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0000 南海トラフ巨大地震
2041年1月31日。
揺れが起こり、不意に鳥肌が立った。
おぞましい気配を感じた。
そして、理解した。
ついに、恐れていた事態が起きたのだと。
『……繰り返します。今日午前8時23分19秒、最大震度7の地震が発生しました。震度7は、主に宮崎県、高知県、徳島県、和歌山県、三重県、愛知県の沿岸部にて観測されています。マグニチュード9.2。震源は南海トラフ。大津波警報が発令されています。落ち着いて、できるだけ早く、高いところに避難してください。まもなく第一波がおとずれると思われます。海岸の方には絶対に近づかないようにしてください』
テレビからはニュースキャスターの淡々とした声が響いてくる。
それを聞きながら、僕は目の前にいる男……部下に尋ねた。
「南海トラフ巨大地震?」
「はい、そうかと思われます」
「けど、それだけではないよね?」
「はい、今まで出逢ったことがないので確信は持てませんが、この気配は妖魔だと思われます」
「僕もそう思う。報告はした?」
「はい、同僚が」
「僕たちが動くことになるだろう。準備をしておいて」
「分かりました」
『「視聴者から、映像が届きました。どうやら、津波の映像のようですね」
「そうですね。遠くからとられた映像のようですが、波が防波堤を超えてやってくる様子が見えます。建物も飲み込まれているようですね」
「はい。御覧の通り、非常に高い津波が他の地域にもおとずれると思われます。気を付けてください」
「そうですね。それにしても……あれは何の鳥でしょうか? 津波と一緒にやってきていますね」
「海鳥などが津波から逃げているのでしょうか? ……今回の映像はここまでのようです」』
僕は、テレビに流れている映像をしばらく見て、
「あれが妖魔か」
何の目的もなくそう呟いた。
初めて見る姿だった。
『「新しい映像が入ってきました。説明しますと、人が、大きな鳥の餌食になっている映像だそうです。鳥類学者に問い合わせたところ、『そのような鳥は見たことがありません』との返答が返ってきました。」
「鳥類学者の知らない鳥がいたということでしょうか?」
「はい。AI画像である確率は10%だそうです」
「加工されていない可能性が大きいのですね?」
「はい。……映像は流せませんが、他の地域にも同様の鳥が現れる可能性が高いです。もし見かけた場合はすぐに隠れてください」』
「妖魔の映像が手に入りました」
「見せて」
部下が流した映像には、複数の異形の魔物がいた。
そして、人を貪り喰っていた。
「もう被害が出ているんだね。早く出動させてくれないかなぁ」
「もうしばらくお待ちください」
「分かってる」
『気象庁による先ほどの会見で、この地震の名称は「南海トラフ巨大地震」になりました。まもなく、政府による記者会見が始まります』
テレビは、刻々と変わりゆく事態の流れを見せてくる。
地震が起こってから、3時間と少しが経過していた。
他の地震に比べたら行動は早い方だが、これでも全然遅いのだ。
ああ、苛つくなぁ。早くしろよ。
「出動命令が出ました。まずは愛知県に向かうそうです。黄龍をご準備ください」
「分かってる」
「他の術者も他の地域に向かうようです」
「良かった……。じゃあ、妖魔を殲滅しにいこうじゃないか」
「はい」
僕たちは、政府が準備したヘリコプターに乗った。
ラジオからは、番組の続きが聞こえてくる。
『大変です! 政府があの生き物を「妖魔」だと断言しました! どうやら政府が秘密裏に育成していた術者でないと、勝てない模様です。どうやら「妖魔」は、江戸の終わりに陰陽師によって出現が預言されていたのだという驚くべき記録が明らかにされました! 明治天皇の御璽が残っている書類です! 信じられません! これから一体日本はどうなっていくのでしょうか!?』
地震発生時の淡々とした声が嘘のように、驚きにあふれた声がニュースキャスターから聞こえてくるのを、僕たちは、ただ黙って聞いていた。
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