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6話「絶望の先へ」
Snake
自主企画に参加して1番良い賞をもらえました。とても嬉しかったです(語彙力小学生)詳しい事は日記で書いているのでぜひ見てください。これからは日記でこのトギスマスの番外編的なのを書いていきたいです。
「セッシー。ありがとう。お前のおかげで大切なことを思い出した気がするよ。」
「それは何よりです。」
スバルは淡々と話し、セシルスは頭を下げた。
オルバルト、ヨルナは生存状態。迎えれるハッピーエンドの最高潮だ。ナツキ・スバルは感情を取り戻した。
「セシルス、どう言う状況でありんす?」
「そうですねえ…彼がタイマンを挑んでボクが降参したって言えばいいでしょうか。」
「セシルスが…降参したでありんすか?」
「セッシーの言うとおりだ。」
「童…」
スバルがセシルスを倒したという情報は広まる。あっという間に。
数ヶ月後のことだ。
「ボス、少し話題になってますよ。」
「話題?」
「はい、ボクを降参させたとして有名人です。」
「あまり目立ちたくないなぁ…」
「ボスのことを広めるやつはボクが殺しますよ。」
「平気な顔で怖いこと言うなよな…」
スバルは苦笑しながら、自分の小さくなった両手を見つめた。
オルバルトの『幼児化』の術からは解き放たれ、身体は元に戻ったはずだった。だが、ナツキ・スバルという人間の魂に刻まれた奇妙な存在感は、以前の彼とは明らかに一線を画していた。
失われていた感情を取り戻した瞬間、彼の中に宿ったのは、かつての独りよがりな絶望ではない。大切な仲間たちを、今度こそ誰一人欠けさせずに救い出すという、狂気にも似た強固な意志だった。
「まあ、セッシーが本気で暴れたら、噂を流した奴どころか街が一つ消えちまうからな。物騒な真似は勘弁してくれよ」
「おや、ボクの忠誠心を疑うのですか、ボス? ボクはいつだってボスの剣、ボスの望むままに誰彼構わず切り伏せる準備はできていますよ。それがたとえ、この帝国の頂点に立つ御仁であっても、ね」
セシルスは腰の二振りの魔剣――『流美麗』と『邪炎波』の柄に手をかけ、不敵な笑みを浮かべた。
その言葉は冗談のようでありながら、本気だった。帝国最強の『青き雷光』が、ただ一人の異邦人の少年に完全に心服している。その事実だけでも、現在のヴォラキアの情勢を揺るがすには十分すぎる爆薬だった。
「……童よ。セシルスの言うことも、あながち間違いではありんせんよ」
静かに口を開いたのは、紅蓮の着物を翻した妖艶な美女、ヨルナ・ミシュラルだった。
彼女は煙管から紫煙をくゆらせ、憂いを帯びた瞳でスバルを見つめる。
「童がセシルスを下したという噂は、すでにこの紅瑠璃城だけでなく、近隣の都市、さらには帝都ルプガナにまで届きつつありんす。ヴォラキアは『適者生存』『弱肉強食』を国是とする国。最強の九神将筆頭を破った者が現れたとなれば、周囲の狼どもが黙っているはずがありんせん」
「ヨルナさんの言う通りだな。俺自身には、そんな大層な実力なんてないってのに」
「カカッ! 何を弱気なことを言っておる、スバルよ!」
背後から、しわがれた老人の笑い声が響いた。『心突き』のオルバルト・ダンクルケンだ。彼は干からびた手を叩きながら、楽しげにスバルに歩み寄る。
「おんしがセシルスを『おとした』のは事実じゃ。力による圧殺だけが勝利ではない。策を弄し、心を折り、あるいは懐に引き込む。それもおんしの『強さ』じゃ。現に、この偏屈な儂やヨルナ、そして戦闘狂のセシルスがこうしておんしの周りに集っておる。これが『王の器』でなくて何とする?」
オルバルトの言葉に、スバルは内心で冷や汗をかいた。
確かに彼らは生き残った。最悪のループを何度も繰り返し、死の味を幾度も噛み締めながら、ようやく掴み取った『誰も死なないハッピーエンド』の結末が、この現在の光景だった。
だが、それは同時に、ナツキ・スバルという存在が、神聖ヴォラキア帝国の最高権力者である『皇帝』ヴィンセント・アベルクス……否、ヴィンセント・ヴォラキアの目を引くには十分すぎる理由になってしまったのだ。
