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高嶺の花の堕落を願う
リクエストのものです
まず一つ目(多分、全部和戸涼(美形&気が強い性格)受け)
和戸涼受け、日村修(美形&堂々とした性格)攻めの日常
事件を解決していく内に攻めがだんだん好意を抱きつつも、自身のプライドが邪魔する葛藤
多分、本編で恋愛はないです(断言)
涼がそもそもノンケの描写があるからですね
物事を考えていても、どうにも何かがちらついてしかたがない。
好きなミステリーゲームをしている時でさえ、普段なら集中できるしものの数十分で終わるはずだ。
それが、今は始めてから1時間も経過している。本調子ではない。何か、気がかりなことがあるに違いないのだが、それが何か分からない。
「...気分が悪い」
そう独り言を呟く。
「何がですか?」
独り言に返答がきた。頭がおかしくなったらしい。
「日村さん?」
いよいよ、末期か。
「日村さん。ねぇ、日村さんってば!」
「なんだ、五月蝿いな!」
「ああ、やっと返事しましたね。ずっと呼んでたんですよ」
幻聴だと思っていたが、人だったらしい。
偉そうに呼んだのは和戸涼だったようで、手にどこかの漫画雑誌を持って人の許可も得ずに個室の扉を開けたようだ。
「そうかい。それで、何の用で?」
「この漫画雑誌の...あ、これです」
パラパラと漫画雑誌を開いて、あるページを見せる。
特に特徴のない漫画の少女が真ん中に映る美少年と思わしき男性に対し、頬を赤く染めている絵。
「この作品、どこにあるか知りませんか?」
「...いや、知らないね」
「そうですか。お時間とってすみません」
「大丈夫だ。ちょっと集中力が切れていてね、良かったら私も探そうか?」
「...良いんですか?」
「ああ。Aの漫画コーナーから探してくるよ」
「有り難うございます。じゃあ、俺はZから見てきますね」
「了解」
バタバタと漫画コーナーへ駆けていく涼を見送り、Aの漫画コーナーへ移る。
『君のことが大大大嫌いな50人の彼氏』『山崎ちゃんとLv001の恋をする』『魔入りません、出人ちゃん』など様々な漫画が並んでいる。
様々なジャンルが立ち並ぶ漫画コーナーの中で、恋愛ジャンルは中高年層に絶大な人気を誇る。その中で一つ、誰かが戻し忘れたか、間違えたであろう恋愛に関する論文が棚の空きに収まっていた。
その本をおもむろに手に取り、頁を開く。
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〖性的指向〗
性的指向とは、人の恋愛・性愛がどういう対象に向かうのかを示す概念であり、具体的には、恋愛・性愛の対象が異性に向かう異性愛(ヘテロセクシュアル)、同性に向かう同性愛、男女両方に向かう両性愛(バイセクシュアル)などを指す。異性愛が性的指向であるのと同じように、同性愛や両性愛も性的指向である。
(引用:wikipedia)
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...ただの解説だったらしい。
しかし、興味深い論文内容ではある。どこかで見たようなものだが...まぁ、気にしないでおこう。
本を横のテーブルに置き、店員が元に戻せるように置いておく。そして、ゆっくりとまた視点を移動させ、例の漫画を探す。
恋愛漫画、少年漫画と別れていればいいのにと思うが、別れたところで皆が元の場所に戻すか不明なため、不可能だろう。やがて、棚に例の漫画シリーズを見つけた。
シリーズの名前も先程見た漫画と同じもので、涼を呼ぼうと身体を後ろに向けた辺りで本人の顔が肌が触れあうほど、すぐ目の前にあった。
「うおっ...急に振り返らないで下さいよ」
驚いた顔から少し不機嫌そうになる顔に少々、心が跳び跳ねるような感覚になったが抑えて口を開いた。
「ああ、悪いね。私の後ろを見てみなよ、見つけたぞ」
「あ、本当ですね。じゃあ、ちょっと...」
その言葉が言い終わらない内に彼が腰を屈めて、そのシリーズを何巻か取り出す。
「助かりました、中々見つけられなくて...有り難うございました」
そう言われて、顔が赤くなるような熱を感じる。いやにおかしい。褒められることは慣れているはずだ。それが、何故、こんなにも嬉しくなるのか。
そもそも、最近はずっとこうだ。その原因は、おそらくきっと、和戸涼である。そうに違いない。
「...日村さん?どうしました?」
何も答えなかったからか、前と同様に訊いてくるのがどうにも、何故か、愛しいと感じる。
「いや...何でもない」
そう言えば、すぐに笑って軽く挨拶をし、去っていく彼の姿が瞳に映った。
仮に今の気持ちと似たようなものがあるとするなら、それこそ〖恋〗に近いのだろうが、私に限ってあり得ない話である。
きっと、先程読んだ本に思考が偏っているだけだ。
でも、もし。
本当に愛しているのなら、彼も一緒でむしろ私に伝える側になれと願わずにはいられない。
私が彼へなど、断じて許したくない。許されないのだ。