英国出身の迷ヰ兎(3)
編集者:天泣
このシリーズは「英国出身の迷ヰ犬」という前のアカウントで書いていた文スト二次創作で張っていた伏線などを頑張って回収しながら書きたかった最終回を目指していく話の続きです((長いわ
注意⚠︎
・文スト二次創作
・小説ネタバレあり
・オリキャラ多数
・オリジナルストーリーのみ
・伏線を全部回収できるわけがない((
・英国出身の迷ヰ犬と少し設定違うかも
───
収録章
六章「幾つにも枝分かれした未来で(後半)」
エピローグ
プロローグ〜四章「全世界放送」はこちら↓
https://tanpen.net/novel/series/5083fb82-6328-48db-b68b-ffe12ef9c781/
間章〜六章「幾つにも枝分かれした未来で(前半)」↓
https://tanpen.net/novel/series/3781522c-c8c3-4eee-a305-4a1336251051/
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目次
Ending.1「世界から消えた女王」
加筆あり。
11697文字。
ルイスside
あれから僕は、レイラと
一騎打ちを続けていた。
呼吸の乱れからか、視界が歪む。
いや、これは血を流しすぎたからか。
レイラ「……っ、」
レイラも、死なないとはいえ疲労は溜まっていることだろう。
隙が初めより見えてきたけれど、僕の動きが間に合わない。
踏み込みたいのに、踏み込みきれない。
それは、相手も同じようだけれど。
乱歩『ルイス』
ルイス「……何かな、乱歩。っと、危ないなぁ。僕、あまり話をしている余裕はないんだけど」
乱歩『もう下がれ。このままでは君が先に限界を迎える』
ルイス「知ってるよ、それぐらいのこと。でも僕は戦わないといけないんだ」
せめて、アリスがもう少し話せる時間を──。
レイラ「これで終わりよ!」
走馬灯とかを見るタイプではないのは、戦争でよく知ってる。
死にかけても、何も見れない。
僕はこの世界の住人じゃないから空っぽだ。
でも浮かんだ。
ヨコハマの皆の姿が、英国軍の皆の姿が。
積み重ねてきた、出会い別れの全てが浮かんだんだ。
レイラ「なっ……!?」
???「残念だけど、ルイス・キャロルは殺させないよ」
レイラ「……誰かしら、急に入ってくるなんて」
ぼやけた視界の先にはレイラがいる。
どうやら僕は誰かに抱えられているようだった。
???「お初にお目にかかります、死者軍の女王──なんて、私のキャラではないね」
レイラ「知らないわよ、そんなの」
???「許可のない謁見に気分を害してしまったことは謝罪しましょう、死者軍の女王」
レイラ「謝罪するぐらいなら、ルイスを置いて消えなさい。それとも私と戦うつもりかしら?」
???「“あの”死者軍の女王に真っ向から挑んで勝てるという自信は……。ははっ、生憎と持ち合わせていません」
呼吸が整ってきたところで、声の主が分かってきた。
でも、なぜ此処にいるのか不明すぎる。
???「それでも、キャロルくん。君に助けられた者の一人として、今こそ恩を返そう」
ルイス「どうして君が此処に……?」
???「助け、と云うのは間違いだったかもしれない」
ルイス「……まさか君はッ」
乱歩『ルイス、その仏蘭西軍は──』
ルイス「詳細は後で伝える! とにかくお前は辞めろ!」
???「……悪いな」
降ろされたは良いけど、このままではマズい。
異能でワンダーランドへ此奴を送るか?
いや、間に合わない。
長時間一人で相手にしているのを見て、しびれを切らしたか。
死者軍も街を荒らしていってると云うし、怪我人も増えていってることだろう。
早く対応しないといけないのに、身体が間に合わない。
ルイス「待て、サルトル……!」
レイラ「……その名前、何処かで聞いたような──」
--- 異能力“存在と無” ---
レイラ「──あら? ……、何も起こってない…?」
サルトル「いいや、異能力は発動している。不死者と呼ばれた君も、この異能には敵わないようだね」
ルイス「っ、今すぐ辞めろ! サルトル! おい、聞いてるのか!」
サルトル「……君なら判るだろう? 遅すぎたんだよ、全て。猶予を作ろうとも、上は待ってくれない」
ルイス「これは僕達だけで解決できた問題だ!」
サルトル「だから、私に云わないでくれ。“異能兵器”や“焼却の異能者”よりはマシだろう?」
ルイス「でも君の異能は──!」
彼の胸ぐらを掴む手が、強くなっていく。
サルトルの異能。
それは“対象者の存在を一週間後に跡形もなく消してしまう”というもの。
僕が忘れてしまう前に解除させないと。
ルイス「──解除しろ。いや、解除してくれ……っ、アリスはまだ…!」
サルトル「……キャロル君。たった一人のために、世界が滅ぶ危険をそのままにしておけるか? “時計塔の従騎士”が下した決断を裏切ることは不可能だ。そして僕が異能を解除することも同じく、な」
ルイス「っ、それなら無理やりにでも──」
そこで僕の意識は途切れた。
疲労は消えることなく、注意が疎かになっていたのもある。
欧州では、時計塔の従騎士が絶対だ。
悔やんでも悔やみきれない。
それなのに僕は、きっと──。
---
サルトルside
おっと、なんて思わず声が漏れる。
まさかこんなところで気絶するなんてね。
まぁ、ボロボロの体を見ればすぐに分かるけど。
確か現在彼がいるヨコハマの組織──確か“武装探偵社”に“治癒能力”の持ち主がいたな。
“妖精使ヰ”に預けるには厳しいよな。
あの“本モドキ”と戦ってる、と話は聞いている。
サルトル「……“ワンダーランド”への行き方分かんないや」
レイラ「私のことを無視しないでちょうだい!」
カキン、と刃の交わる音が耳を刺す。
サルトル「ルイスを死なせるわけにはいかないからね。それに君も限界だろう?」
レイラ「何言って──!」
そこで彼女の言葉は止まった。
この異能は死者だろうが、何者だろうが関係ない。
私が解除しなければ、存在ごと消えてしまう。
レイラ「本当に、何をしたのよ……っ」
サルトル「女性を見下す趣味はないけど……。まぁ、私にとってはルイスを助けることが最優先だからね」
レイラ「……──思い出した、」
膝をつくレイラの目は見開いていた。
レイラ「ジャン=ポール・サルトル……異能名は“存在と無”で、その効果は──」
サルトル「気づいてよかったね。あぁ、気づかないで完全に孤独となった状態で死にたかった?」
レイラ「っ、解除しなさい……っ!」
サルトル「断る。キャロル君に借りを返さなければならないし、何より《《上》》に歯向かうのは自殺行為だ」
レイラ「なら無理矢理にでもっ!」
レイラが死者を呼び出すと、私へその剣は向けられた。
しかし、ルイスを抱えながらでも避けるのに問題はない。
サルトル「……軽いね、別世界の君は」
アリス「これでも最近は食べている方なのよ。……ルイスの身体とはいえ、重いと言われたら傷つくからこの話は終わりにしましょう」
サルトル「そうだね」
借りるよ、と落ちていた“ヴォーパルソード”を取ってレイラに向かう。
異能で消えるより先に殺そうとしたが、剣はキーン、と高い音を立てて止まる。
レイラ「なっ……!」
剣を止めたのは、《《一つの鏡》》だった。
サルトル「……どういうつもりかな、アリス」
アリス「わざわざ、今殺す必要はないでしょう?」
サルトル「ワンダーランドにいたから記憶があるけど、そのうち消える。この瞬間だけ守ったって意味はないよ」
アリス「えぇ、知ってるわ。でも私は家族を見殺しに出来ない」
私から離れ、アリスはレイラの横へ並ぶ。
アリス「レイラ」
レイラ「……何よ」
アリス「ここで死ぬのと、消えるのどっちがいい?」
レイラ「私は生きるわ。こんな男に、殺されてなんかいられない」
アリス「……そう」
立ち上がるレイラの腕を引き、アリスが前に立った。
サルトル「その判断、間違いとは思わないのか?」
アリス「えぇ。私は彼女の家族だから」
レイラ「……アリス」
サルトル「虚像じゃないから|この剣《ヴォーパルソード》は必要ないな」
カラン、とヴォーパルソードが落ちると同時に戦いの火蓋は切られる。
---
アリスside
でも、サルトルの剣は届かない。
アリス「また何処かで会いましょう」
流石といったところね。
タイミングよく足元に穴が開き、私とレイラは落ちていく。
アリス「……ふぅ、やっと一息つけるわね」
レイラ「何なの」
アリス「ん?」
レイラ「なんで私を助けたの! あそこで殺せば異能は──っ」
アリス「解除されないわよ」
レイラ「なっ、!」
アリス「……貴方の目的は私でしょ? なら此処で踊りましょうよ」
クルクルと回りながら、私は笑う。
やってきたのは“ヴァイスヘルツ”にある大広間だった。
遠い過去、皆でご飯を食べたり勉強をしたりと活気溢れていた場所だ。
アリス「ただ、私は虚像に戻るわ。貴方が消したいのは私だけでしょ?」
レイラ「……なら早くすることね。私、気が長くない方だから」
知ってる、と私は一瞬姿を消す。
次の瞬間にはレイラに刺された状態の──虚像の私が“ヴァイスヘルツ”にいる。
アリス「七日しか時間がないのよ」
シュッ、と虚空からヴォーパルソードを抜く。
アリス「どちらも時間が残っていない……そんな状態でどこまで戦えるのか楽しみね」
レイラ「……貴方よりも私の方が強いわ」
アリス「数で押してるだけじゃない」