「……目立ちたくない、なんて言っていられる段階は、もう過ぎちまったってことか」
スバルは小さく息を吐き、拳を握りしめた。
感情を取り戻したスバルの胸に去来するのは、ただの恐怖ではない。この世界で、この残酷な帝国で生き残るための、次なる一歩への覚悟だった。
数日後、スバルたちの懸念は最悪の形で的中することとなった。
紅瑠璃城の謁見の間に、帝都からの使者が訪れたのだ。
もたらされたのは、一通の親書。そこには、現在の皇帝代理、あるいは帝国の中枢を牛耳る『九神将』たちの連名による、ナツキ・スバルへの『帝都召喚状』が記されていた。
「ほう……ボスの首を直々に拝みたいと、帝都の偉い方々が仰っているわけですか」
届けられた書状を覗き込みながら、セシルスが退屈そうに髪を弄る。
「内容は『先の反乱分子との交戦における功績を称え、爵位と領地を授与する』……とありんすが、額面通りに受け取るわけにはいきんせんね」
ヨルナが不快そうに眉をひそめた。彼女の管理するカオスフレームは、元々帝国の中でも独自の立ち位置を保っていた。そこへ、セシルスを従えた『謎の英雄』ナツキ・スバルが現れたのだ。中枢が警戒しないはずがない。
「罠、だろうな。俺が行けば、確実に暗殺されるか、あるいは二度と表舞台に出られないように幽閉される」
スバルは冷徹に分析した。感情を取り戻した今の彼は、かつてのように感情に任せて怒鳴り散らすことはない。ただ、冷酷なまでに生存のための最適解を導き出そうとしていた。
「カカッ! ならばどうする? 拒否すれば、帝都からの討伐軍がこのカオスフレームに押し寄せるぞ。九神将の生き残りどもが、こぞって軍を率いてな」
オルバルトの言葉は脅しではなかった。ヴォラキア帝国において、皇帝の命(あるいはそれに準ずる中枢の命令)への叛逆は、即座に一族郎党、ひいては都市の滅亡を意味する。
「拒否はしない。――いや、むしろこちらから打って出る」
スバルの瞳に、怪しい光が宿った。
「打って出る、とは? ボス、まさかそのまま帝都へ殴り込みですか? それは滾る展開ですね!」
「違うよ、セッシー。ただの殴り込みじゃ、俺たちの戦力がどれだけ高くても、国そのものを敵に回して擦り潰される。俺たちがやるのは、『帝国の常識をひっくり返す』ことだ」
スバルは地図を広げ、帝都ルプガナの戦力を指差した。
現在のヴォラキアは、先の禍々しい大災(ゾンビ禍や大崩壊の危機)を経て、表面上は平穏を取り戻しつつあるものの、その足元はグラグラに揺らいでいた。ヴィンセント・ヴォラキアの冷徹な統治に不満を持つ貴族や、最強の九神将たちがそれぞれの思惑で動いている。
「俺は、利用させてもらう。この『最強の男を配下にした』という偽りの名声を、本物の力に変えるために」
スバルの宣言に、その場にいた強者たちが一瞬、息を呑んだ。
ただの無力な少年だと思っていた存在が、今、帝国の玉座を見据えて動き出そうとしていた。
帝都召喚に応じる形で、スバルはカオスフレームを出発した。
随行するのは、九神将筆頭セシルス・セグムント、そして都市守護の座を部下に任せて同行を決意したヨルナ・ミシュラル、隠密として動くオルバルトの三人だ。
一国の軍隊にも匹敵する、あまりにも異常な少数の、しかし破格の最高戦力。
道中、スバルの一行を待ち受けていたのは、中枢の意を受けた暗殺者や、スバルの実力を値踏みしようとする地方領主たちの私兵だった。
「ボス、前方から何やら五月蝿いハエどもが向かってきていますよ。ボクが数秒で塵にしてきても?」
「待て、セシルス。今回はお前の出番じゃない」
スバルはセシルスを制し、前に出た。
現れたのは、重装甲に身を包んだ帝国の精鋭騎兵五十騎。率いるのは、名を上げようと焦る下位の貴族だった。
「貴様がナツキ・スバルか! 九神将筆頭を謀略で誑かした不届き者め! その首、我が一族の栄誉のために貰い受ける!」
「悪いが、俺の首はそんなに安くないんだわ」
スバルは静かに右手を掲げた。彼の中に宿る、禍々しくも頼れる力――『見えざる手(インビジブル・プロヴィデンス)』、そして仲間との絆を強制的にリンクさせる『コル・レオニス』。
