編集者:アユト
この学園には不思議な部活がある……「??部」。
その部活にはある特定の条件を満たさないと入れないと噂されているらしい。
その条件とは……『主役であること』。
(一応、主人公…なんでだよーーー!!!)
澄野 律(すみの りつ)
苦労人部長(主人公)3年生。
静かに受験勉強したいだけなのに巻き込まれたツッコミ役。
胃薬が手放せない。
冷静かつキレのあるデッドパン(呆れ)ツッコミ
鳳凰堂(ほうおうどう)
ナルシスト自分の美しさに絶対の自信を持つ。
机に金縁の鏡とバラの花瓶を設置。
「鏡が反射して眩しいんだよ!」
漆原(うるしばら)バトル漫画(覚醒前)
右手に包帯。
机に赤の水性絵の具で「封印の陣」を描き込む。
「教科書置く場所に落書きすんな!!」
木村(きむら)
フレネミー親友のフリをして絶妙にウザい嫌がらせをする(開かない缶コーヒー等)。
「地味な嫌がらせの精度を上げるな!!」
西園寺(さいおんじ)
自称・悪役令嬢高笑いしながら登場するが、根が良いヤツなので結局律を助けてしまう。
「高笑いしながら差し入れしてくんじゃねえよ!」
勝木(かつき)ライバル気取り
勝手に律をライバル視し、机の8割に境界線を引いて領土主張する。
「俺の机の8割が他人の領土ってどういうことだ!!」
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目次
『??部(仮)は今日も主役が多すぎる!』ー部長の机勝手に改造事件ー
この物語は、ただ静かに受験勉強がしたいだけのしがない男子高校生が、癖が強すぎる自称・主人公たちに振り回される苦悩の記録です。
読者の皆様におかれましては、どうぞ胃薬をお手元にご用意の上(いらないよ…多分…主人公以外)、生温かい目でお見守りください。
なお、登場人物たちの会話の噛み合わなさに対するクレームは一切受け付けておりません。
(澄野 律)
「3年になってから急にこの部活に入れって言われても……何の部活だよ〜」
溜め息まじりに愚痴をこぼしながら、俺――澄野律(3年)は、旧校舎の埃っぽい廊下を歩いていた。
受験勉強に集中したいこの大事な時期に、担任から突きつけられた条件はただ一つ。
『新設された「??部」の部長になって部員をまとめろ。さもなければ内申点は保証しない』
理不尽すぎる。そもそも「??部」って何だ。名前すら決まってないじゃないか。
「まあいい……静かで誰も来ないなら、ただの自習室として使ってやる」
そう自分に言い聞かせ、俺は「??部」と書かれた札がぶら下がるドアをガラッと開けた。
――それが、俺の平和な高校生活の終わりだった。
「……なぁ、俺の机どこ行った?」
そこに広がっていたのは、俺が昨日まで使っていたはずの、地味で平坦な学習デスクではなかった。
「フッ……遅かったな、部長。我が『美の聖域』へようこそ」
真っ先に声をかけてきたのは、自前の金縁卓上スタンドミラーを前に優雅にポーズを決めるナルシスト・鳳凰堂だ。俺の机の左側には、一輪挿しのバラと、彼の自慢の生写真が整然と並べられている。
「勝手に人のデスクをドレッサーにするな! 鏡が反射して眩しいんだよ!」
「くっくっく……恐れるな、律。その右側に施されし『赤の陣』こそ、貴様の秘められた力を抑え込む封印結界だ……!」
右側に目を向けると、右手に痛々しい包帯を巻いたバトル漫画気取り・漆原が、真っ赤な水性絵の具で俺の机に謎の魔法陣を描いていた。
「教科書置く場所に落書きすんな!! 落ちなかったらお前が雑巾がけしろよ!?」
「おやおや、律くん。みんなに愛されていて羨ましいな〜」
ニコニコしながら近づいてきたのは、自称・親友(フレネミー)の木村だ。彼は「はい、喉乾いたでしょ?」と缶コーヒーを手渡してきたが、よく見るとプルタブが絶妙に壊されていて、絶対に素手では開かない仕様になっていた。
「地味な嫌がらせの精度を上げるな!! ニッパー持ってこい!」
「オーッホホホ! たかが缶コーヒーひとつで取り乱すなんて、相変わらず浅はかですわね、律!」
高らかな高笑いとともにドアを蹴り開けて入ってきたのは、自称・悪役令嬢の西園寺だ。彼女は俺の机のど真ん中に、これみよがしに『高級ベルギーチョコレート』の箱をドンと置いた。
「この私以外の者が貴様を苦しめるなど許しませんわ! ほら、これを食べて私の寛大な慈悲にひれ伏しなさい!」
