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ソレイユ!⑤小さな一歩
月
「……あの、」かすれた声が、自分の口から飛び出した。心臓が口から飛び出しそうなほど激しく打っている。手汗で鉛筆がすべりそうだった。だけど、隣の班で必死に話しかけているサキちゃんの横顔が目に入って、どうしてもこのまま下を向いているわけにはいかなかった。「……この、3番の問題、みんな何になった……?」クラスの賑やかな声にかき消されそうな、小さな声。言った瞬間、バカなことを聞いてしまったんじゃないかと、顔から火が出るほど恥ずかしくなった。誰も答えてくれなかったらどうしよう。沈黙が、一瞬だけ流れる。「……あ、私は」恐る恐る顔を上げると、斜め前の席の女の子――いつも図書室で静かに本を読んでいる、おとなしい印象の子が、小さくノートをこちらに傾けた。「私は、42になったんだけど……自信なくて」「え、あ、私も42になった!」私の隣の男の子も、ホッとしたような顔で小さく声を上げる。「あ……よかった、みんな同じだ」私の口から、自然とため息のような言葉が漏れた。まだクラスで一番大きな声で笑っている心珀ちゃんの班や、一生懸命話し合っているサキちゃんの班みたいにはいかない。だけど、私たちの班の間に流れていた、あの冷たくて重い空気は、確かに少しだけ柔らかくなった気がした。「おいおい、1班! いいじゃねえか、その調子だ!」通り過ぎざまに高橋先生が、私の肩をポンと叩いた。先生の手のひらは、びっくりするほど温かかった。窓から入る春の風が、ノートの端をパタパタと揺らす。まだまだ不安だし、高橋先生のパワーには圧倒されっぱなしだけど。小さく踏み出したこの一歩が、私の6年生の、本当のスタートだった。