レイラ「異能も自分の力の一つよ。こんなところで壊れても文句はなしよ」
アリス「えぇ。口喧嘩はここまでにして、あとは此処で語り合いましょう?」
---
──「これで良かったのだと……貴様は本気で、心の底から思っているのか?」
──「……分からないわ」
──「何故、私にだけ教えた。何故、私に見届けさせた?」
──「それも、分からないわ」
──「“分からない”と繰り返すことしか出来ないのか、貴様は」
──「……しょうがないじゃない。私は今さっき消えてしまったレイラのことを、あの子のことを忘れたくない」
──「アリス。貴様は今、馬鹿げたことを考えているな?」
アリス「……よく分かったわね」
──「顔に出ている」
アリス「そう」
「「……。」」
──「必要なものは揃っているだろう?」
アリス「|日本のヨコハマ《本のある場所》に|中島敦《道標》、ねぇ……。それだけじゃ足りないわよ。私はレイラみたいに完全服従の使者の兵隊もいなければ、驚異的な頭脳も持ち合わせてないわ」
──「……動き始めるなら早いほうがいいぞ。世界が貴様を変えてしまう前に、な」
アリス「まるで私が悪になるのを望んでるみたいな言い方ね」
──「貴様のしたいことを応援してるだけだ」
アリス「貴方が応援? ははっ、明日は雪でも降るのかしら」
──「……ひとまず私は戻るぞ」
アリス「そうか、応援してくれるのね……」
──「何だ、計画を始められる段階になる前に知ったから殺すか?」
アリス「そんなことするわけないじゃない」
──「じゃあ何だ」
アリス「いや、私には父親も母親もいなかったから……。それに悪事を応援するの、立場的にどうかと思うわよ」
──「……貴様にとっては悪事ではないだろう。大切な友人を──否、家族を取り戻すための貴様の正義だ」
アリス「……どーも」
──「行くのか?」
アリス「いや、帰るわよ。ルイスに迷惑を掛けたくないから。あとはレイラが消えるまでの口裏合わせをしないとだから」
──「そうか」
アリス「貴方も帰ったらどう? どうせ山積みの書類が待っているのでしょう?」
──「……こちらのこともお見通しか」
アリス「それじゃ、また会いましょうね。ヴィルヘルム・グリムさん?」
ヴィルヘルム「……あぁ」
---
太宰side
あれから二週間が経った。
コレといって大きな案件が連続で起こるわけもなく、平和と云えることだろう。
特務課は昼を、マフィアが夜を。
私達武装探偵社がその狭間を担当する、夏目先生の三角構想は今も問題なく続いている。
変わったことと云えば、英国軍と特務課の連携がうまく取れるようになったことでルイスさんがホントーッに忙しい。
今日も英国の方で、帽子屋と協力しながら頑張ってるようだ。
そのお陰で私はこうやって話が出来るのだけれど。
太宰「ということで、第一回『レイラはどうなったのでしょう会議』のコーナー。司会進行は自殺未遂ばかりで一向に死ねない、みんな大好き太宰治がお送りします」
乱歩「……僕、下らない茶番をするつもりなら戻るよ?」
太宰「すみません、乱歩さん。最近いつも以上に国木田くんが構ってくれないので」
与謝野「アンタ、そんなに構ってちゃんだったかい?」
ナオミ「まぁ、最近の国木田さんはいつも以上に仕事に熱心でしたので」
ハァ、と乱歩さんはため息をつく。
乱歩「それで結局、あの日は《《何が起こったんだ》》?」
太宰「乱歩さんもやはり分かりませんか」
与謝野「……この面子を集めたのは、全員がレイラを覚えているからだろう?」
与謝野さんの言うとおり、共通点はソレだ。
何があったか私は詳細を知らない。
けれど、仏蘭西軍が異能を発動したというのを乱歩さんが見ている。
それも時計塔の従騎士に関連しているという。
太宰「とりあえず、例の異能者は分かったんですか?」
乱歩「一応、特務課の方に聞いてみたよ。僕の知っている情報は名前と、異能力名の二つだけ。だけどヒットした」
海「誰だったんですか……?」
乱歩「それは──」
???「──ジャン=ポール・サルトル」
声のした方に私達五人の視線が集まる。
ユイハ「遠い昔にルイスと共闘した異能兵、らしい」
海「どういうことですか……?」
ユイハ「僕の本体──俺は“ワンダーランド”にいたから異能がちゃんと効いていないらしい」
乱歩「……特務課に聞いたんだけど、“対象者の存在を跡形もなく消してしまう”で合ってる?」
ユイハ「それは此奴に聞いてくれ」
ユイハ君が部屋に入ると、後ろに人影があった。
その時、誰もが気がついたことだろう。
ワンダーランドにいたのは自身達だけではないことに。
アリス「えぇ、だいたい合ってるわ。ただ、“一週間後に消えてしまう”のと“存在が消えた者の異能力を使える”のが抜けてるわね」
太宰「……。」
与謝野「それはまた凄い異能だねぇ……」
アリス「それにしても、口裏合わせに少し手間取ってしまったわ。此方に顔を出すのが遅くなって、悪かったわね」
太宰「そういえば直行さんもいたんでしたっけ」
ユイハ「口裏合わせに行ったのは俺だけだろ。因みに、あの時ワンダーランドにいた全員のところへ行ってきた」
ナオミ「それは大変でしたわね……」
乱歩「アリス、一つ聞きたいことがあるんだけど」
乱歩さんはボーッと遠くを見つめながら問いかける。
対して、何かしらとアリスさんは質問が分かっているかのように微笑む。
乱歩「結局、決着はついたの?」
アリス「もうレイラは存在ごと居なかったことになっている。それが私の考えていた救いになるかと聞かれたら……正直、分からないわ」
でも、とアリスさんは寂しそうに笑った。
アリス「私は最後まで彼女の傍にいれた。消えてしまう直前まで戦っていたけれど」
太宰「……ルイスさんと違って一週間休みを取ったのはそれが理由ですか」
アリス「えぇ」
乱歩「それで? 口裏を合わせて来たことを伝えに来ただけじゃないでしょ?」
与謝野「おや、そうなのかい?」
ユイハ「……今は覚えていても、二週間後には俺達の記憶からも消える」
その場にいた全員が、驚きを見せていた。
ワンダーランドにいたことで覚えていられる、というわけではないらしい。
ユイハ「結局のところ、世界自体が変化する異能だから俺等も勝手に順応するんだよ。他の奴らみたいに、レイラが知らねぇ敵に置き換わる」
乱歩「本当に全員?」
アリス「……太宰君は異能無効化で覚え続けられる可能性があるわ」
太宰「特異点にならないと良いですけど」
海「あの! 本当に太宰さんしか覚えていられないんですか…?」
アリス「ワンダーランドにいたことで、順応するのに時差が生まれただけ。そう考えて貰えたらいいわ」
海「……アリスさんも?」
アリス「……えぇ、残念だけれど」
そんなアリスさんの言葉を最後に“レイラはどうなったのでしょう会議”は終わった。
二週間後──事件から一ヶ月がたった頃には、本当にレイラのことを忘れているようだった。
レイラが知らない敵に置き換わる、とユイハ君は云っていたけれど実際は違った。
もう事件自体が無かったことにされており、ルイスさんの出生や英国軍異能部隊の御二方に関する“全世界配信”も消えた。
それは多分、ルイスさん達にとっては良いこと──なのだろう。
過去を掘り返されるのは、心身ともに疲れるだろうから。
それにしても、と私は少し思うところがあった。
異能がサルトルに取られると考えれば、彼を殺せば消えた人達も戻ったりしないのだろうか。
澁澤の件──DEAD APPLE事件は自分の異能が襲ってくるが、倒せば取り戻せた。
ユイハ「おい包帯、掃除するのに邪魔だからどけ」
太宰「私先輩なんだけど???」
ユイハ「俺のほうが長生きだから先輩だ」
太宰「同じ時を繰り返しているのは長生きとは云わないよ、ユイハ君」
ユイハ「……うるせぇ」
私は無理矢理どかされ、彼は私のいた場所を掃除する。
まぁ、さっきまでのことを考えても仕方ないか。
どうせ私しか覚えていないのだから。
ユイハ「そう云えば太宰」
太宰「……ちゃんと呼んでくれるの珍しいね」
ユイハ「気分だ気分。それで“アリスが死ぬ未来”はどうなったんだ?」
あぁ、そんなことも話したな。
とりあえずアリスさんは死んでいない。
太宰「……可能世界だったんだろうね、きっと。それか誰かの行動一つで未来が変わったか」
ユイハ「ふーん」
聞いてきた割には興味がなさそうなユイハ。
それ以上の会話はなく、レイラのことも可能世界のことも。
両方、暫くは考えないことにした。
もう忘れることが一番いい。
それが最適解の筈だからと自分を納得させる。
森さんみたいで嫌だなぁ、なんて考えながら掃除の終わった場所でまた仕事をサボる。
否、私はサボっているわけではなくて次に起こるかもしれない大きな戦いの為に力を温存しているだけ。
太宰「──本当に…?」
ユイハ「ん?」
太宰「……本当に覚えているのは私だけで、忘れることが最適解なのか?」
何か、引っかかる。
『……特務課に聞いたんだけど、“対象者の存在を跡形もなく消してしまう”で合ってる?』
ここは違う、乱歩さんの言葉じゃない。
特務課の情報なら多少信頼できるし、アリスさんも否定していなかった。
それなら、もう少し後の話だろうか。
否、少しなんてものじゃない。
その直後にアリスさんが云った言葉は何だった。
『(前略)──ただ、“一週間後に消えてしまう”のと“存在が消えた者の異能力を使える”のが抜けてるわね』
──此処だ。
注目すべきは今日、私以外がレイラを忘れてしまったことじゃない。
