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夜明けと蛍
夏ですね。蝉、生命の主張が激しすぎる。でもなんとなく涼しい部屋にいるときはちょっと夏だあああ!って感じがして好きな気がしなくもない。……いや、やっぱりうるさい。
まあ、ということで(?)夏にはn-bunaさんの曲を聞きたくなるので夜明けと蛍やるぞよおおおお(((!
あ、ちなみに決して夜明けと蛍聞きながらやってるわけじゃなくてワンダショの星空のメロディー聞きながらやってます()。
よし、聞き終わった。夜明けと蛍に変えたぜ。どうぞ。
淡い月に見とれてしまうから、暗い足元も見えずに。
「……あーあ」
転んだことに気がつけないまま、
「……痛いな」
遠い夜の星が滲む。
*
「ねえ、|名津《なつ》ちゃんは卒業したらどの大学に行くの?」
「え?……うーん、まだ決まってないな」
「そうなの?じゃあ、将来どんな職業に就きたいのー?名津ちゃんのそういう話全然聞いたことないな」
「……どんな……あんまり、考えてなくて」
「……そうなんだ。じゃあ、雛ちゃんは?」
「私は、ここの近くの美大。将来そういう職業に就きたいんだー!」
したい事が見つけられないから、
「でも、名津ちゃんもそろそろ決めたほうがいいよ?あとちょっとで夏休みだし」
「あはは、そうだね。ちょっと焦ってるんだよね」
急いだ振り、俯いたまま。
*
「……篠田はこの大学に行きたいのか?」
「は、い。……厳しいですか?」
「ほぼ、現状不可能だ。そもそも、歌い手になりたいということを考え直したほうがいいんじゃないか?」
「……そうですね」
「えーっ、希望職種に歌い手って書いたの?私ら、もう高3だよ?さすがに夢見てられないって……」
「……あ、ははっ。私もそう思う」
転んだ後に笑われてるのも。
……気づかない振りをするのだ。
*
夜が、好きで。
夏の夜。歌う虫達。
「……――♪、」
形のない歌で”朝”を描いたまま。
浅い、
浅い、
夏の向こうに。
『名津の夢、わたしはすっごくいいと思うな〜!』
「――……―〜♪」
冷たくない、君の手のひらが見えた。
蛍が夜を舞う。
少し明るくなった空。
淡い空。明けの、蛍。
*
「私は、教師にでもなろっかなって」
「そっかー!私は薬剤師さんかな。ずっとなりたかったしね」
「じゃあ私お薬貰いに行こ!私はね、編集の会社に務めることにしたんだ。作家は無理だったから」
……みんなが夢を語ってる中、自分は”歌い手”なんて馬鹿みたいなこと言って。
自分がただの染みに見えるほど、嫌いなものが増えたので。
こんなところから、飛びたいのだ。
……息苦しくない、無人の駅に届くまで。
*
まだ、君がいた、私に出会うまで。
*
「……胸が痛い、から下を向くのだ」
君がまた遠くを征くんだ。
「歌うのが、好き」
ねえ、夜。夢を見たい私達を、汚してよ。
ばいばい、夜に咲く、火の花。
*
水溜りに映る、
花を、
花を見ていた。
「……」
水に霞む、
月を、
月を見ていた。
「……っ、」
*
夏が来ない、ままの空を描いたなら
「……君は私を笑うかな?」
『歌で、誰かを救えたなら』
『誰かに私の歌が届いたら』
『心の在処になれたら』
――明け方の夢。浮かぶ、月が見えた空。
*
朝が来ない、
ままで
「……息が、できたなら……っ!」
『どうしても、歌ってたい』
『やってもないのに諦めたくない』
邪魔なこんな想いなんて、捨ててしまいたかった。
でも。
でも。
捨てきれなくて。朝が来ないままの世界は、息ができなくて。
遠い、
遠い夏の向こうへ。
『大丈夫。きっと、』
『 』
”冷たくない”君の手のひら、が見えた。
「……朝」
淡い、朝焼けの夜空。
夏がこないままの街を今。
藍の色、
夜明けと蛍。
ファンレターがくると泣いて喜び私が愛のお返しを届けに行きます(誰もいらねえよ)