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【淡本町私立淡本中学校:7限目】探求、響く足音。
私たちはA先生の異常を伝えるために、校長室に駆け込んだ。
緊急なので、ノックはしない。勢いよく扉を開けると、
そこには誰もいなかった。間が悪く、校長先生は不在のようだった。
「まずいな、早く見つけないと。A先生が心配だ」
わたしは、校長室で校長を待っているように言われた。
カラ君は、校舎内を走り回って校長を探しに行くと言って、
校長室を後にした。
ひとりになり、一通り辺りを見渡してみた。
すると、棚の上に放置されている名札を見つけた。
気になって手に取ってみると、そこに書いてあったのは見覚えのない教師の名前。
「東...ケッカ?結果ってことかな」
独り言のように言ってみる。だが、確かにここの教師には
名前に規則性があるように思える。
西、北、南、そして、東。
下の名前にも、一定の規則性がある。
西先生の下の名前はマツロ。恐らく、末路を意味する。
北先生はマツビ。末尾を意味していると思われる。
南先生の下の名前はケツビ。こちらも、多分結尾のことだ。
そして、東ケッカ。これは結果ということだろう。
すべて、物事の終わりを意味する言葉だ。
だが、それに気がついたところでなんなのだろうか。
そういえば、A先生は方角の要素も無いし、終わりという意味も無い。
それもやはり、ロボットだからなのだろうか...
名札を棚の上に戻した瞬間、校長先生が入ってきた。
中にいたわたしに一瞬驚いたような顔を見せるも、
すぐにいつものフレンドリーな笑顔に戻る。
「やあアサさん、ごめんね。何かご用だったかな?」
「よかった、A先生の様子がおかしくて...」
「それは大変だ、すぐ行こう。チミも、心配ならついてきていいよ」
ふたりで校長室を出ると、走ってくるカラ君が見えた。
「カラ君!もう大丈夫、ありがとう」
「よかった...校長先生、おれもついていっていいですか?」
「うーん、チミはダメ」
さ、行こう。校長先生にそう言われ、私はカラ君のことが
少し気になりながらも、保健室に歩き出した。
しかし、なぜ私はついて行っていいのに
カラ君はダメと言われたのだろうか?
保健室に着くと、もはやうずくまる体力すら無いようで、
その場に倒れ込んでいるA先生がいた。
校長先生はすぐに駆け寄って、A先生の首元のチョーカーに手をかける。
チョーカーにはありがちな電源マークが描かれており、
再起動でもするのだろう。
少しすると、A先生が目を開けた。
「こ、校長?ぼくは一体何を」
「大丈夫?A先生。チミ倒れてたんだよ?」
「A...ああ、大丈夫です」
違和感のある会話をしながらも、一応は大丈夫なようだ。
A先生は私の方を見てから、申し訳なさそうな顔をして話し始める。
「アサさん、情けないところを見せてしまったね。
養護教諭が倒れて、生徒に助けを呼んでもらうなんて...」
「いえ、困ったときはお互い様です。それで、もう大丈夫ですか?」
「うん、私は大丈夫だよ。心配かけてごめんね」
これで、この騒動は丸く収まった...はずだ。
だが、わたしには少しひっかかることがあった。
A先生の一人称が、一瞬”ぼく”に変わっていたこと。
いつもは赤いはずの目が、灰色だったこと。
旧量産型タイプAとは:
既に生産が終了している、両性タイプの医療ロボット。
病院の医師や看護師、もしくはカウンセラーなどとして
医療現場で多く使われていた。
男女どちらの性も併せ持つため、男性も女性も安心して
悩みを話すことができると好評であった。
だが、工場の老朽化などで生産が終了した矢先、
タイプAに仕事を奪われた医療従事者たちが、
片っ端からタイプAを破棄していってしまった。
最終的に、淡本中学校で働いている個体が最後の1体になった。
タイプAには、モデルとなった人物はいないと記録されている。
ただそれは、そう記録されているだけであって、
開発者が嘘をついている可能性なども、かつてメディアで取り上げられた。
タイプAの開発が始まる少し前に、ある市内では
ビジネスホテルで謎の死を遂げる変死事件が相次いだ。