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ソレイユ!⑥負けたくない気持ち
月
遠足の目的地である緑豊かな公園に着き、高橋先生の「よし、ここからはお弁当タイムだ! 好きなやつと集まって食えよー!」という豪快な声が響いた。その瞬間、クラスのみんなが一斉に動き出す。私はリュックを抱え直して、すぐにサキちゃんと心珀ちゃんの姿を探した。「奈美ちゃん! こっちこっち!」ポニーテールを揺らしながら、遠くから心珀ちゃんが大きく手を振ってくれている。ほっとして駆け寄ろうとしたとき、心珀ちゃんの後ろにいるサキちゃんの姿が目に入って、私の足がピタリと止まった。サキちゃんの周りには、彼女の班の女の子たちが3人、笑顔で囲んでいた。「サキちゃん、一緒にお弁当食べよう!」「レジャーシート、ここ敷くから隣おいでよ」おとなしいはずのサキちゃんが、新しい班の友達と照れくさそうに、でもすごく嬉しそうに笑い合っている。サキちゃんは私と目が合うと、「あ……」と少し困ったような、申し訳なさそうな顔をした。サキちゃんはもう、私の知らない新しい場所で、ちゃんと一歩を踏み出して受け入れられているんだ。「奈美ちゃん、どうしたの?」追いついてきた心珀ちゃんが、不思議そうに私の顔を覗き込む。「ううん、なんでもない。サキちゃん、楽しそうだね」私は無理に笑顔を作ってそう答えた。サキちゃんが新しい友達を作れたのは、本当はすごく嬉しいはずなのに。胸の奥が、ツンと冷たくて痛い。『今年もよろしく、負けないよ』新学期の日、サキちゃんの瞳の奥に見えた気がしたあの光が、頭の中でよみがえる。おとなしいサキちゃんが頑張っているのに、私は遠足の班行動でも、ただ周りに合わせるだけで精一杯だった。「……奈美ちゃん、あっちで食べよ!」心珀ちゃんが私の手を引いて歩き出す。広げたお弁当の卵焼きはいつも通り甘くて美味しいはずなのに、今の私には、なんだか少しだけ味が薄く感じられた。
お弁当の時間が終わった後の自由時間、公園はクラスみんなの賑やかな声で溢れていた。「ねえ奈美ちゃん、あっちの大きな遊具で行こうよ!」心珀ちゃんが元気に私の手を引く。だけど、私の視線は、どうしても少し離れた芝生広場の方に向かってしまっていた。そこには、さっきの班の女の子たちと一緒に、大縄跳びの縄を回しているサキちゃんの姿があった。いつもは私の後ろに隠れるようにおとなしく笑っていたサキちゃんが、今は自分から「いくよー!」と声を上げて、新しい友達とタイミングを合わせている。サキちゃんが縄を跳ぶたびに、彼女の髪がふわりと跳ねて、そのたびに私とサキちゃんを繋いでいた見えない糸が、少しずつ遠くへ引っ張られていくような気がした。「……サキちゃん、もうすっかり馴染んでるね」ぽつりと言った私の言葉に、心珀ちゃんも大縄跳びの方を振り向いた。「本当だ! サキちゃん、あんなに大きな声出せるんだね。すごいじゃん!」心珀ちゃんは純粋に嬉しそうにパチパチと拍手をしている。だけど、私の胸の奥は、どんどん冷たい影で覆われていった。嬉しいはずなのに。友達が新しい場所で頑張っているのを、応援しなきゃいけないのに。サキちゃんのあの笑顔の輪の中に、今の私の居場所はどこにもない。「奈美ちゃん、おーい! 集合だぞー!」遠くから高橋先生の大きな声が聞こえて、みんながそれぞれの班の形に集まり始める。サキちゃんは新しい友達と手を繋いで、楽しそうに笑いながら先生の方へと走っていった。私は、その後ろ姿をただ見つめることしかできなかった。新学期が始まったときは、あんなに近くにいたはずのサキちゃんが、今はまるで別の世界に行ってしまったかのように、果てしなく遠くに見えた。