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焦がれたナンバー③
金平糖
主人公、安本清翔(やすもとせいと)父子家庭で母親がいない。野球では監督に10番を進めら
れてキャプテンになって責任感が増す。そんな中、塾の
テストで赤点をとってしまったりキャプテンとして絶対
に犯してはいけないある過ちを…小6
幼馴染、素浪凜(そなみりん) 清翔と同じ塾で小さいころからの付き合い。
野球ではチーム唯一の女子プレイヤーだが一番うまいと
いっても過言ではない。小6
片山大地(かたやまだいち)プレーでも常に頭を使う頭脳派。清翔と凜とは幼馴染で
塾も一緒。成績はとてもいい。
鬼監督、岡野一(おかのはじめ) プレーにも礼儀にも厳しい47歳。関西弁交じりの説教は
誰もがまぬがれたいと思っている。凜や娘の紗良には優
しい。
ダイチ目線👀
今日は自習室で、一週間分の宿題を片付けようと思って塾に来た。いろいろなサイズの自転車で
いっぱいの狭い駐輪場に自転車を止める。「ああ狭い。」横の自転車との幅はなんと5㎝も無い所だ。
その止めにくさに思わずため息が出る。しっかりと鍵をとり、塾の階段を上って教室へと向かう。
入ってすぐの事務所(職員室)には、いつも通り堂々と塾長が座り、パソコンとにらめっこしていた。「こんにちは。」「はい、こんにちは。」軽ーく挨拶をするも、塾長はまたパソコンを見た。
忙しいのかな、なんて思いながらその先の廊下へ進む。壁掛けのホワイトボードで今日の自習室となる教室はどこかと確認する。第七教室か。一番広い部屋で、20~30人ぐらいは楽々入れる。
僕たちが通う塾、セイコウゼミこと成績向上ゼミナールはなかなかな大企業で、多くの校舎と大きな教室を持つ。そして、勉強のサポートも充実していておかげでいい成績がとれる。
いつから通っているかは覚えていないが、だいぶお世話になっている。今の成績を維持できるのは、塾のおかげだ。そういっている間に第七教室につく。ここは入り口から一番離れているといえる教室で、少し遠い。そっと、しまっている扉を開けて中に入る。そこには…横の列でわざと席を話して喧嘩をしているセイトとリンがいた!最悪なことに教室には二人以外誰もおらず、ピリピリした空気だった。ましてやこのタイミングに僕が来てしまうなんて!「こ、こんにちは…。」セイコウゼミでは先輩・後輩・同級生と関係なく教室に入ったら誰にでも挨拶する決まりとなっている。仕方ないので挨拶をした。「こんにちはー!💢」同時に大きな声で返事が返ってきて、思わず一歩下がってしまう。そしてまた、同時に言ったことに対してセイトとリンは顔を見合わせ、睨みあっている。本当は両想いじゃないの、って野球団の同級生とも楽しく観察しているけど。こんなに喧嘩ばっかで大丈夫なのかな?少しおかしくなってきて、口元が笑いそうになって柔らかくなるのをぐっとこらえる。
「はぁー。」広い教室なので二人から少し距離をとって座れる。座った瞬間に全身に入っていた力がどっと抜けていくのを感じた。さっそくテキストを開く。そこでまた—
「おい素浪!さっきの言い方はないだろっ!」
「はぁ⁉安本!あんただってうざかったし!」
あぁ。また言い争いが始まった。今回は結構ガチのやつかも。二人が名字で言い合ってるのはだいぶやばい証拠。このまま仲が崩れてしまったら…と幼馴染の僕もひやひやしてくる。
まぁ大抵のことはすぐに仲直りするかどっちかが相手に泣きつくか(涙は流さないけど)で解決するのがほとんど。そうやって二人はこの関係を紡いできたんだから。フッと笑ってしまう。
それを見たリンは「何で笑ってんのよダイチ!」と言ってくる。「いや、なんかさ。二人ともなんか面白いし似てるなって。」リンは驚いたような表情でセイトのほうを見る。そして顔を見合わせる。
「全っ然似てねーよっ!」あ、照れ隠しかも。セイトは教室を飛び出していく。それを見てまた、笑いそうになってしまうのだった。「ねえなんで喧嘩してたの?」
「あーさっきの?セイトがなんで塾ずっと休んでいたのかについてでさ。」
確かに生徒はキャプテンに就任してからずっと塾を休んでいた。
「何で休んだのかって聞いたらさ、何にも答えなかったの。」「それで?」
思わず続きが知りたくなってしまう。
「彼女でもできたんじゃないかなって思っちゃってさ。」
あはは、とリンは笑って言っている。もしリンがセイトのことを好きだったら、
もっと焦っているかもしれないのに。そんなこともないのかな?
「心配だったの?」探りを入れてみる。「もちろん心配だったよ。」
まあ、幼馴染であるから心配するのは当たり前だ。
それでも…なんてことを僕は心のどこか片隅で思ってしまっていた。