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第一話:どん底の崖っぷちから、伝説の幕を開ける
「気味が悪いんだよ、その呪われた見た目が!」
激しい罵声とともに、私の身体は宙を舞った。
背中に受けた衝撃の余韻が、冷たい風となって全身を包み込む。
視界が上下に反転し、見上げる崖の上には、私を突き落とした「家族」の歪んだ笑顔があった。
父親、母親、そして出来のいい腹違いの姉。彼らは私が真っ逆さまに落ちていく姿を、まるでゴミを処分したかのように満足そうに見下ろしている。
(ああ、またこれだ)
意識が遠のく中で、私は前世の記憶をぼんやりと思い出していた。
前世でも私は、周囲と少し違うというだけで忌み嫌われ、孤独のまま死んだ。今世こそは幸せになれると思ったのに、生まれ変わった先でも待っていたのは地獄だった。
理由は、私の「見た目」だ。
この世界ではありえない、燃えるような緋色の髪。そして、深海のように妖しく光る瑠璃色の瞳。
ただそれだけの理由で、私は実の家族から「悪魔の落とし子」「呪われた子供」と呼ばれ、物置小屋に閉じ込められて育った。
そして今日、ついに「お前は我が家の汚点だ」と、この『底なしの魔の裂け目』と呼ばれる崖から突き落とされたのだ。
ごうごうと耳を打つ風の音。
落ちたら最後、生きては戻れないと言われる暗黒の深淵が迫る。
(せめて、あの人間たちに一矢報いたかったな……)
そう諦めかけたその時。
私の身体は、地面に激突する直前で、信じられないほど柔らかい「何か」に受け止められた。
「おや……? こんな地の底に、人間の子供が落ちてくるとはな」
地響きのような、しかしどこか優しく、深く響く声。
恐る恐る目をあけると、そこにあったのは漆黒の闇よりも深い、圧倒的な存在感を放つ巨大な鱗だった。
雲を掴むような巨体、天を突くような二本の角。そして、金色に輝く理知的な眼眸。
それは、おとぎ話に登場する、数百年前に姿を消したはずの『伝説の龍神』だった。
「……死んで、ない?」
「ふむ、死んでおらんよ。小さな迷子よ」
龍神は大きな鼻先を私に近づけ、くんくんと匂いを嗅いだ。そして、私の髪と目を見た瞬間、その金色の眼を驚きに丸めた。
「ほう……その髪、その瞳。お前、人間たちに『異形』と蔑まれて捨てられたな?」
「……うん。気持ち悪いって、言われた。危ないから、死ねって」
ぽつりと呟いた私に、龍神はくつくつと低く笑った。その笑い声には、怒りと、それ以上の愛おしさが混ざっているように感じられた。
「ははは! 愚かな人間どもめ! 目の前にある至宝の価値も分からぬとは! 良いか、小さき者よ。その緋色の髪は万物を統べる炎の証、その瑠璃色の瞳はすべてを見通す王の眼。それは、我ら龍族の王族にしか現れぬ、最も気高く美しい色なのだぞ」
「え……?」
生まれて初めて、私の見た目を「美しい」と言ってくれる存在に出会った。
ボロボロと目から涙が溢れ出す。
そんな私を、龍神は大きな尾で優しく包み込んでくれた。その温もりは、実家の誰からも与えられたことのないものだった。
「行き場がないのなら、我が娘となるが良い。お前を傷つけるものは、この我が許さぬ」
こうして、崖の底で、私と龍神の奇妙で温かい共同生活が始まった。
この出会いが、私を虐げたあの「実家」を、文字通り跡形もなく消し去る未来への第一歩になるとは、この時の私はまだ知る由もなかった。
初めての小説投稿なのです…!!
どうでしょうかなのです!?
ここまで読んでくれて本当にありがとうなのですっ!!!!