太宰「“存在が消えた者の異能力が使える”……っ、!」
アリスさんのことだ。
嘘を付くとは思えないし、多分事実だ。
太宰「……どうしたら」
太宰「安吾に連絡を取って欧州に繋げてもらうか?」
太宰「否、ルイスさんを通したほうが早い。でも敦くんと依頼に行ってるし──!」
ペチン、と優しい音が響いた。
理解するのに時間が掛かる。
私は、今、ユイハ君に、叩かれた、よね。
太宰「……ゑ?」
本当に不思議で彼の方を見ると、掃除道具でフルボッコにされた。
国木田くんが止めるまで叩かれまくったんだけど。
もっと早く止めてくれてもよくないかな。
え、日頃の行いが悪いって──。
太宰「──それでも早く止めてよ!?」
国木田「……。」
太宰「無言やめて?」
ユイハ「……。」
太宰「え、もう一回云うよ? 無言やめて???」
ユイハ「……なら、さっさと社員集めて情報共有しろや」
バコン、と過去一の音が事務室に響いた。
---
No side
銀色の髪が風で揺れる。
仏蘭西軍でもなければ、
時計塔の従騎士でもなければ、
その男を理解している人はいない。
異能力については、尚更。
???「おかえりなさい、サルトルさん」
サルトル「……どうせならお前以外に迎えられたかった」
???「まぁ、そう怒らないでくださいよ。口調が変わってますよ」
微笑む男を横目に、サルトルは遠く離れた椅子へ座る。
サルトル「──で。どうするんだよ、魔人さん」
フョードル「僕も記憶が継承されているわけではないので、何をしてどの異能を手に入れたか教えてくれませんか?」
サルトル「断る」
フョードル「……何故か理由を聞いても?」
サルトル「俺は──否、私は彼の友人として手を貸したかった。情報の対価を支払いに来たというのに……全く、シグマ君なら良かったものを」
フョードル「僕がいるのは想像できたでしょう?」
サルトル「……チッ」
最悪な空気の中、部屋に入ってきたのは何も知らないシグマ。
フョードル「良かったですね、シグマさん。サルトルさんに好かれていますよ」
シグマ「はぁ……?」
サルトル「誤解を生む言い方をするな」
困っているシグマを見ずに、手元の本を読み進めるフョードル。
サルトルは鞄から資料を取り出した。
サルトル「とりあえずルイス・キャロルの関係者──主に欧州と日本の異能力者のリストだ。何に使うか予想はつくが……」
ダンッ、とフョードルの顔の横に足が勢いよく当たる。
風で少し揺れた髪が落ち着いてから、彼は小説から視線を上げた。
サルトルは片足を上げたまま顔を近寄せる。
サルトル「キャロル君をあまり苦しめるようなら、俺がお前を殺す」
シグマ「なっ……!?」
サルトル「“天人五衰”、とか云ったか? ハッ…目的は知らないが、俺が今まで手に入れてきた異能をナメるなよ」
フョードル「……僕と貴方、どちらの方が多くの異能力者を手に掛けてきたんでしょうね」
サルトル「お前……!」
フョードル「口調。……気をつけるのではなかったんですか?」
サルトル「……チッ」
いつの間にかヒートアップしていて掴んでいた胸ぐらをサルトルは手放す。
フョードルは何事もなかったかのように微笑みながら、崩れた襟を直していた。
サルトル「……では、私はこの辺で」
フョードル「えぇ。背後にはお気をつけて」
サルトル「……ご親切にどうも」
部屋を出ると同時に鳴り響く銃声。
服が紅く染まっていったかと思えば、重力に沿って床へ倒れ込む。
シグマは音のした方へ視線を向けた。
フョードルの持っている銃口から煙が上がっている。
シグマ「……何故だ。情報に間違いはなかった。どうして撃ったんだ」
フョードル「異能力について話していただけなかったのと、彼の異常な執着は計画に邪魔だと思ったので」
シグマ「だが──!」
フョードル「それこそ治癒能力、又は《《それと同等の力》》が無ければ助かりませんよ。心臓を一発で撃ち抜きましたし、ズレていても大量出血は避けられません」
????「……そうだな。私が《《あの異能》》を持っていなかったら魔人さんの言う通りだっただろう」
第三者の声にシグマもフョードルも驚いた。
そして好奇心旺盛な子供のように、小説を投げて駆け寄る。
フョードル「即死ではないのは分かっていましたが真逆まだ意識があるとは……英国軍ですか? それとも探偵社のように即死だから回復したんですか?」
サルトル「教える義理はないね」
フョードル「あぁ、そうですよね。しかし僕もちゃんと忠告はしましたから」
サルトル「……俺がキャロル君の為に手を貸したことを忘れるなよ、魔人フョードル」
フョードル「えぇ、忘れませんとも」
次の瞬間にはサルトルの姿は何処にもなく、床に広がっていた筈の血痕も消えていた。
シグマ「おい、フョードル……」
フョードル「何でしょうか」
シグマ「──いや、何でもない」
ゴーゴリ「はぁーい! 軍警の視察終わった僕が帰ってきたよ☆」
フョードル「おかえりなさい。あぁ、そうだ。紅茶でも淹れましょうか。確か美味しいものがあっちの棚に──♪」
そんなことを云いながら、フョードルは部屋の奥に消えた。
ゴーゴリ「……ドス君、機嫌良さそうだね」
シグマ「フョードルは何者なんだ? 頭脳明晰かと思えば、あれではまるで子供だ」
ゴーゴリ「一般人のシグマ君には分からないと思うけど」
シグマ「おい」
ゴーゴリ「頭脳明晰で、先の展開が読めてしまえるからこそ……予想外の出来事が起きると嬉しくなるんじゃないかな。それが君の目には“子供らしく”見えた」
シグマ「……貴様、姿を現すより前に帰ってきていたな?」
ゴーゴリ「あ、バレた?」
シグマ「バレた?、じゃなくてなぁ……! ハァ…私はもう寝る」
ゴーゴリ「えぇ、勿体ない。ドス君がせっかく紅茶入れてくれるのに…って、もう行っちゃった……」
ゴーゴリは辺りを見渡して、フョードルの投げ出した小説を取って机に置いておいた。
まだ机上に広げられたままの資料を手に取りながら、鼻歌交じりに指先を踊らせる。
---
『はぁ〜、結局最後まで戦い続けるなんて頭おかしいんじゃないの?』
『貴方が負けないのが悪いわ』
『そりゃあ最初で最後なんだから負けたくないでしょ』
『……死者も出し切って、結局1対1で戦ったわね』
『そうね。にしても、何なのよあの剣は』
『聖剣“ヴォーパルソード”。ルイスに下賜された“異能をはじめとした人の理から外れたもの”だけを斬る事ができる剣よ』
『だから死者軍が瞬殺されるのね』
『アレはスカッとするわね』
『こっちはイラッとしたんだけれど』
『まぁまぁ、そう怒らないでよ、レイラ』
『……はぁ』
『それにしても無理して最終的に二人とも倒れることになるなんてね』
『異能には慣れていた筈だけれど、貴方の剣が私に向くたびに異能が少しずつ消えていった。だからもう、私は生き返れない』
『私も身体がボロボロなんだけれど』
『良いじゃない、貴方はまだルイス・キャロルたちと生きていける。というか、そう簡単にくたばるならとっくの昔に死んでるでしょ』
『まぁ、そうね』
『あと数分かしら』
『えぇ。何か言い残したことでもあるの?』
『……いえ』
『何かあるやつね』
『あれ、私否定したわよね』
『どうせ私は助けられない。貴方の記憶もなくなってしまう。なら、伝えても伝えられなくても変わらないわよ』
『……私、貴方のことが羨ましかった。仲直りしたかった筈なのに、いつの間にか嫉妬に変わっていたのよ』
『そう……』
『でも、アリスはアリスのままだったわね』
『それを言うなら貴方も変わらないわよ、レイラ』
『……そう』
『っ、レイラ! 身体が光って……!』
『これが“存在と無”なのね。本当、最悪な異能だこと』
『嫌だっ、私まだ話したいことが……!』
『……なんで貴方が泣くのよ、莫迦ッ』
──「記憶を見るのはどうだい?」
レイラ「最悪の気分ね」
はぁ、とレイラは暗闇の中、座り込む。
レイラ「で、ここは何処?」
──「忘れられたものが辿り着く場所さ」
レイラ「貴方の見た目についても聞きたいのだけれど」
──「それはまだ教えられないね」
レイラ「……《《まだ》》?」
──「いいや、こっちの話だよ。とりあえず此処から友人を見守ったらどうだい?」
レイラ「遠慮しておくわ」
──「何故?」
レイラ「貴方の言うことを聞くのが癪だし、見守る必要はないだろうから」
──「そうかい」
『私のことは早く忘れて、ルイス・キャロルを支えてあげてね』
『そんなこと出来るわけ……!』
『それが私の最後の願い。貴方達が平和な世を生きていけるよう、祈ってるから』
レイラ「……神とやらがいるのなら、どうか二人を──」
Ending.2「太陽を失った先の未来」
加筆あり。
20142文字。
アーサーside
エマ「つーかーれーたー」
中也「流石に異能がちゃんと使えないと疲労がヤベェな」
太宰「お疲れさまでした、エマさん。とりあえず水でも如何です?」
中也「おい糞鯖ふざけるなよ俺も労え」
太宰「うーわっ、君を労ってる私を想像したら寒気が止まらないんだけど」
中也「俺も想像して吐き気がする」
エマ「仲良しだね!」
双黒「何処が!?」
そういう所だよ、と思いながら僕は目の前の敵に集中していた。
僕達“帽子屋”は双黒の力も借りたけど、予定通りグラムの無力化に成功した。
後はルイスが、レイラをどうするかだ。
殺さなければ幾度も同じテロは行われるだろう。
|死んだ異能者《手札のカード》たちが現時点でどれだけ残っているかだな。
とりあえずロリーナはまだ倒せていない。