「高笑いしながら差し入れしてくんじゃねえよ! 根がいいヤツだな!!」
さらに、机の中央にはライバル気取りの勝木が勝手に引いたビニールテープの境界線まで存在している。
「ここから右は俺の領土だ! 奪い返したくば、まずは俺と期末テストの合計点数で勝負しろ!」
「俺の机の8割が他人の領土ってどういうことだ!!」
静かな自習室……俺の淡い幻想は、完璧に打ち砕かれた。
全員が全員、自分こそがこの物語の「主人公」だと言わんばかりに、己のこだわりと自我を主張し合っている。会話が1ミリも噛み合っていない。
「ハァ……ハァ……」
ツッコミすぎて胃のあたりがズキズキと痛み出す。
俺は胃薬の袋をポケットから取り出すと、水も飲まずにそのまま噛み砕いた。
「……もういい」
「ん? どうしたんだい、律くん?」
「何も言わん……俺は、宿題をやる……」
俺は遠い目をしたまま、金縁の鏡を脇へ押しやり、赤の封印陣の上に数学のドリルをバサッと広げた。そして、勝手に引かれた境界線を無視してシャーペンを走らせ始める。
「な、なんだと……!? 封印の陣の上で、動じることなく三次元方程式を解いているだと……!?」
漆原が目を見開いて戦慄する。
「フッ……鏡に映る己の集中した美姿に見惚れているのだな?」
鳳凰堂が満足そうに頷く。
「あら? 私の差し入れをガン無視して宿題なんて、いい度胸ですわね……!(※そっと消しゴムを使いやすい位置に置いてあげる)」
西園寺がフンと鼻を鳴らす。
「おい全員、喋りかけるな。鏡が邪魔でドリルの右側が見えねえし、陣のせいで5の数字が6に見えるんだよ。あと西園寺、消しゴム助かる」
「素直じゃないですわね!!」
……この学園には不思議な部活がある。
選ばれし「主役」しか入れないと噂される、その名も「??部」。
だが、現実のそこにあるのは――世界一カオスな机で、ただひたすらドリルを解き続ける可哀想な部長の姿だけだった。
(頼むから……誰か俺に普通の高校生活をくれ……!)
苦労人部長・澄野律の、胃が痛すぎる放課後はこうして幕を開けたのだった。
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!
第1話をなんとか生き延びた、苦労人部長の澄野律です。
……いや、ちょっと待ってくれ。読者……というか、この物語を書いた「主(作者)」!!
お前に物申したいことが山ほどあるんだが!?
なんで受験を控えた大事な3年のタイミングで、こんなカオスな部活の部長に仕立て上げたんだよ!
机の上のバラを退かして魔法陣の絵の具を拭き取るだけで30分かかったぞ! プルタブの壊れた缶コーヒーのせいで爪は割れそうになるし!
唯一の癒やしが悪役令嬢の差し入れってどういう状況だよ! 胃薬の消費スピードが尋常じゃないんだが??
……ハァ、ハァ……。
頼むから次回は、もう少し平和で普通の高校生活を描いてくれ……。
(主よ、僕のこの叫びに何か言うことはあるか……?)
ー主からー
うーん…トクニナイカナ
じゃなくて、面白ければすべて良し!
(終わりが良ければどうにでもなるんだよ!)
この部活背負っての受験頑張ってね!(他人事)
「面白ければすべて良しって、一番タチ悪い作者の思考回路じゃねえか!! 終わりが良くても途中で俺の胃に穴が開いたらどうすんだよ!?」
『??部(仮)は今日も主役が多すぎる!』ー新入部員の怒涛の襲来と、崩壊する部室の定ー
どうも、苦労人部長の澄野律です。
前回の「デスク改造事件」をなんとか生き延び、少しは平和な日常が戻ってくるかと期待した僕がバカでした。
今回は、旧校舎の狭い部室に『さらなる変人たち』が雪崩のように押し寄せてきます。
定員オーバーなんて生ぬるい。部室の密度と僕の胃の痛みが過去最高を更新する第2話を、どうぞ温かい目(と胃薬←主人公以外いらないよ)を用意してお楽しみください。
嵐の後の静けさ――そんな言葉がある。
だが、この「??部」において、静けさなどという概念は胃薬の包装紙よりも儚く消え去る運命にあった。
「……よし、今日は部員が増えてないな」
第1話の惨劇から一夜明け、俺――澄野律(3年)は、恐る恐る部室のドアの隙間から中を覗き込んだ。
中では相変わらず、鳳凰堂が金縁ミラーの前でポーズを決め、漆原が机に新たな魔法陣を描こうとし、木村が開かない缶コーヒーをセットし、西園寺が高笑いのウォーミングアップをし、勝木が領土を広げようとしていた。
