校に受かって沢山喜んで、カフェにも寄って、少し身体が疲れているのかな、と思い、私はそのまま眠りに落ちた…。
---
「あれ…朝…?」
小鳥たちのさえずりが響く。
カーテンの隙間から、朝の木漏れ日が落ちてくる。
私は目を擦りながら身を起こし、スマホを開いたところで、思い出した。
「…あっ、はるくんにLINE送るの忘れてた…!」
どうしよう。
せっかくのチャンスだったのに。
何もない今日に急にLINE送っちゃったら、引かれそうで怖い。
やっぱりまだ私は、引っ込み思案なのかな…。
「…そうだ」
入学式の日に言おう。
この考えがしっくりきた。
入学式の日なら…一緒に高校行ったり、できるかな…。
それはまだちょっと緊張するけど…でも、入学式の日にLINE送ろう。
---
入学式までの日々は、あっという間に過ぎた。
気がつくと、もう入学式の朝だった。
スマホのアラームを止め、いつもより少し早めにベッドから離れる。
身支度を整え、私はスマホを握って深呼吸する。
LINEアプリのアイコンをタップし、久しぶりに"はるくん"というトーク画面を開く。
少し震える指で文字を打つ。
「なんかこうやってやりとりするの久しぶりだね。合格発表の日は言わなかったけど、私、はるくんが行きたいって言ってた高校受かったよ。そっちはどこの高校?」
この文章でいいかな、と何度も何度も読み返す。
少し手汗が滲む手で_送信を、押す。
すると思っていたよりもすぐ既読がつく。
そして…返事が、来る。
「え、音羽もあの高校受かったの?俺もそこ受かったよ」
やっぱり、はるくんはまだこの高校を志望していたんだ。
昔から、夢に向かって一直線なところは変わらないなぁ。
少し緊張が解け、再び文章を打つ。
私は勢いで_送信を、押した。
「入学式、一緒に行く?」
送ってしまってから、少し胸が高鳴った。
でもそれを感じる暇もなく、既読がつく。
返事が_来た。
「いいよ」
たった三文字だった。
なのに私の心臓は早鐘を打ち始める。
はるくんと、一緒に…高校に、行けるんだ…。
私はドキドキしながら、最後にもう一度持ち物と身だしなみをチェックして、家の外へ出た。
はるくんが、先に待っていた。
私は思わず黙ってしまう。
けど、はるくんに教えてもらったように、勇気を出して…言葉を発した。
「こうしてちゃんと顔合わせるの、久しぶりだね」
はるくんは少し戸惑った様子で、
「…まぁ、うん」
と答える。
心臓の鼓動が高まるなか、私たちは高校に向かう。
時々、言葉を交わしながら。
はるくんは、帰りは親と帰るらしい。
大事な日に迎えにくるはるくんのお母さんも、変わってないな、と思った。
なにもかも昔と同じようなのに、空気だけが完全に違った。
それは幼馴染ではなく_異性、だった。
---
入学式を終え、私ははるくんと別れて、高校を出る。
それからほんの10分後、ある転換点を迎えると知らずに_。