アーサー「コナンさん、大丈夫かな……」
エマ「大丈夫だよ、アーサー」
アーサー「……エマ」
エマ「私達の師匠の先輩だよ? きっと、救ってくれる」
アーサー「僕も君みたいに自信が持てたら良かったんだけどね」
にしても、と僕はグラムを見る。
資料によれば孤児らしく、ある日レイラが拾ったことになっているけど本名は違うらしい。
ちゃんとした話は聞いてないけど、彼も戦争に振り回された者の一人だ。
戦争がなくなれば、それこそレイラとの繋がりも必然的に消える。
それを彼は、分かっているのだろうか。
太宰「ははっ! 中也の蹴りなんて当たらないね!」
中也「手前……! この事件が解決したら覚えてろよ……っ」
太宰「中也の方が覚悟しといたほうがいいよ。黒歴史ばら撒いてあげるから」
中也「黒歴史なんかねぇわ!」
太宰「七年前、姐さんとの初対面の時。綺麗な姐さんに見惚れて、そこから品のある人が好きに──」
中也「やっぱり手前は今ここで殺してやる」
エマ「え、殺し合い!? 私も混ぜて!!」
アーサー「いや、混ぜてじゃないでしょ……」
でも、エマが楽しそうでよかった。
異能特務課の被害がどれぐらいか分からないけど、指示が来てないから待機で良いんだよな。
太宰「……危ない!」
そう聞こえ、僕は太宰くんの視線の先を見た。
異能力が解除されたのか、グラムの大剣が僕の首へと向かってくる。
エマ「異能力“悪戯少女”!」
中也「異能力“汚れちまった悲しみに”!」
エマが剣を受け止め、中也くんが僕を抱えて移動する。
一人だったら、死んでいた。
やっぱり僕の異能力は拘束能力としての強さはない。
触れたら解除してしまうのだから。
でも、一体誰がグラムを解放したのだろうか。
---
ルイスside
アリスが斬られる。
それを黙ってみていられるわけがなく、僕は強制的にワンダーランドへ送った。
少し判断が遅れたけど、まだ死んではいない。
与謝野さんが治してくれるはず。
大丈夫、アリスは死なない。
そう、自分に何度も言い聞かせる。
レイラ「アリスを殺して、全て殺してこの世界を終わらせる。やっぱり私にはそれしか……っ」
アリスを斬り損ねて、床に当たった剣。
表情は見えない。
けど、何か違和感がある。
レイラ「あぁ、でもアリスはもう殺せない。だから貴方を殺して終演への第一歩を踏み出しましょう」
此方へ向けられた剣先と、殺意。
でも、やっぱりおかしい。
殺意は殺意でも、知らない雰囲気だ。
ルイス「……!」
とりあえずワンダーランドから剣を持ってきて攻撃を受ける。
何度か受けていると、違和感なんて気にしている場合じゃなくなった。
押されている。
さっきのレイラの言葉から、攻め込むことができない。
ルイス「〜っ、僕は──」
戦闘狂かもしれない。
戦いを楽しんでいるかもしれない。
今も笑っているかもしれない。
レイラ「……っ!?」
ルイス「それでも僕はルイス・キャロルだ!」
高く飛び上がった僕の刃は防がれた。
でも、一歩踏み出した。
踏み出せたんだ。
だから僕はまだ戦える。
レイラ「……ふざけないでよ」
ルイス「っ、」
レイラ「私の邪魔をしないで! 私だって……私だってッ、アリスみたいに──!」
ルイス「……レイラ、君は」
バンッ、と銃声が響く。
同時に僕は吐血した。
怪我をして、痛みに気づいて、床に倒れるまでに少しのラグがあった。
レイラ「同情なんて要らないわよ。私はもう諦めたの。貴方たちのようにはなれない」
左腹部か。
口から流れる血を拭いながら、どうにか立ち上がる。
レイラ「っ、まだ立ち上がるなんて……!」
ルイス「立ち上がるさ」
いつの間にか、妖精が隣にいた。
お陰で多少無理をしても僕は戦える。
ルイス「君が諦める必要は、何処にもない。アリスだって云っていたじゃないか」
レイラ「無理。あり得ない。私は誰も許されない、許されてはいけない」
ルイス「……それなら僕も許されることをしてきたとは云えない」
殺して、殺して、殺し続けて。
こうやって生きていることが許されない。
きっと今も誰かが僕を憎んでる。
死者軍にだっていた筈だ。
一人一人、顔を覚えてなんていないけれど恨まれてる。
じゃなきゃおかしい。
僕は贖罪のために生きているから。
許しをもらえても、多分素直には受け取れない。
ルイス「アリスと話すつもりは?」
レイラ「ない」
ルイス「……そっか」
ごめんねアリス、と僕は小さく呟いた。
---
レイラside
何で、立ち上がるのよ。
私はただ、やり直したいだけ。
異能なんてなければ、私達の関係は変わっていた。
“1102”と“1127”じゃない。
私達は友人で、相棒で、家族で、
ルイス「……。」
あの吸い込まれるような綺麗な翡翠の色をした瞳。
彼のことがどうしょうもなく嫌で、嫌で消してしまいたくなる。
レイラ「……もう死んでちょうだい」
手には起動釦がある。
押せば爆弾が爆発して、ここら辺一帯は火の海になるでしょう。
私は何度も死ぬことができる。
でも彼は違う。
レイラ「ぁ、あれ……?」
どうして押せないの。
目の前にいるのはアリスじゃない。
脅威は彼以外にもいるけれど、たった一つの釦で計画が進めやすくなる。
彼が死んで、動揺しているところに死者軍を動かせば勝ちはもう確定してるようなもの。
なのに、起動する少し前で指が止まる。
ルイス「もらった……っ!」
目の前にはルイス・キャロル。
でも、その姿はアリスと重なって見えた。
(あぁ、私はこんなところで終わるのね)
もう、何がしたかったのかも分からない。
釦も押せなければ、死者軍を盾にして逃げようともしない。
私は結局、羨ましかっただけだ。
アリスは英国軍に拾われ、何も苦労せずに幸せを手に入れた。
異能手術もしていなければ、同じ軍服を着た屍の山に埋もれて敵が撤退するのを待ったこともないのでしょうね。
私みたいに苦労せず手に入れた幸せが、とても輝いて見えた。
眩しくて、
ただその姿が眩しくて、
もう、手の届かないところへ行ってしまったようで。
レイラ「……?」
ルイス・キャロルに抑えつけられると思っていたけれど、何も起きなかった。
誰かに掴まれる感覚も、痛みも、何もない。
ルイス「……どうして?」
レイラ「っ……!」
ルイス「どうして、僕を止めるのかな──」
目を開けば、風で揺れる金色の長髪。
ルイス「──ねぇ、アリス」
アリス「……。」
ルイス・キャロルの手は、私を捕らえようとしている直前で止まっていた。
アリスが、勢いを殺している。
しっかりとルイス・キャロルの腕をつかんで、そこから全く動けないようにしているようだった。
ルイス「……傷は?」
アリス「大丈夫よ、何も心配はいらないわ」
ルイス「……嘘はいいから、っ、」
パキッ、とアリスの頬に亀裂が入るのが見えた。
そう、だった。
アリスは今、生身の体じゃない。
異能力で作られた鏡写しの、異能生命体とよく似た《《何か》》。
このまま無理をすれば、アリスは消えてしまう。
レイラ「……私を守るなんて、気でも狂ったのかしら?」
アリス「虚勢は良いわよ、レイラ」
レイラ「ッ、虚勢なんかじゃないわよ……!」
嘘、何でアリスにバレてるの。
アリス「ルイス、あとは私にやらせて」
ルイス「……本当に|殺せるの《大丈夫なの》?」
アリス「それは……うん、分からないわ。この|器《からだ》がどこまで耐えてくれるのか、私にはわからないから」
与謝野『ルイスさん! 早くアリスさんを此方に送りな!』
ルイス「……。」
与謝野『アリスさんは治療できてない! そのままだと本当に──!』
アリス「悪いわね、与謝野さん。私はもう誰にも直せない。それこそ時を戻すか、“本”を使わないとね」
---
アリスside
ルイス「……っ、君まで僕を置いて逝かないで──」
何か云おうとして、私は諦めた。
確約はできない。
この身体が壊れるのも時間の問題でしょう。
レイラと決着をつけて、ワンダーランドに戻るのが少しでも遅れたら私は終わる。
アリス「──今度こそ始めましょう、レイラ」
ルイス「アリス!」
アリス「死なない貴方と、私が壊れるまでの時間制限がある──最初で最後の喧嘩」
レイラ「……すぐに壊してあげる」
気がつけばレイラの隣にグラムと転移能力者であろうフードの青年がいた。
剣を一つ貰い、此方へ向ける。
私もヴォーパルソードを構えて、深呼吸をする。
レイラの二つ目の異能に異能無効化が効くかは分からない。
それこそ、乱歩が考えてくれていた異能を分離させてから戦う方がいい。
でも、こればかりは譲れない。
乱歩『……アリス』
アリス「悪いわね。ユイハも動かさないでおいて貰える?」
乱歩『僕が聞きたいのはソレじゃない。本当に君が戦うつもり?』
アリス「ルイスの決意を無駄にしてしまうけれど、私は私の決意を優先するわ」
乱歩『……ルイス、戻ってきなよ』
ルイス「でも──!」
乱歩『妖精が治すには君は重症すぎる。与謝野さんの治療を受けないと先に君が死んで、アリスの決意を無駄にすることになるよ』
ルイス「……っ、」
背後の気配が消えたかと思えば、ちゃんとルイスはワンダーランドに行ったらしい。
通信で死者軍が消えたことも把握できた。
これで私が負けたら、世界は変わってしまうわね。
アリス「……また割れた」
身体中にあるヒビに、もう溜息も出ない。
そして、レイラの方も準備ができたようだった。
レイラ「時間がないのでしょう? ならこれは一回勝負ね」
アリス「……そうね。乱歩、レイラの動きを止めたらよろしくね」