感情を取り戻したことで、これらの権能は以前のような暴走を止め、スバルの明確な意思のもとで完全に制御されていた。
「――全員、動くな」
スバルが放ったのは、ただの言葉ではない。彼の『コル・レオニス』を介し、同行しているセシルスやヨルナの放つ圧倒的な『強者のプレッシャー』を、その場にいる敵全員に「分配」して叩きつけたのだ。
常人であれば精神が崩壊しかねないほどの圧倒的な威圧感が、騎兵たちとその軍馬を襲う。
「な、なんだ、この圧迫感は……!? 身体が、動かん……!」
「馬たちが恐怖で狂っていくでありんすね。童の放つ気配、まるで本物の――」
ヨルナが目を見張る中、スバルは一歩一歩、怯える敵の指揮官へと近づいた。
剣を抜くことすら忘れた指揮官の喉元に、スバルは優しく手を置く。
「俺を殺したいなら、もっとまともな準備をしてこい。お前たちの命は、ここで散らすには惜しい。……俺の兵隊になれ。さすれば、お前たちの一族に、今以上の栄光を約束してやる」
その声は、悪魔の囁きのようでありながら、絶対的な救いのようにも聞こえた。
恐怖と、スバルが放つ奇妙なカリスマ性に圧倒され、指揮官は馬から転げ落ち、その場に平伏した。
「は、ははっ……! 我ら一同、これよりナツキ・スバル様に忠誠を誓います……!」
戦わずして、敵の精鋭を自らの手駒に変える。その光景を見たオルバルトは、背筋に冷たいものが走るのを感じていた。
「あやつは、ヴィンセント様とは違うベクトルの『怪物』じゃな……」
スバルの一行が帝都ルプガナに到着したとき、その軍勢は出発時の数人から、道中で吸収した地方軍や反乱分子を巻き込み、数千人の規模に膨れ上がっていた。
城門を守る兵士たちは、突如現れた『ナツキ・スバル軍』の威容に困惑し、武器を構えることもできずに立ち尽くした。
「開門しろ。皇帝陛下にお目通り願いに来た」
スバルの冷徹な声が響き、帝都の巨大な門がゆっくりと開かれる。
謁見の間へと進むスバル。その両脇には、現皇帝の忠臣であるはずの九神将たちが、険しい表情で並んでいた。
『鋼鉄』のゴズ・マグレジ、『獅子宮』のグロウゼル、そして玉座の前に立つのは、白発の仮面を被った男――ヴィンセント・ヴォラキアだった。
「……よくぞ来た、ナツキ・スバル。セシルスを従え、地方の兵を勝手に募り、我が喉元へと刃を突きつけるかのような真似。これを叛逆と言わずして何とする」
仮面の奥から、冷徹な視線がスバルを射抜く。
だが、スバルは一歩も引かなかった。不敵な笑みさえ浮かべてみせる。
「叛逆? 滅相もない。俺はただ、この頼りない帝国を『本当の意味で救う』ために来たんだよ、ヴィンセント」
「不敬な! 皇帝陛下を呼び捨てにするか!」
ゴズが激昂して大剣を引き抜こうとするが、その瞬間にセシルスがその首元に魔剣の鞘を突きつけていた。
「動かない方がいいですよ、ゴズ殿。今のボスの言葉を遮る者は、ボクが誰であれ切り刻むことになっていますから」
「セ、セシルス……! 貴様、本当に正気を失ったのか!?」
「いいえ、今が一番正気ですよ。ボクは、この世界という舞台で、最も輝かしい物語の主役に付き従っているだけですからね」
謁見の間は静まり返った。
最強の九神将筆頭が、完全に皇帝を裏切り、スバルの背後に控えている。この空間の支配権は、すでにヴィンセントではなく、スバルの手に握られていた。
「ヴィンセント。お前のやり方は綺麗すぎるんだ。誰も死なせないために、お前は自分一人で全てを背負い、冷酷な皇帝を演じ続けてきた。だが、それでは限界がある。現に、この帝国は何度も滅びかけた」
スバルは一歩、玉座への階段を上った。
「俺は違う。俺は泥をすすり、恥を晒し、仲間の力を限界まで借り尽くして、全員で生き残る。お前が座るその椅子は、次に訪れるさらなる大災を乗り越えるには、荷が重すぎるんだよ。」
「これより!!新皇帝!!任命式を始める!!!!!!!」
「新皇帝!ナツキ・スバル様!!!!!!!」
歓声が響き渡る。
__異世界召喚されて以来、最強の存在としてヴォラキア帝国を蹂躙する。