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月の麓に集まって 第十三話「難攻不落の異界」
時雨視点
「危ない!!!」
ペンタの背後には腕の先に鎌のついた、4本の足で移動する機械型の敵が迫ってきていた
高く振り上げられた腕は静かにペンタの首を見据えている
このままじゃ危ない
そう思った俺はペンタの服を思い切り引っ張りこちらへ引き込んだ
「なに!?!」
ペンタがきちんとツタを握るのを見て俺は服を手から離した
このまま早く下に降りなければ
俺が一歩下に下がる
ガクンと大きく視界が揺れる
「時雨!」
目の前には切れたツタが中を舞っていた
あいつ、ツタを切りやがった
ツタを掴もうとしても指をすり抜け、俺の体は支えを失った
地面と衝突した俺の体は少し跳ね上がり、どすんと音を立てる
少し遅れてきた重力が身体の自由を奪う
背中から落ちなくてよかった
ショットガンが背中にぶっ刺さっていたかもしれない
「大丈夫か!」
ペンタの問いに身体を起こそうとするもどうも自由が効かない
「すまん…身体が動かない…」
俺は地面に突っ伏したままペンタにそう告げた
その間にもあの機械の敵はあっという間に地面に降りてきて、今にも俺に鎌を振るおうとしている
それに気が付いたペンタが腰から小さな刀を抜く
カーンという音を響かせながら、思い切り機械の腕に突き刺した
その衝撃にあいつは大きく仰け反る
「行くよ時雨」
ペンタは俺を担いで元来た道を歩いた
歩いたというか、多分本人は走っているつもりだったんだろうが
しばらく進むとあの2人の姿が見えてきた
「時雨?」
真っ先に駆け寄ってきたのはフェンリルだった
俺はフェンリルを置いていったにも関わらず、今こんな醜態を晒している
「これは詳しく話してあげたほうがいいんじゃない?時雨」
「うん…」
俺はペンタに担がれたままゲート付近に向かった
2人には申し訳ないが一緒に戻ってもらうことになった
「それじゃあ時雨くん」
「勝手に進んでおいて怪我までしてるみたいだけど?」
「詳しく聞かせていただこうか」
beriは俺の態度にガチギレといった感じだった
それもしょうがない
本当に間違ったことをしたと今思った
俺は2人にフェンリルを置いていった理由が異世界の危険性にあるということ
異世界に現れる敵はリンボに現れる敵なんかよりずっと強いということ
そして異世界と担任との関係性までを話した
「ここに担任がいるってどういうこと…?」
「担任の様子が明らかにおかしかっただろ?あれ最近ニュースになってる突然死の一歩手前なんだよ」
「実はここにいる敵は全員現実世界に`生きて`いる人間なんだ」
「だから担任もここにいる」
「でも突然死して死んじゃうならここにはいないんじゃないの?」
「beriの言うとおりだね」
「でもここからはペンタのほうが詳しいからペンタ頼むよ」
ペンタはやれやれといった様子で話始める
「ここにいる敵…人間の魂とでも言おうか」
「その魂にちょっとイタズラするとああいった突然死が起きる」
「俺たちはその犯人を探してるんだよ」
beriとフェンリルはキョトンとしている
「でも生きてる人間の魂しか異世界にないんだよね?」
「じゃあ担任なんて探してももういないんじゃ…?」
ペンタがそんなフェンリルの問いに答える
「確かにそう思うだろうフェンリル」
「でも死んでしまったらすぐに魂が消えるわけじゃないんだ」
「まだ担任をここで見つけられる可能性はあるってことか」
「でも担任もう死にそうだったよね」
「ここでゆっくりしている時間もないってことか」
「飲み込みが早くて助かるよ〜」
ペンタの説明で2人がすべてを理解したとはとても思えない
だがしかし、担任は今ごろ死んでいるだろう
急がなければまた犯人の証拠を逃してしまうことになる
「というわけで今すぐにでも行きたいんだけどさ〜?」
「この時雨とかいうやつ崖から落ちて怪我してんだよね〜?」
「こんなやつ連れて行ってる余裕なんてないよね〜?」
ペンタ、なんて|厭味ったらしい《いやみったらしい》らしいことを言ってくる
確かにそんなような理由で俺はフェンリルを置いていってしまった
しかしそのフェンリルはピンピンしている
完全に逆の立場になってしまったようだ
「ごめん…俺が悪かった」
「もう二度とあんな事言わないから、俺も連れて行ってくれないか」
「だってさお二人さん」
「どうする?」
beriとフェンリルは顔を見合わせしばらく悩んだような顔をしたのちに台車をどこからか持ってきた
「これ周り見てたらあったんだよね」
「乗ってもらおうよ」
台車なんて乗り心地い最悪だと思うが今はそんな事を言っている場合じゃない
俺は渋々beriの誘いに乗った
何かあったらすぐに逃げられるようにという理由で俺の台車はペンタが押すことになった
さっきも見たいつもの道を台車に押されて俺たちは進んでいった