乱歩『出来ることなら君は巻き込みたくないんだけど』
ユイハ『俺もルイス・キャロルに怒られたくないんだが』
アリス「それは悪いわね」
レイラ「別れは済んだかしら?」
えぇ、と答えると静寂に包まれる。
私が深呼吸をしていると、レイラも同じようだった。
踏み出すのは同時だった、と思う。
距離が縮まって、レイラの表情がちゃんと見える。
私を殺そうとしているようにも、諦めているようにも。
ヴォーパルソードを持つ手が緩みそうになる。
でも、二人で決着をつけようと決めたのは|私《アリス》だ。
本気でぶつからないといけない。
アリス「──!?」
レイラにヴォーパルソードが届くより前に、何かが私達の間に入ってきた。
グラムでは、ない。
隣にいたレイラの仲間であろう転移能力者が、急に現れて剣は彼に──
アリス「うそ、でしょ……?」
レイラ「──ぁ、あぁ……っ!」
──フードが取れ、その人の顔をしっかりと見た。
---
レイラside
私の最後の一撃は、アリスには届かなかった。
剣が貫いたのは大切な──。
レイラ「シャムス!」
私が、傷つけた。
そしてヴォーパルソードも貫いている。
どうなってしまうかは、容易に想像できた。
レイラ「嫌だっ、ねぇシャムス、起きてよ、私は貴方と、アリスと、っ、また笑えたのなら、それだけで、わたしは……っ!!」
━━━━「……ぼ、くは」
小さな声が聞こえた。
レイラ「っ、貴方意識が──」
シャムス「僕は……君の一番近くにいたのに、間違ってることなのに止められなかった。実験で君が傷ついてるのに、何も出来なかった」
レイラ「……良いのよ、そんな昔のことは。私のせいで貴方もこの戦いに、付き合わせてしまったのだから」
シャムス「ねぇ、レイラ。君の太陽になれなくてごめん。でもあの子がいるから大丈夫だよね」
シャムスの視線の先には、グラムがいた。
私が殺されそうになったら動けるようにか、幾つも剣が作られている。
どうしたら良いのか分からず、立ち尽くしているようだった。
シャムス「レイラ。すぐには分からなくても、君なら自分の力で僕と同じ人達を解放できるはず」
レイラ「……貴方が云うなら、きっと出来るんでしょうね」
シャムス「アリス…で、良いんだよね……?」
アリス「……えぇ」
シャムス「僕のことは、気にしないで。その剣はレイラと決着をつけるには、きっと一番の方法だったんでしょ?」
アリス「っ、貴方はいつでもそうやって……、」
アリスの目にも涙が浮かぶ。
シャムスは一体、どこまで理解しているのだろう。
私と共に行動した時もあれば、拠点の留守を任せたこともあった。
私が積み重ねてきたすべてを見てきたわけではない。
シャムス「あぁ、最後にちゃんと話せて良かった。僕も異能力者で良かっ、たなぁ……」
アリス「シャムス!」
光りに包まれる彼の手を、アリスが取る。
これで、本当にお別れ。
そう思うと何も考えられなくて、ただ涙が浮かぶばかり。
アリスも同じなんだと思う。
虚像と云っていたのに、人間じゃないとあれだけ云っていたのに泣いている。
シャムス「…金色の、夜明けだ……あの時と同じ、温かい…ひか、り……」
掴んでいたものはなくなり、地面に手がつく。
レイラ「うっ、あ"ぁ……っ、」
溢れるのは泣き声。
“死神”で蘇った異能力者を、もう一度蘇らせることはできない。
昔、使い勝手の良かった異能力者で試したことがある。
もう会うことはできない。
大切なものを失うのは、いつぶりだろうか。
いや、初めてかもしれない。
アリスは虚像として生きている。
一度失ったはずのシャムスは、幼い私が蘇らせた。
完全に、もう一生会えることないのは、初めてだ。
レイラ「ごめん、なさっ……」
グラム「……お嬢」
レイラ「死刑でも何でも良い…私を、誰も許さないで……っ、お願いだ、から……!」
グラム「アンタ、何を云って──」
━━━「君は死刑でも足りないぐらいだろうね」
---
ルイスside
ルイス「君は死刑でも足りないぐらいだろうね」
グラム「おい──!」
ルイス「死者軍による世界各地同時テロに、英国軍の闇を明らかにした。君もアリスと同じく被害者であるけど、同時に加害者でもある」
グラム「っ、お嬢がどれだけあの男を大切に思ってたかお前は……ッ!」
ルイス「あぁ、知らないよ。シャムスだっけ? 大切な人──彼を失って、ようやく分かったんだろ? どうして人々が命を懸けられるのか。僕がッ、僕達がロリーナを! 仲間を失ってどんな気持ちだったのか…ッ! ようやく分かったんだろっ……!!」
グラムに襟を掴まれたが、僕は続けた。
大切な人がいなかったわけじゃない。
レイラにも、大切な人がいた。
そして僕と同じように目の前で助けられなくて。
何も出来なくて。
自分の無力さを呪って。
どれだけ、その人に救われていたのか。
ルイス「……|君《グラム》は、レイラをどう思ってるんだ? 大切な人なんじゃないのか? だから間違っていると分かっていても、彼女についていったんだろ」
グラム「そうだよ。お嬢──いや、レイラは俺にとって大切な存在だ。でも、異能がない世界が出来たら俺はグラムじゃなくなるから良いんだ」
ルイス「……それって」
━━「ハチャトゥリアン」
やっと離されたかと思えば、後ろに直行さんがいた。
直行「大戦時、或る軍に捕虜にされてレイラが来なければ死んでいた人間のうちの一人」
ルイス「……異能がなければ歴史が大きく変わる」
直行「そういうことだ。ま、レイラにとっては|現在《いま》を見るよりも|過去《むかし》を見て、異能がないことのほうが重要らしいがな」
レイラ「……、私は、」
ルイス「とりあえず死刑にはさせないよ、レイラ。何が何でも死なせない」
レイラ「っ、ルイス・キャロル──!」
ルイス「君は知るべきだ。何をしてきて、何をするべきか」
それから、と僕は目を伏せる。
ルイス「これからについての話もね」
横を見たレイラは、少し驚いているようだった。
シャムスを失ってツラい思いをしてるのは、一人だけじゃない。
行き場のなく彷徨っていたアリスの手は、いつの間にかレイラの服の裾を掴んでいた。
彼女まで失わないように。
そして、もう離さないように。
---
直行side
直行「……|レイラ《あいつ》が望んでるんだから死刑に──いや、今すぐにでも殺せば良い。元々、その予定だっただろ」
ルイス「それでも貴方は“ハチャトゥリアンについて”を、僕に伝えに来ただけで終わらせた。今のレイラを殺すことなんて容易でしょう?」
直行「莫迦なこと云うな。命の恩人が──アリスがあんな風に泣きながら裾を掴んでいる相手を、ただの被害者である俺が横槍入れて殺すほど腐っちゃいねぇよ」
ルイス「……マフィアなら感情に左右されず、早く殺すべきだと思いますけど」
ルイスの冷たい言葉に、俺は上がっていく煙草の煙を見ながら考えていた。
感情に左右されず、早く殺す。
それはきっと殺し合いでは正しいことで、生き残る為に必要なのだろう。
だが、生憎と俺は人間で感情というものが──理性というものがある。
また直哉は利用されて、やりたくないことを無理矢理やらされて。
多分、ルイスの云っている感情に左右されずというのは難しい。
この怒りがそのまま刃となり、レイラを殺す。
それだって、結局は感情のまま動いている。
でもそうしなかったのは、彼奴が大切なものを失ったことに同情したから。
初めて失ったことを、知ってしまったから。
アリスの大切な人であり、ただの悪ではないから。
あの空気を壊すわけにはいかないから。
--- 『やっぱり、貴方達兄弟はマフィアに向いていない』 ---
いつかルイスに云われた言葉を思い出す。
マフィアに必要なのは冷酷さ。
人を殺せない俺達にとってマフィアは、きっと本当の居場所とは呼べないことだろう。
でも俺は、後悔していない。
直行「──お前が殺さないのと、理由なんてそう変わらないよ」
ルイス「……。」
直行「一時の感情に振り回されないで、色々と考えるんだ。レイラがやってきたことは許せないし、本人もそれは理解している。死で償おうとしてるのを手伝ったって良いが、生きることで償うことが出来るかもしれない」
ルイス「……それで良いと、本当に正しいと思いますか?」
直行「さぁな。正しいかどうかは俺達でも意見が分かれるだろうし、結局は世間が決めることだろう。レイラも、死ぬ時期が変わるだけだ」
ただ、と小さく笑う。
直行「俺はお前にもアリスにも後悔はしてもらいたくないし、幸せになってもらいたい」
ルイス「幸せに……?」
直行「レイラも含め、今度こそ一度きりの人生だ。幕を閉じるのに今はまだ早いんじゃねぇか?」
瓦礫に腰掛けて煙草を吸う。
やっと力が抜けたのか、ルイスも頭をワシャワシャと掻きながら座り込んだ。
殺すことがたった一つの正解だと思って、ルイスは此処まで進んできた。
それを止めるのはどうかと思ったが、頭が良いから理解してくれたんだろう。
まぁ、レイラが死を求めた時点で殺す気はないようだったけど。
直行「なぁルイス」
ルイス「……何ですか」
直行「色々あったが、俺は今もマフィアにいることを後悔してねぇよ」
ルイス「そう、ですか」
直行「それだけ伝えられたら満足したわ。あー、無理しすぎた。ちょっとワンダーランドまで送ってくれねぇ?」
ルイス「ぇ、ちょっ、直行さん、血が滲んで、」
直行「いやぁ、一応瀕死状態じゃなくなったけど怪我人なことには変わりないから! あははっ!」
