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第二話:龍神の鱗とあたたかいスープ
「ほれ、もっとお食べ。人間の子というのは、ずいぶんと小さくて脆いのだな」
目の前に差し出されたのは、湯気を立てる木の実のスープだった。
大の大人が何人も隠れられそうな巨躯を持つ白銀の龍――この伝説の龍神は、見た目の威厳に反して、呆れるほど過保護だった。
「ありがとう、龍神さま。すごく美味しい!」
私がスープを口に運ぶと、龍神さまは満足そうに喉を鳴らした。その振動だけで、洞窟の空気がビリビリと震える。
崖から突き落とされた時は、すべてが終わったと思った。
生まれつきの「燃えるような緋色の髪」と「星を溶かしたような金色の瞳」。
普通の人間とは違うその姿のせいで、私は実の家族から「不吉な化け物」と忌み嫌われ、最後は危険を排除するという名目で突き落とされたのだ。
けれど、この地底の奥底にいた龍神さまは違った。
私の姿を見るなり、「なんと美しい。それは極上の魔力を宿した、選ばれし者の証だぞ」と、その大きな鼻先を寄せて歓迎してくれたのだ。
生まれて初めて存在を肯定された私は、思わずその場で泣き崩れてしまった。
「……でも、不思議。龍神さま、どうして私の言葉がわかるの? それに、このスープも……」
「ふはは! 我をただのトカゲと思うなよ? 我ほどの格になれば、人の言葉など造作もない。スープはな、我が少しだけ人間の姿に化けて作ったのだ」
そう言って龍神さまがパチンと尾を振ると、一瞬だけ、白銀の髪を持った長身の美しい青年の幻影が見えた。
すぐに元の巨大な龍の姿に戻ってしまったけれど、私のためにわざわざ人の真似事をしてくれたのだと思うと、胸の奥がじんわりと温かくなる。
「それにしても、お前を突き落とした地上の人間どもは、見る目がなさすぎるな」
龍神さまの金色の双眸が、一瞬だけ鋭く細められた。地響きのような低い声に、私は実家での冷遇を思い出す。
『お前のような化け物、我が家の汚点だ』
『早く消えてくれれば、我が家も世間に顔が立つというのに』
冷酷な父親の顔、嘲笑う異母妹の顔が脳裏をよぎる。
私をモノのように扱い、最後は殺そうとしたあの家――。
「……いつか、見返してやりたいな。私を化け物って呼んだこと、後悔させてやるの」
ぽつりと溢した言葉に、龍神さまは優しく、けれど力強く頷いた。
「いい心がけだ。お前には我が認めた最高の才能がある。少しずつ、我が力を使いこなせるようにしてやろう」
「えっ、私の力?」
「そうだ。その髪と目は、膨大な『火』と『光』の魔力の源。まずは、その魔力を体に馴染ませることから始めるぞ」
それからの日々は、驚きと修行の連続だった。
龍神さまの指導のもと、私は自分の体内に眠る魔力の動かし方を学んでいった。
今までは「気味が悪い」と抑え込まれていた力が、龍神さまのアドバイスを受けるたびに、まるでパズルのピースが嵌まるように私の一部になっていく。
人差し指の先に、小さく、けれど太陽のように眩い純白の炎を灯せたとき、龍神さまは我がことのように大喜びしてくれた。
「素晴らしい! 筋がいいぞ。これなら数年もすれば、我が眷属(けんぞく)として恥じない強さになれる」
「本当!? 頑張る、私、もっと強くなるね!」
嬉しくて、私は思わず龍神さまの大きな前足にしがみついた。ひんやりとした白銀の鱗が、とても心地いい。
実家の人間たちに怯え、泥水をすするようだった過去の生活が、まるで遠い夢のようだ。
ここには、私を恐れない、私を愛してくれる存在がいる。
「焦る必要はない。時間はたっぷりあるのだからな。……さあ、夜は冷える。我が翼の中で眠るが良い」
「うん。おやすみなさい、龍神さま」
大きな白い翼が、優しく私を包み込む。
私は最高に頼もしい師であり、家族となった龍神さまの体温を感じながら、深い眠りへと落ちていった。
このあたたかい時間が、永遠に続くものだと信じて疑わずに――。
第二話なのです!!
この作品も、頑張って書いたのでファンレターをくださいなのです!!!!