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#7 継承されし神
--- ー唯視点ー ---
「ユイ?ちょ、ユイ!聞いてる?」
目を開けると、青色のサファイアのような目が視界に飛び込んできた。長い白髪が風に飛ばされる。
「花、漣?」
「誰それ?」
ああ、花漣って誰だろう。彼女はそんな名前じゃないのに。手を動かすと、刀に手が触れた。そうか、もう殺さなきゃ。現実から目を背けたくて横を向くと、鮮やかな夕焼けが見えた。
「綺麗だね………。」
彼女は可愛らしい笑顔で夕日を目に焼き付ける。この夕日が沈んだら、もう別れの時間だ。涙を必死にこらえていると、雨が降ってきた。雨に打たれながら彼女はふと真剣な目になった。
「ねえ、ユイ。雨ってね___。」
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再び目を開けると、澄んだ青空と舞う桜の花びらが見えた。
「夢………か。」
体を起こすと自分はベンチの上に寝かされていたことが分かった。唯は状況を整理しようと記憶を呼び起こす。髪の毛の束に襲われて花漣が刺されて………。
「そうだ、花漣は!?」
唯は左右を確認する。左のベンチに花漣は横たわっていた。真っ白なTシャツに滲む赤い血が痛々しい。確か「カラス」が狙撃してくれて、助かったのか。じゃあ、カラスが近くに?そう思っていると、急に影が差した。何事かどうか頭を上げると、笑顔の男が目に入った。
「よっ!唯。」
「カラス………いや、翡翠さん。」
唯は恩師__翡翠に挨拶する。すると、翡翠の背中から水色の髪の透けている少女が出てきた。頬を膨らませながら、少女は唯を指差す。
「ちょっと、唯!あたしのこと忘れてない!?」
「雫も久しぶり。」
金切り声で喚く翡翠の|契神《けいか》_雫にも挨拶をした。翡翠は唯の肩の傷をペチペチと叩く。
「うん。傷は塞がってそうだな。流石、神宿し。」
「翡翠の傷も軽傷ならあたしの力注いで治してんだからね!」
「あれ体力使うんだよなあ…………。ということで、疲れとかないか?」
「はい、大丈夫です。」
「神宿しも契神もそんな変わんないように見えるけど何が違うの?」
雫の唐突な疑問に二人は驚く。そうだ、鴉神の雫は先代の継承からまだ三年、契神になったのは二年だ。知らなくて当然だ。
「神宿しは自分の命を縮めて、体に神を入れて操る。契神は対等な関係。うーん、強制的に従わせてるのと、契約して助けてもらっているって感じ?」
「あたし、翡翠と契約なんてしたっけ?」
「したよ。」
翡翠は愛おしむように目を細めた。その目に何が写っているのか唯は知らない。雫は柄でもなく気まずそうに縮こまる。
「そうだ、花漣は?」
「あのお嬢ちゃんは大丈夫でしょう。神様なんだし。自分の力を制御しきれてなかったね。継承したばかり?」
「彼女は、神様としての自覚がなかったみたいです。」
「ふーん。どちらにしろ一大事だね。|涙水ノ神《るいすいのかみ》に暴走されちゃあ世界が滅んじゃう。」
翡翠は試すような目で唯を見下した。雫は首を傾げ、唯は目線を足元の影にやった。内心は動揺と少しのやっぱりかという気持ちだった。
「しかし、彼女の代で涙水ノ神は皆………殺しました。」
「そうだね。」
翡翠の回答に唯は拳を握った。翡翠は仕事のことになると翡翠じゃなくなる。何というか、近寄らせない凍りついたような雰囲気を纏い、淡々と事実を述べ、冷静にしなければならないことを見極める。たとえ、それが子供の姿をした神であっても脳天に一発撃って終わらせる。そんな私情を挟まない翡翠が怖くも、羨ましかった。心が痛まないのかといつも思う。
「なぜ継承できたのか。謎だ。」
「成りうる神も殺しましたし、彼女は涙水ノ神じゃないはずだ。」
「《《君も》》見ただろう?あの髪と目。そして、あの能力。彼女は紛れもない涙水ノ神だ。」
翡翠の言葉を聞いて、唯はやはり見ていたかと思う。翡翠の契神、雫は鴉神。鴉の視覚を借りて監視していたのだろう。
「なぜ涙水ノ神が再び誕生してしまったのだ………。」
「いずれにせよ、彼女を一度上に報告しなければならない。君には意味が分かるだろう?」
その意味が唯には痛いほど分かった。上に報告する、つまり、上の判断次第で《《自分は花漣を斬らなくてはいけない》》。もう、彼女のような思いをするのはごめんだと思っていたのに、彼女の願いを叶え彼女の代で終わりにしたかったのに。自分は彼女との約束を何一つ叶えられてない。笑っていることも、神殺しをやめることも、涙水ノ神の継承を止めることもできなかった。
「にしても、涙水ノ神はなぜ再び継承されたのか?先代涙水ノ神と彼女は関わりがあったのか?」
翡翠の問いかけで唯は一気に現実に引き戻された。そうだ、彼女との思い出に浸っている場合ではない。花漣は涙水ノ神だとしたら、彼女の子供、もしくは彼女と関わりがあったことになる。でも、それはないと断言できる。花漣は神様の中でも人間くさかった。まるで、神様に成り立てのような___。
「………翡翠さん。神様から人間の匂い香が消えるのはいつですか?」
「二年くらいかな。」
唯が彼女を殺したのは二年前。もしかして、《《花漣は神様の血を引いていないのかもしれない》》。
唯の中である一つの仮説が脳内を廻り続けた。
NEWキーワード
・契神
・鴉神
・神宿し
・涙水ノ神
・継承
おまけ
作者「考察してくれる人がいて作者の口角は上がりっぱなしです。」
雫「作者って伝えんの下手よね。」
作者「え?」
雫「だってさ、作者がしっかりと伝えたつもりなのに読者には一向に伝わってないことって結構あったよね?」
作者「ア、アハハハハハ。」
雫「描写存在しないレベルだし。日に日に文字数減ってるし。」
作者「ズーン。」
作者「最近、書き溜めが消えて慌てて三十分ほど書いたのが消えて、萎えた後に一時間でこれを書き上げた作者を褒め((((((((殴
あ、はい、すみません。分かんないことあったら質問してください。では、よい休日を。」