単発系小説(仮)

編集者:みらきちさん
リクエストでもらったものとか、思い付きで書いた小説、追記等々置くとこです 基本的に長文が多いのでゆっくりできる時に読んでいただければ。
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目次

    おはよう。そう声を掛けられた。 これはいつもの事である。 いつもの事のはず…だった。
    「おはよう」 返事はない。当然だ。 一人暮らしだから。 でも、もう後ろは向かない。彼が背中を押してくれたから。 おさがりのモデラーを持って街へ。 輝かしい日がオレを見下ろしてくれている。

    あの日。

    |彼奴《アイツ》の悲鳴が聞こえる。 体を切り裂かれ、目を抉られた音がする。 オレは手を伸ばす。伸ばしたが… 届かなかった。
    足音がする。奴が現れた。 明確な殺意と緊張が伝わって来ている。 奴を始末するまで……… そうかからないだろう。

    あれは、確か3年前の12月…冬の出来事だったか。あの日は天気が悪くて、雪が降っていた。思えばあん時の雪は綺麗だったなぁ。だってかなり降っていて、過去も人の目線も全部揉み消してくれそうだったからさ。 過去…そうだ、それで思い出した事があった。確かまだ表社会にいた頃の俺は、何もかも上手くいかなかったんだ。ガキの頃は勉強ができなくて成績表はダメな結果ばかり。なんとか受かる事ができた高校、そん時からやってみたかったバイトを始めようと思ったが、どこも面接に受かれず落ちた。そんなんだから高校も卒業できずに中退した。 …そんな落ちこぼれが社会に出たらどうなるだろうな?答えは分かりきってる。すぐに生活できなくなった。まず仕事がない。俺は職を手に入れる事すらできなかった。だから毎日暇を謳歌してすっからかんな賃貸の一部屋で寝る事しかできない。そしてそんなんだから金がない。母ちゃんからの仕送りで何とか凌いでいたんだが、そんな母ちゃんがある時膝を悪くして働けなくなった。家ぐるみで金がなくなった俺は十分な仕送りをしてもらうことができず…終いには大家さんに追い出されたってわけ。 ちなみに俺の親父は既にいない。俺も会った記憶はない。
    まあとにかく、俺はあの時の出来事を忘れはしないだろう。西園寺に来た以上この先逃げる事はできないし、何より俺は|お嬢《西園寺美月》に一生分の借りがある。当分実家に帰るのも叶わないだろうな。だから今はこうしてボディガードとして働いてるって訳よ。お金を貯めて、いつか母ちゃんに…美味いもんでも送って安心させてやりたい。それと、俺は今やお嬢の事も大切に思うようになった。お嬢のためにも野垂れ死ぬ事はできないな。今の俺がこの危険極まりない仕事を続ける理由は…それしかない。 …って思いに耽ってたらこんな時間!?いけね、遅刻しちまう…!雪を見るとつい長い出会いの話を思い出してしまうのが最近の俺の悪い癖だ。だからと言って遅刻していい理由にはならないけどな! 今日も俺は裏社会へ赴く。西園寺家の次期当主・西園寺美月のボディガード、海山希良。