カオスだが、人数は5人。増えてはいない。
俺は安堵の息を漏らし、ドアをガラッと開けた。
――その瞬間だった。
「遅刻遅刻――っ! 泣いちゃいそうだけど私、諦めないんだからっ!」
バガァン!! と凄まじい音を立ててドアが蹴破られ、食パンを丸ごと一枚口に咥えた女の子が部室へ飛び込んできた。自称・王道ヒロイン、愛原萌々(あいはら もも)だ。
「ぶふっ!? おい、ドアを蹴るな! そもそも部室に遅刻もクソもあるか!」
「きゃっ!? な、何よアンタ……! べ、別にアンタのために作ってきたお弁当じゃないんだからね!」
萌々は顔を真っ赤にしながら、コンビニのレジ袋から露骨に『◯ァミマのから揚げ弁当』を取り出し、俺の胸に押し付けてきた。
「既製品!! ツンデレの皮をかぶったコンビニ弁当の押し売りをやめろ!」
「クックック……やはり、私の描いたシナリオ通りに駒が動き出したか」
次に、影から静かに現れたのは、メガネのブリッジをクイッと押し上げる黒幕気取り、影山零士(かげやま れいじ)だ。
彼は窓際に佇み、不敵な笑みを浮かべた。
「誰だお前!! 勝手に暗躍しようとするな!」
「問おう。明日の給食で『プレミアムプリン』が出る確率を……私は98%と試算した。すべては私の掌の上だ」
「企みがショボすぎるだろ!! メガネをキラーンと光らせて予想することか!?」
「フッ……この世界の魔力濃度、低すぎ……? 異世界アルカディアの我が魔術が、ここではただの『静電気』に変換されてしまうとはな……」
続いて、壁の木目を撫でながら重々しく呟いているのは、転生者気取りの神楽坂アルセ(かぐらざか あるせ)だ。
「異世界から帰ってきた気ぶるな神楽坂! あと、それは魔術じゃなくてただのポリエステルの摩擦だ!!」
「わわっ!? 転んじゃう〜〜っ!」
ドタバタという音とともに、強運の持ち主・天宮さくら(あまみや さくら)が豪快に派手にすっ転んだ。
その瞬間、彼女のポケットから跳ね飛んだ100円玉が、床をミラクルな軌道で転がり
――俺の足元でピタリと止まった。
「あ、律先輩! その100円、胃薬代に使ってください! 偶然落ちてたんです!」
「主人公補正の無駄遣いすんな!! 運の良さだけで人生イージーモードで突破してんじゃねえよ!」
――カオスだ。
既存の5人に加え、新手が4人。
狭い「??部」の部室に、合計9人の「自称・主役」がひしめき合っている。
「ほう……新たな美の参戦か。だがこの鳳凰堂の輝きには及ばん」
「くっくっく……アルセとやら、お前の前世の魔力、俺の右手の邪眼と共鳴しているぞ……!」
「あら? コンビニ弁当で律を釣ろうなんて、この私の高級ベルギーチョコに勝てると思っていまして?」
「おい新入りども! 俺と律の領土争いに割り込むな!」
鳳凰堂、漆原、西園寺、勝木が一斉に喋り出し、会話はついに1ミリも噛み合わなくなった。
ドッジボールどころか、全方向からの乱反射である。
「……ハァ」
俺は遠い目をした。
ポケットから大容量タイプの胃薬を取り出すと、水も飲まずに3粒まとめて噛み砕く。
「もういい……内申点なんて要らない……俺を退部させてくれ……」
苦労人部長・澄野律の胃袋は、第2話にして完全に限界を迎えていたのだった。
第2話もお読みいただき、本当にありがとうございました!
……って、感心してる場合じゃないんだよ!!
おい、主(作者)!! ちょっと面貸せ!!
前回のあとがきで僕が「もう少し平和で普通の高校生活を描いてくれ」って切実に頼んだよな!?
なんで返事が「新キャラ4人追加(全員主人公タイプ)」なんだよ!
算数できるか!? 既存の5人と合わせて9人だぞ!?
ただでさえ狭い部室に9人の自称・主役が押し寄せて、会話のドッジボールどころか全方向からの乱射事件になってるんだが!?
萌々はコンビニ弁当を押し付けてくるし、影山は給食のプリンで暗躍してるし、アルセは静電気を魔力とか言い出すし、天宮さんは強運で100円投げてくるし……!
胃薬、水なしで3粒まとめて噛み砕いたの生まれて初めてだぞ!?
頼むから……頼むから次は「部員削減」か「律の単独平和回」にしてくれ……。
(主よ……次こそは僕の胃に優しい展開を用意してくれるよな……?)
ー主からー
そっか〜
検討するしかないね〜
うん
すぴぃ〜〜〜💤
「すぴぃ〜〜、って寝たフリしてんじゃねえ!! こっちは胃に穴が開くかどうかの瀬戸際なんだよ!!」