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空の向こう側
少女には、天気を操る力があった。
晴れてほしいと願えば、黒い雨雲が消えて行く。
雨が降ってほしいと願えば、青空から水滴が落ちてくる。
最初にその力に気づいたのは、8歳の夏だった。
楽しみにしていた遠足の日。
空は雨雲に覆われ、ザーザーと雨が降っていた。
それを見た少女は空に向かって呟いた。
「晴れればいいのにな」
すると、雨雲が誰かに追い払われたかのように流れていった。
少女は大喜びした。
翌日。
テレビには、大きな文字が並んでいた。
『ヨーロッパにて大規模な洪水。多数の地域が浸水』
少女は、それが自分のせいだとは思わなかった。
偶然だと思った。
けれど、それからも不思議なことは続いた。
運動会の日に晴れを願えば、遠くの町で巨大な山火事が起きた。
暑さに耐えられず雨を願えば、別の国で記録的な豪雨が発生した。
少女は次第に、ひとつの恐ろしい法則に気づいた。
――自分が天気を変えるたび、世界のどこかで、その反動のように災害が起きる。
その恐ろしい法則に気づいても、少女は力を使うのを辞めなかった。
ある冬の日、親友が病気になった。
「雪が見たい」
病室の窓から外を眺めながら、親友は小さく笑った。
「今年はまだ一度も降ってないから」
少女は迷った。
もう、自分の力が何を引き起こすのか知っていた。
それでも、その笑顔を見ていると、どうしても願ってしまった。
「……少しだけなら」
窓の外に、白い雪が舞い始めた。
親友は嬉しそうに笑った。
反動は、天気を変えるごとに大きくなっていく。
雪が山のように降り、都市は機能停止。
多くの人々が、避難を余儀なくされた。
その出来事が起きた場所は、
親友の大切な友達がいる場所だった。
少女は、胸の中で小さく決意をした。
『もう、二度とこの力を使わない』