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《第二話》『新たな出会いと謎の道化師』
「お、マジェスティ〜!お前また喧嘩止めてたのか?w」
遠くからマジェスティ先生と同じく教師らしき人物が、片手をひらひらと左右に振りながら歩み寄ってくる。マジェスティ先生を呼び捨てにしている辺り、それなりに仲は深く、交流があるのだろう。
「はぁ…揶揄わないでください、バーミリオン先生。」
マジェスティ先生は眉間に皺を寄せ、こめかみを片手で押さえ、少し掠れた声でそう呟く。酷く疲れている様子で腕を組み、俯いた。
「いや〜、お前が周りに振り回されているのが愉快だよw」
バーミリオン先生は意地の悪い笑みを浮かべ、腰に手を当てて心底愉快そうに笑った。マジェスティ先生は同僚にも揶揄われて苦労しているのだな…と俺は心の中で静かに思う。
「もうすぐ入学式ですね、さ、席についてください」
マジェスティ先生はふと思い出したように人差し指を立てると、俺の背中をポンと叩いて促した。俺もそれを聞いて自分の椅子の方へと歩き、腰を下ろした。
数十分後─
「はぁ〜、やっと終わったわ!30分くらいあのままなんて酷すぎない!?いくらなんでも長いわよ!」
保護者や先生がゾロゾロと解散していく中、バイオレットは腕を伸ばして文句を垂れる。確かに、普通は10分か15分くらいなような気がするが、こんなに長いのは初めてだった。流石に30分間ほとんど椅子から動かなかった影響で、足腰が少し痛んだ。
「シアン、大丈夫…?」
マゼンタが俺が少し痛がっていることに気づいたのか(片手で抑えているからだろうが)、心配そうに眉を下げて声をかけてきた。
「大丈夫〜?保健室行く〜?」
オーラもぬいぐるみを抱えたまま、ニコニコとしてそう提案した。ずっと笑顔なのが少し気味が悪いが、誰かが怪我した時や落ち込んでいる時はちゃんと心配してくれ、励ましたりしてくれる優しいやつだ。
「あぁ、大丈夫…少しすれば治るよ。」
指先でメガネのブリッジを押し上げ、頷いてそう言った。裾やネクタイを軽く整えていると、ふと視界に人影が入り込む。
「やぁやぁ!!終わったようだね!どうだい?この学園は!」
先ほど、講堂の扉のドアで待ち構えるかのように立っていた、あの道化師だ。
「…この人、さっきもいたよな、入学式中はいなかったように思えるが…。」
タンジェリンが腕を組んだまま、眉間に皺を寄せ、疑問に思ったのか後ろで呟く。
「あぁ、この人はアンバーさんです。見た目通り道化師をやっていらっしゃって、こう見えて教育がとても上手な方なので、時々こうして来てもらっているんですよ。」
マジェスティ先生がアンバーさんの横に立ち、微笑んで俺たちに代わりに紹介してくれた。
「そう!俺もこの学園の卒業生だからね!よろしく!」
マジェスティ先生の自分の紹介を聞いて、ふふんと自慢するかのように琥珀色の目を輝かせて胸元に手を当ててそう言った。
「はぁ…てことは、大先輩ということですね。よろしくお願いします。」
「よろしくお願いしますわ、アンバーさん。」
二人揃って、ペコリと頭を下げ、アンバーさんの目を真っ直ぐ見つめた。
「い、いや〜、それにしても実に美しいね!」
急に真っ直ぐ見つめられたことに少し戸惑ったのか、視線を逸らしながら、アンバーさんはなんとか冷静を保とうとする。全く保ててなどおらず、動揺しているのが丸分かりだが。
「さて、私たちも教室に移動しましょうか。」
マジェスティ先生はアンバーさんの様子を見て小さくふふッと笑いを溢すと、一歩踏み出し、教室へと向かっていく。
「よし、俺らも行こうか!」
バーミリオン先生が他のクラスの生徒、恐らくバーミリオン先生の担任のクラスだろう。腕を上げ、満面の笑みで他の生徒を促し、先導していった。
「‥行こう。」
俺はマゼンタの手を繋ぎ、促して前を向くと、マジェスティ先生の後を追いかけるように走り出す。
「…!?え、ええ、!」
マゼンタは急に顔を赤らめて動揺しながら、俺に引っ張られるがまま走り出した。後ろでは、相変わらずバイオレットとタンジェリンが何やら小声で言い合いしているような声が聞こえたが、気にせずそのまま走り続ける。
「ねー、待ってよ〜。」
パタパタと靴音を鳴らし、ぬいぐるみを両手で抱えながら、オーラが必死についてこようと後ろから走ってくる。
「はいはい、わかったよ」
ため息をついて仕方なく止まり、マゼンタと繋いでいた手を解くと、此方へと向かって走ってくるオーラの方へと視線を向けた。
「置いていくなんてひどいよ〜。」
言葉ではそう言いながら、笑顔なことから全く気にしていない様子でオーラが歩み寄り、疲れたように額の汗を拭った。
「早く行くぞ、他の人も待ってるんだから。」
俺はそう言って再び前を向いて歩き出し、教室がある筈の2階へと続く階段を登っていった。これからどんな出会いがあるだろうかと、期待と高揚感に、密かに胸を弾ませた。
─《登場人物》─
『シアン・レイシア』
『マゼンタ・フール』
『オーラ・ウェイン』
『バイオレット・エーガン』
『マジェスティ・クロフォード』
『バーミリオン・ファーム』
『アンバー・ギンデット』
─《次回予告》─
第三話『賑やかなクラス、そして…?』