帽子屋の奴に無理云って転移してもらったからな。
探偵社の女医さん、怒って待ってるだろうなぁ。
ルイス「笑ってないでちゃんと治してきてください!」
直行「へいへい」
ルイス「返事はハイが一回ですから!!」
ーーー
アリスside
どうしたら良いか分からなくて。
ただただ涙が止まらなくて。
何も考えることが出来なくて。
シャムスが消えて行き場のなくなった手は、レイラのボロボロになったドレスを掴んでいた。
ルイスが云うまで、レイラは気づいていなかったんでしょうね。
驚いて此方を見ている。
アリス「……酷い顔ね」
レイラ「それはお互い様でしょう?」
アリス「貴女よりはマシな気がするわ」
レイラ「じゃあ聞いてみましょうよ、世界中の──」
そこで私達はバタンと地面に倒れた。
レイラもギリギリだったのかしら。
私は、普通に片方の足が砕けて座っていられなくなった。
すぐに再生し始めているし、ルイスにはまだ気づかれていないかしらね。
レイラ「……こうやって二人で横になるのはいつぶりかしら」
アリス「さぁ、どうだったかしら。木陰で眠ってしまったときのことなら、結構思い出せるのだけれど」
レイラ「あの大きな木よね? よく夕暮れまでに帰らなくて大人達に怒られたっけ」
アリス「シャムスが探しに来てくれた時は、ギリギリ間に合うのよね」
レイラ「たまに別の場所で寝てるとシャムスも一緒に怒られてたっけ」
思い出話は、止まることがない。
最初からこうやって話せていたら、すれ違っていなければ世界を巻き込んだ喧嘩なんてしなくて済んだ。
アリス「そういえば、この喧嘩はどっちの勝ちかしら?」
レイラ「私の負けでいいわよ、アリス。寄り添おうとした貴女を受け入れなかった、私が悪いから」
アリス「……じゃあ、また同点ね。貴女に刺された時に1点譲ってあげたから」
レイラ「ちょっと、アレは完全に私の勝ちだったじゃない。というか自分から刺されにいったのに譲ったなんて、上から目線すぎない?」
アリス「私は心が広いから」
レイラ「どこがよ」
アリス「そりゃあ大西洋ぐらい」
レイラ「太平洋じゃないのね」
アリス「大西洋の方が馴染みがあるじゃない? あの島があったし」
レイラ「……馴染み、ね」
アリス「あー、お腹すいたー」
レイラ「はぁ……会話をしなさいよ、会話を。これじゃキャッチボールじゃなくて一方的に投げられてるだけなんだけど」
アリス「私は貴方に殺意という尖ったボールを一方的に投げられていたのだけれど」
それは、と起き上がろうとしてレイラは諦めているようだった。
アリス「──初めは、殺すことだけが救いだと思ってた」
レイラ「……。」
アリス「でも、全然違かった。こうやってボロボロになる前に話すべきだったのよ」
崩れゆく身体を見て、時間がないことを察する。
私は、きっとここで消える。
ルイスに別れを告げることができず、レイラの横で割れた鏡となる。
アリス「ねぇ、レイラ」
レイラ「……何よ」
アリス「あまり早く、此方に来ては駄目よ。貴方は生きて、生きて、生き抜いてから一緒に地獄へ堕ちましょう」
レイラ「っ、貴方が地獄に落ちる必要はない!」
アリス「どれだけ悪行を重ねてきたか考えれば、別に何もおかしくないわよ」
また、割れた。
不思議と消えることは怖くない。
伸ばした手がヒビだらけで、でも私は動かずにはいられなかった。
アリス「……さよなら、私の大切な──」
覚悟を決めた瞬間、世界が変わった。
レイラ「こ、こは……?」
???「ワンダーランドだよ」
アリス「……ルイス」
ルイス「ごめんね、アリス。邪魔をするつもりはなかったけど──やっぱり|バッドエンド《君が消えるの》は嫌だ」
涙を流して私の近くにいるルイス。
何故なのかしら。
私も涙が溢れて止まらない。
---
レイラside
あれから、どれだけの時が経ったのかしら。
正直なところ、私にとっては何年でも変わらないから興味はないわ。
でも──。
レイラ「──暇なの?」
アリス「暇じゃないわよ。欧州と特務課を繋ぐ架け橋として、やらなくちゃいけないことが沢山だもの」
レイラ「ルイス・キャロルの身体を使って毎日訪れている人の発言とは思えないわね」
私とグラムはムルソーに収容され、全く関われない。
けれどアリスが伝言を預かったりしてくれているから、近くにいる感じがする。
レイラ「で、仕事はどうしてるのよ」
アリス「勿論やってるわよ」
ルイスが、という一言で溜息が出た。
何だか私の知っているアリスから、どんどん性格などが離れていっている気がするのだけれど。
まぁ、そういうこともあるわよね。
こうやってちゃんと話せるのはあの時、ルイス・キャロルが私にトドメを刺さなかったから。
感謝してるわよ、多少。
けれど、本人には云わない。
シャムスを失ったことで、彼にとってロリーナ・リデルがどれだけ大切だったか理解してしまった。
私の罪は、死でしか償えないと今でも思っている。
アリス「それでコナンさんが今年も無事に生きて──って、聞いてないわね?」
レイラ「……英国軍の異能部隊には興味がないわよ」
アリス「相変わらずねぇ」
レイラ「そういう貴方こそ、どうして毎回英国軍やらヨコハマの人達の話をするのよ。私が興味ないことは知ってるでしょう?」
アリス「えぇ、知ってるわ。でも私が──ルイスが上手く生きていけることを教えてあげたくて」
レイラ「……どういうこと?」
アリス「そのままの意味よ」
レイラ「ちゃんと説明しなさい」
アリス「嫌よ」
レイラ「ふざけてるのかしら」
笑っているアリスを見て、やっぱり羨ましく思う。
私も、幸せになりたかった。
だから“本”を求めた。
(けれど、そんなものは必要なかった)
嫉妬に変わり、殺意に変わる前に話すべきだった。
失ったものは戻らないのだから、その前に三人で話すべきだったのよ。
私とアリスと──。
レイラ「──シャムス」
アリス「会いたい?」
レイラ「どちらかと云えば……そうね、|死にたい《会いたい》」
アリス「……貴方が死ねる方法はあるわ」
レイラ「今、なんて……?」
アリス「あの戦いの時には“永遠の灯火”を消すことができた。でも私が止めた。今も止め続けている」
レイラ「どうして──!」
アリス「貴女まで失いたくない。そんな、生きていない私の我儘よ」
レイラ「……。」
アリス「グラムにも伝えてあるけれど、あの子は凄いわね。狂信、ではないけれど自分のことより貴女のことを考えている」
死にたいなら、とグラムは私の意見を尊重してくれているらしい。
アリス「……一番心配なのはね、“永遠の灯火”が消えたと同時に死んでしまう可能性があるから。貴女は何度も死を繰り返している。もしも身体に一斉に今までの死が伸し掛かるのならば、、」
そこでアリスの言葉は止まった。
レイラ「──“永遠の灯火”で生き返れていたけれど、異能が消えた時点で死ぬのかもしれないのね」
アリス「……流石ね」
レイラ「分かるわよ、貴女の考えていることぐらい」
それで、と私は溜息を吐く。
聞きたいのはすごく簡単なこと。
レイラ「私の死刑はいつ?」
アリスは何かを云おうとして、首を振った。
レイラ「……何よ」
アリス「そろそろ上に圧を掛けれなくなって、急だけれど明日には一度異能を……“永遠の灯火”、を……っ」
レイラ「上手くさっきの話に繋がってきたわね」
アリス「……どうして笑っていられるの」
レイラ「逆に聞くけれど、死を望んでいた私が泣き喚いたりすると思った?」
アリス「それは──」
レイラ「生憎と、私は貴女が想像しているよりも死にたいの。仲直り出来てハッピーエンド──なんて最初から無かったのだから、諦めてもう此処に来なければ?」
そう、視線を逸らしながら云えばアリスは面会を終了した。
実際に私がこうやってムルソーにいる時点で、昔みたいに共に生きることはできない。
ルイスとアリスが、老いないのと同じように。
レイラ「……はぁ」
《《あの時》》よりは、マシな別れ方かしら。
自身の頬を伝う涙をぬぐいながら、私は溜息を吐いていた。
---
ユイハside
ユイハ「……流石にレイラをどうにかしたいとはいえ、僕の存在も問題じゃない?」
ルイス「まぁまぁ、細かいことはいいから」
細かいことじゃない気がする。
けど、僕は考えることは諦めた。
きっと、ルイスが色々と動いてくれてるから僕はここにいれる。
ユイハ「アリスは?」
ルイス「……さぁ」
ユイハ「さぁ、ってお前なぁ──!」
ルイス「君が限られた時間を繰り返していた時より、この別れはアリスにとってツラいことは……うん、その顔だと分かってそうだね」
ユイハ「……イラつく」
ルイス「それと、あまり喋らない方が良いよ。上に君の存在はハッキリと説明していない。“七人の裏切り者”の一人と知られたら──」
ユイハ「あとは想像に任せる、か?」
そこそこの付き合いだし、何となく言いたいことは分かってきた。
でも、そうだな。
本心で何を考えてんのかは、未だに分からない。
???「お久しぶりです、ルイスさん」
ルイス「やっほ〜、彼女くんは元気かい?」
???「彼女ではありません」
ルイス「……冗談通じないなぁ」
???「随分と変わられましたね、ルイスさん」
ルイス「君も、少しは人間というものを理解してきたんじゃないかい?」
???「そうですね。ルイスさんが人間じゃないということは、まだ当機には理解できませんが」
まぁまぁ、とルイスが話を続ける。
何だ、アイツ。
とりあえず人間じゃないことは分かる。
何をどうしたらあーいう奴との繋がりができるのやら。
