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月の麓に集まって 第四話「大きく吠えて」
beriは山の神社へと向かうことにした…
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フェンリル視点
「いってぇ…」
結構な高さ落ちたのか
背中には強い痛みが残り、腰も完全にやっている
痛みに耐え目を開く
そこは光ひとつない真っ暗な空間が広がっていた
今持っているものはポケットに入れていたスマホだけ
生憎インターネットには繋がらない
そして背負っていたリュックはなぜか持ってない
スマホのライト機能を使い辺りを照らしてみる
「わっ!?ネズミ!?」
目の前をネズミほどの大きさの影が通過した
早くここから出なければ
少し移動してみようと思いその場で体を起こす
背中と腰にピリピリとした痛みが走る
なんとか壁をつたって立ち上がり、スマホのライトを頼りに前へ進んだ
といってもどっちが前でどっち後ろなのか全くわからないけど…
そこから少し歩いたところだった
目の前に壁が現れた
その壁をまたつたって歩いてみたが、またまた目の前に壁が現れた
そこで僕はやっと広い部屋のようなものに閉じ込められていることを悟った
そしてここに落ちたときから謎の違和感がある
まるで現実味がないのだ
わかりやすくいえば夢を見ているような気分
それもめちゃくちゃ鮮明な夢
感覚は全部完璧にあるし、夢あるあるの視界のぼやけとかもない
けれどなにかがおかしい気がする
そんな事を考えていると僕がまだ見ていない方の壁にはドアがあったらしく、そこが少し開いて薄く光が差し込んだ
僕は一気に怖くなった
ドアの向こうには長身のスーツを着た男が立っていた
シルエットしか見えないので顔はよくわからない
「ここ、開けておくからね」
「早く出な」
以外にもその男は優しい口調で話しかけてきた
しかし完全に怯えた僕はその語りかけに返答をすることはできなかった
僕は何も言わないことを確認すると男はいなくなった
早く出ろと言われても、出入り口はドア一つしか見当たらない
仕方なく僕は男が立っていたドアへ向かった
ドアの先に男はもういなかった
別の部屋へと繋がっており、その部屋には大量のビデオテープが並べられていた
中央にはプレーヤーとテレビが置かれたテーブルもある
テーブルに近寄ってみると、プレーヤーの前にひとつのビデオテープが置いてあった
そのビデオテープにはなんと僕の名前が書かれている
こんな気になるビデオテープ、見るしかないじゃないか
プレーヤーにビデオテープをセットするとテレビに映像が流れ始めた
これは…僕の家の最寄り駅
ちょうどそこに電車が来たようだ
「えっ!?これ僕?」
その電車から降りてきたのは自分だった
そして画面の中の自分は電車から降り、道を渡ってすぐのバス停まで…
その時、道にとてつもないスピードでトラックが突っ込んできた
道を歩いていた自分は、そのトラックに跳ねられ画面外にまで飛んでいった
「なにこれ…」
これは趣味の悪いCG?
それとも最近流行りのAIの動画?
なんにせよ、こんなビデオテープが大量に並べてあるところに長居したくない
次の部屋へと続くドアを開ける
ドアの隙間からひんやり冷たい空気が流れ込む
ここにも男の姿は見当たらない
どうやらここは牢屋らしく、鉄格子の付いた部屋がいくつも続いている
どうしてこうも関係なさそうな部屋がくっついているんだろうか
僕が無心で歩き始めた時だった
「あ、ねえ!そこの君!」
「ここから出して!お願い!」
たしかにそう聞こえたのだが人の姿はどこにも見当たらない
何かいるとしたら、牢屋に入れられた大型犬が一匹いるだけだ
「私だよ私!」
「見えてるでしょ!ほら目が合ったよ!」
犬は尻尾をバタつかせ、首に繋がれた鎖をじゃらじゃら鳴らしている
「犬が…?喋った…?」
「犬じゃない!!」
「立派な人間だぁ!」
何を言っているんだこの犬は…?
もしかしてこれは罠で、この犬は敵なのか…?
「もしかしてお前、敵なんじゃないのか!?」
「捕まってんのに敵なわけねーだろ!!!」
「君もここから出たいでしょ?案内してあげるから!」
どうにも怪しい犬だが、出口まで案内してあげるという言葉に負けてしまった
すぐ横に掛けてあった鍵を使い、牢屋から出してやった
「ありがとう…!」
「じゃあ案内してあげるから、付いてきてね」
「君、名前は?」
「僕はフェンリル」
「君は?」
「名前…?」
「思い出せない…」
名前が思い出せない?
もしかしてあの男の仕業か?
「じゃあ…わんことかどう?」
「だから私は犬なんかじゃあ…」
わんこがそう言いかけた瞬間、巨大な破裂音と共に後ろの壁が崩れ始めた
暗闇からこちらを覗く1対の赤い目
「殺される」と本能的に思わせてくる
「まずい見つかった!」
「逃げるよ!!」
「ええわんこ待って」
崩れた壁を踏み越えてわんこは颯爽と駆け抜けていく
そんなわんこの後を追って僕も走ろうとした
しかし背中と腰を思い切り打ち付けた影響でうまくその場から踏み出すことができなかった
「いててでぇっ…」
「脱走者、確保しました」
「やめっ!やめろ!」
「はなせ!!」
わんこはドアの前で立ち止まりこちらを向いた
「ああもう!何してるの!」
「ちょっと痺れるけど我慢してね」
あたりに白い霧がもくもくと立ち込める
だんだんと鼻がピリピリしてきて、ついには体が言うことを効かなくなった
「え…わんこ…なにして…」
「いいから行くよ!」
どうやらこの霧は敵も同様の効果があったらしく、僕は地面にどさっと落とされた
わんこに片腕を噛まれ、ゆっくりドアの向こうまで引っ張られる
「よっこらしょー!」
わんこが勢いよくドアを閉めた
「ここまで来れば大丈夫」
わんこのよだれでびしょびしょになった左腕をハンカチで拭いた
それを見たわんこは少し不服そうな顔をしている
「たすけてあげたんだけどなー」
「そんな態度かあー」
「ごめん、ありがとう」
そうは言ってみたものの、全く理解が追いついていない
何が起きたんだ
結局この犬はなんなんだ
僕を捕まえたやつもわからないし
あの壁をぶっ壊してきたやつ?あれもまったく分からない
「とにかく…フェンリル?だっけ」
「君はもうここに来ちゃだめだよ」
「う、うん…」
「わかったならさっさと行きな!」
わんこの声に押され、僕はすぐ横にあった階段を上がった
異能力は今までのシリーズのものを基本にしながら今回のシリーズにあうように改変したものにしようと思っています
全く元の原型がないほど変わる人もいるかもしれないです