???「中也様はお元気ですか?」
ルイス「君の後ろにいるよ」
???「……ルイスさんの異能は恐ろしいですね。急に無から人が現れるので、当機でも対応不可なケースです」
中也「元気そうだな。ワンチャンでルイスさんに声をかけて正解だったわ」
ルイス「密入国を除けば問題ないからね」
???「密入国は問題では?」
中也「相変わらず頭が固いなぁ、オモチャ野郎」
???「はい? 当機の頭のパーツは硬いですが……?」
中也「そうじゃねぇよ」
ユイハ「そろそろ誰が僕に説明してくれ」
これは、とソイツは僕の方に歩いてくる。
真顔で近づいてきてめちゃくちゃ怖いんだが。
???「アンドロイドジョークはお好きですか?」
ユイハ「……はぁ?」
アダム「当機──私は、アダム・フランケンシュタインと申します。夢は機械の刑事だけで構成された刑事機構を設立すること。そして機械の優秀な捜査力で人間を守ることです」
ユイハ「何コイツ怖い」
アダム「…? 同じくアンドロイドの貴方なら理解してくれると思ったのですが」
ユイハ「っ、本当に何なんだコイツは」
アダム「ですから当機はアダム・フランケンシュタイン──」
中也「ストップだストップ。初対面のやつをあんま困らせんなよ」
アダム「……確かに中也様の言う通りです。失礼いたしました」
では、とアダムと名乗った機械は笑う。
アダム「レイラ──本名不明の彼女の異能を早く消してしまいましょうか」
ユイハ「……!」
中也「そこは笑うところじゃねぇよ」
アダム「……なるほど、教えていただきありがとうございます」
丁寧にお辞儀したかと思えば、後ろからレイラが姿を現した。
数年経っているはずなのに、年を取った様子はない。
あれが“不老不死”の力か。
そして、何でレイラも笑ってるんだよ。
もっと別の表情できただろ。
レイラ「やるなら早くしてちょうだい。結果がどうなろうと、私が死ぬことは変わらないのだから」
ルイス「“永遠ノ灯火”が消えるか確証はないよ」
レイラ「消えなかったら貴方が封印したらいいんじゃないかしら。ヴォーパルソードは“異能無効化”と同じ力なのでしょう? 私に突き刺したりして放置してたら、剣が朽ちるまでは私は死んだも同然じゃない」
ルイス「ヴォーパルソードはもうただの蒼い欠片になったよ。君たちの一騎討ちだったはずのあの時間が、完全な破壊に繋がったんだろうね」
レイラ「あら、それは残念ね�。ゆっくり再生することはあっても封印擬きはなかったから、意外と楽しみにしていたのだけれど」
此処にはヤベェ奴しかいねぇのかよ。
困惑してると急に肩を叩かれた。
完全に気を抜いていたから思わず変な反応をしてしまう。
そんな僕に関係なく、死者軍の女王と戦神と機械は笑顔で話してるけど。
で、問題の俺の肩を叩いてきたのはマフィアの帽子幹部だった。
確か名前は中原中也。
数年前に暗殺王が弟とか呼んでいた、よく分からねぇ男。
とりあえず太宰治の元相棒だとか何だとか。
あ、芥川の上司に当たるのか。
中也「悪ぃ、そんな驚くとは思ってなかったわ」
ユイハ「いや、僕も目の前の状況を理解するのに気を抜いてたので……」
中也「アダムは……まぁ、分かるだろうが欧州の|機械《オモチャ》だ。空気を読めないのは相変わらずだが……相方の尻に敷かれてるって聞いてたけど、思ってたより元気そうで何よりだわ」
ユイハ「……あの」
中也「ん? どうかしたか?」
ユイハ「アダム──さんが言っていったことについて、何も聞かないんですか?」
あー、と中原中也は少し視線を逸らした。
中也「今のだとお前も玩具呼びだったな、悪ィ」
ユイハ「いや、そうじゃないだろ」
中也「ん?」
ユイハ「あ、今のは……」
中也「手前、意外と口悪いんだな」
やらかした。
完璧にアウトのやつですね、ハイ。
俺は今、神宮寺ユイハなんだ。
落ち着け。
とっとととにッとにかく落ち着くんだ俺は大丈夫やる気元気満タンの強い子ビスコ((
中也「言いふらしたりしねぇから安心しろよ。俺は太宰と違ぇからさ」
ユイハ「中原──中也さん……?」
中也「中也でいい。あ、ユイハって呼んでいいか?」
ユイハ「え、ぁ、うん、、!」
中也「にしてもユイハ、手前の異能は凄いんだな。あのレイラの異能を──人工異能を消せるんだろ?」
あ、と言葉が詰まったのが自分でも分かった。
自信がない。
名探偵の案は正しいと思ってるし、三歳児が頑張ってくれたのも分かってる。
でも、理論上は上手くいっても実際どうなるかは分からない。
中也「……どういう異能か詳しくは知らねぇけど、ユイハも色んなことを経験してきただろ? ほら、肩の力抜いて深呼吸しろって」
ユイハ「あ、りがとう……中也……」
ルイス「流石は中也くんだね。面倒見が本当にいい」
ユイハ「~~!?」
中也「あ、ルイスさん」
ルイス「驚きすぎだよ、ユイハ。そして、此処からが君の仕事だ」
広い空間に一人、レイラが立っている。
一応範囲はそこまで広くない筈だ。
あの機械も中也も、ルイスも離れている。
巻き込むことはまずない。
レイラ「よろしくね、“7人の裏切り者”の偽物さん?」
微笑むレイラに、少し後退りそうになる。
でも、ここで逃げたところで何も変わらない。
ユイハ「スゥ……ハァ……」
異能力、と呟くと同時に予定通り僕は《《俺》》に戻った。
ユイハ「──“神秘の島”」
俺の異能は、“自分の領地で死んだ異能者の能力を使えるようになる”なんていう、一見チートに見える能力だ。
ただ、異能力の同時発動はあまりやらない。
そんな危険な場面はほぼないから。
ユイハ「……行くぞ、死者軍の女王」
レイラ「えぇ」
真っ黒な雲が空を包む。
あの時()、アリスが鏡で閉じ込めておいてくれた“電気や雷を操る能力”。
そして《《俺が存在しないとき》》に手に入れた“不必要なものを分解する能力”。
他にも色々使ってるが、この二つが大事になってくる。
雷鳴が轟く。
そして、準備は整った。
ーーー
ルイスside
やぁ、久しぶり。
最近はあまり僕の視点になることが少なかった気がするから、一応挨拶をね。
結論から云うと、レイラに植え付けられた人工異能──永遠ノ灯火──は完全に消滅した。
ユイハの、ガブが調整してくれた異能で見事成功した感じ。
試しに、とナイフを受け取ったかと思えば自分の首を掻き斬ったときは流石に驚いたよね。
「あぁ、治らない……これで私は……」
喋ってる場合じゃねぇだろ、ってことで、即ワンダーランドにぶちこんで与謝野さん呼んだもん。
あのね、アリスから無駄にレイラが何をしてたか聞かされてたから自殺を何度かしてることは知ってたよ?
しかも大体は首を掻き斬ってるってことも。
ただ目の前でやるのは聞いてない(そりゃあ誰も云ってないからね)。
そんなこんなで、“永遠ノ灯火”が消えたレイラはいつでも死刑執行が可能な状態になった。
不老不死が消えるということは、そういうことだ。
死ねない異能が消えたから、いつでも死ねる。
かといって、太宰くんみたいな|奇行《自殺未遂》を繰り返してはいないけど。
あ、もしかして「そもそもムルソーの中で自殺未遂とか出来ないでしょ」とか思ってる?
確かにあそこは世界で一番の牢獄だよ。
でもね、レイラは今“首吊り健康法”とか“入水”とか“猛毒キノコと間違えて頭がイってしまうキノコを食べる”とかが出来る状態なんだよ。
何故か気になるかな?
まぁ、興味なくてもこれはエピローグ的な僕視点の小説だし語っていくよ。
また結論から云うけど、レイラは《《ムルソーに収容されていない》》。
どういうことか、困惑してるかな。
まぁ、簡単にまとめるなら“死者軍の女王”として英国軍異能部隊で全員解放するために頑張ってる。
その中には戦友たちも、ウルフさんの同期も──ロリーナだっている。
アリスとの一騎打ちの時に、死者軍は姿を消した。
残されたのは諦めず戦った異能者をはじめとした世界各地の軍人たちと、戦場になってボロボロになった街。
死者もまさかの0人。
怪我人は与謝野さんとコナンさん、他にも本当に数少ない治癒能力の持ち主だったり、医者が動いてくれた。
欧州も多少力を貸してくれたのが大きかったね。
ルイス「……暇だな」
あの件からレイラの異能が消滅するまでの数年は、本当に忙しかった。
アリスが全く手伝ってくれないのは虚像が壊れかけだから仕方がない。
けど、僕がもう活動できると欧州に判断されたことによる調査やら偵察やら、あとは万事屋の方も依頼がちらほら──だったら良かったんだけどドドドドって土砂崩れか何かでも起きましたか、ってぐらいメールとか電話来て涙目。
でも僕は現在暇をしている。
何故なら、今は欧州も万事屋も落ち着いてるから。
ワンダーランドに溜まっていた分の本は読み終わったし、ぬいぐるみの山に埋もれるしかない。
ルイス「……何してるんだろ、アリス」
アリスが身体を使ってるから本当に暇なんだよね。
こんな平和でやることがないなんていつぶりか分からないや。
まぁ、平和なのはいいんだけどさ。
ルイス「……ん、」
依頼かな、なんて携帯を取り出すと“存在しないアカウント”からのメッセージだった。
いわゆる捨て垢というやつ。
ルイス「いや、匿名の意味」
そう、思わずツッコミを入れるぐらいには差出人が分かりやすい。
まず名前から隠す気がない。
ユーザー名“ハツカネズミ”ってどういうことなの、本能が狂い始めて追い詰められた?
いや、追い詰めた可能性も捨てられないんだけど、彼の場合。
何故そこをチョイスした???
そして文章が“ロシア語”だし、内容がいつか聞いた勧誘と一緒すぎる。
ルイス「……そっちに協力するつもりはないと、毎回言ってるんどけどなぁ」
ポイッ、と投げたスマホはある人物にキャッチされる。
ルイス「……落としても壊れはしないよ、アーサー」
アーサー「そういう問題じゃない」
エマ「こらぁ〜ぬいぐるみ山から出てきなさい〜」
ルイス「仕事ないからいいじゃん」
アーサー「無いなら無いで、顔を出したらかな。君の今の居場所はどこ?」
アーサーに云われ、溜息を吐く。
僕の居場所は、どこなのか。
分かってる。
ただ、本当にそこが僕の居場所なのだろうか。
アーサー「よし、テニエルよろしく」
テニエル「は、はい!」
ルイス「ちょっと待てやコラァァァ〜!?」
ーーー
福沢side
ルイス「……痛い」
福沢「何故落ちてくる」
ルイス「落とされた」
ハァ、と溜息が出る。
落とされた、というのは帽子屋のチェシャ猫──改め、ジョン・テニエルの異能だろう。
まさか社長室のソファーにいきなり来るとは思っていなかったが。
福沢「最近はどうだ?」
ルイス「事件直後よりは暇してるよ」
福沢「そうか」
ルイス「欧州は文句ばかりだし、特務課はブラックだし、もう大変ですよホントに」
というか、現在アリスが身体を使ってる筈では?
アリス『とっくに返してるわよ』
ルイス「……アリス」
アリス『私のことを無視するから帽子屋に頼んで外に出させたの』
それはそれは、と頭を抱える。
ぬいぐるみの山に埋もれることは誰にも迷惑をかけていない。
つまりワンダーランドから追い出される意味なくね?
福沢「全員心配しているぞ」
ルイス「なんで?」
福沢「アリスばかりで貴君が顔を出さないからだ」
ルイス「……分かれて動けなくなって、僕は仕事に追われていたからね」
福沢「それは聞いている」
ルイス「ま、今日からはちゃんと顔を出すよ。じゃないと……いや、何でもない」
福沢「……? 悩みなら聞くが──」
ルイス「大丈夫大丈夫。ただ、ハツカネズミから追い詰められそうなだけだから」
あーあ、社長が完全に困惑してるわ。
でも、今の平和を壊したくはない。
いずれ衝突すると思うけど、それは今じゃない。
ルイス「さてさて、久しぶりに顔でも出しますか」
そうして僕は社長室の扉を開けた。
ナオミ「あら、ルイスさん」
ルイス「…久しぶりだね。谷崎くんも相変わらずかい?」
ナオミ「もちろんですわ! ……どちらかと云えば、私はルイスさんの方が気になるのですけれど」
ルイス「僕かい?」
ナオミ「連絡一つしないので。アリスさんに仕事をしているとは教えてもらいましたが、皆さんも心配していたんですのよ?」
ルイス「それはそれは……ははっ、何か手土産でも持っていくとするかな」
最近街で有名なお菓子でも、買いに行ってから顔を出すのがいいかもしれない。
何がオススメか。
ナオミちゃんに聞けば間違いはなく、探偵社は最後にしてお菓子を持ちながら色んな場所に顔を出しに行った。
マフィアや特務課にめちゃくちゃ心配されてた。
まぁ、暫く顔出してなかったからな。
???「……おや、いつかのお兄さんじゃあないか」
ルイス「これはこれは……。お久しぶりです、御婦人」
この道を通るのは結構久しぶりだな。
手土産品を片手に、僕は煙草屋の前で足を止める。
老婆「探偵社の人達は見ていたけど、お兄さんは久しぶりだね」
ルイス「母国に帰ったのもあるけど──御婦人もご存知の通り、同時多発テロなど色々とあったからね」
老婆「あの時はどうなるかと思ったねぇ……。結局、ヨコハマは日本の中で選ばれただけであって、主な戦場は英国なんだろう?」
ルイス「まぁ、そうだね。それで僕は帰国しなくちゃいけなくなったし」
老婆「……戦神様は大変そうだね」
ルイス「僕のこと知ってるんだ」
老婆「あの日、何処かで見たことがある顔だと思って調べてね。今回の件は色々大変だったんじゃないかい?」
ルイス「……まぁ」
老婆「前と同じ銘柄、買っていくかい?」
ルイス「うん、貰おうかな。ついでにそっちのやつも」
老婆「二つ買うのかい?」
ルイス「前のは友人の分だから、自分の分も……なんて。彼の前で吸うなら好きな銘柄にしようと思って」
そうかい、と老婆は二箱取り出す。
老婆「あんまり無理しないんだよ。前より元気がなさそう、なんて老人の見間違いかもしれないけどね」
ルイス「……ありがとう、御婦人」
出航を知らせる汽笛が港に響きわたった。
強い日差しが吊り橋と海面に反射する。
潮風がそよぎ、鴎が鳴き声をあげて飛んでいく。
遠くで清らかな鐘の鳴る音がしていた。
近代的な高層ビルと重厚な煉瓦造りの建物とが混在する港湾都市・ヨコハマ。
そのヨコハマの街を見下ろす丘に緑に囲まれた墓地がある。
まだ数年しか経っていない。
整然と並ぶ無数の白い墓石が太陽に照らされて橙色に輝く。
僕は木の下にある墓の前で立ち止まり、そっと手を合わせる。
ちらりと墓石に目を向けると、『S.ODA』の文字が見えた。
ルイス「いつもの銘柄、持ってきたよ。僕の分も珍しく買っちゃった」
何か云おうとして、辞めた。
あの件で会った色んな人の墓参り行っている。
彼には申し訳ないが後に回した。
ここは、すぐに来ることが出来るから。
ルイス「それに君と会うことがないと思ったんだけどなぁ」
???「まぁ、そういう日もありますよ」
ルイス「またサボりかい、太宰くん」
太宰「サボりじゃないですよ。ただ国木田くんに仕事を押しつけただけ〜」
ルイス「それを世間一般にはサボりと云うんだよ」
太宰「ナオミちゃんに聞いて、此処にも寄るんじゃないかなって」
あ、話変えた。
太宰「それで織田作のことなんですけど」
ルイス「異能的に相性は悪いよね」
太宰「それだけじゃなく、私は貴方に織田作を殺させ──」
ルイス「それは仕方がないことだよ、太宰くん」
声が、煙草を持つ手が震える。
赤く染まった手がチラつく。
ルイス「……死者はいない。亡くなっていた人を、今度こそ眠らせてあげただけだ」
太宰「そう、ですか……」
ルイス「結局さ、結果で見るしかないんだよ。結果じゃないと、狂いそうだし」
これからどうなるかは、僕たち次第。
ルイス「社へ帰ろう、太宰くん。レイラは|太陽《シャムス》を失った先の未来を生きてる。僕らも生きるべきだ、この世界でね」
太宰「……なら、暫く真面目に仕事しますよ」
---
真っ暗な世界で拍手が響く。
──「誰も死なないハッピーエンドだ」
でも、と名もなき少年の顔は曇る。
──「良い結末があるということは、悪い結末もある。次は短いかもしれないけど、今までとは違う」
──「また会おう、親愛なる読者のキミ」
前回までのあらすじ&2周年忘れてたね
天泣「てことで、この物語も3つ目の枠組み(?)に入りましたね」
ルイス「いや巫山戯んなよ」
アリス「完全に祝いそびれてるじゃない」
天泣「テヘッ☆」
エマ「死にたいならここにお手軽な凶器が沢山あるよ!」
アーサー「スゴイネー」
テニエル「あ、アーサーさん! つ、ツッコミを諦めないでくださいよ……っ!」
天泣「まぁ、皆が言いたいことはわかる。これが新年一発目の投稿で、今日(1月18日だけど日付かわりそう)なのがいけないんだろう? 知ってるとも!」
ヴィルヘルム「何故こんなに自信ありげなんだ、コイツは」
コナン「いつものことだろ」
シャルル「まぁ、諦めるのが賢明だな」
天泣「オリキャラ達がひどい」
ユイハ「云わせてるのお前だよ」
海「確かにその通りですけど、そんな言い方しなくても……」
天泣「海くんは優しい設定にしておいてよかった!!」
ロバート「というか誰も俺のこと覚えてないだろ」
全員「「……。」」
ヴィルヘルム「貴様の出番、過去編だけだからな」
ロバート「現代もちゃんと働いてるっつーの!」
ヴィルヘルム「一回もそんな描写ないけどな」
天泣「とりあえず! 無事に2周年(投稿不定期だけど)を迎えられたのは、今、この小説(?)を読んでくれているあなたのお陰です!! ありがとう!!! 愛してる!!!!」
レイラ「こんなに愛してるが軽いことあるかしら」
グラム「……さぁ、どうでしょうね」
シャムス「……。」
天泣「てことで、2周年を迎えたことの話はこの辺で終わらせて前回までのあらすじに入りましょ〜」
---
天泣「ということで、ここからは解説“天泣”と、」
──「忘却の果てにいる名もなき少年、改め“──”が実況をしていきます」
天泣「あ、それ名前なんだ」
──「キミだよね、この名前を付けたの」
天泣「良い仮の名前なくて」
──「酷い」
天泣「それで──さん、現在の状況はどんな感じでしょうか?」
──「色んな世界線をお届けしてます」
天泣「とりあえずレイラが存在ごと消えた世界線(Ending.1)と仲直りできた…か微妙な世界線(Ending.2)ですね。いやぁ、どうですか“忘却の果て”から見ていて」
──「ボクの出番まだ?」
天泣「まだ☆」
──「ということで、実況も解説もやる気がないので最初から読んでください」
天泣「コメントくれたら喜びます!」
---
さて、改めまして天泣です。
4章までの内容なら‘番外編「前回までの英国出身の迷ヰ兎」‘を見れば何となく分かります。
間章は伏線はりと、5章が書けないから暇潰しです。
6章が名前の通り「幾つにも枝分かれした未来」ということで、様々なEndingをお送りしています。
現在は名もなき少年くんと話してたときの2つですね。
まだEndingは考えてるので、「英国出身の迷ヰ兎」は続きます。
ぜひ、これからも応援よろしくお願い致します。
それじゃまた!