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泡沫の契約、永遠の誓い《第二話》新緑の夏、不器用な羽織
彼と一緒に過ごしていくうちに確かに私は、雪解けのように心も溶けていきました。
彼は言葉こそ厳しいけれど、それは全て私や使用人の体を思ってのことだったし、何より不器用な優しさを持った強がりな人だった。私が少しでも遅い時間まで起きていると彼は決まって不機嫌で入ってきて、決まってこう言うの。
「いつまで起きているんだ。灯油の無駄だ。寒くはないか、風邪をひかぬようこれを羽織りなさい」
そう言って自分の羽織っていた少し大きくて高価な羽織を私の肩にかけてくれるのです。
「いいのですか?龍弥様は寒くなりませんか?」
「言っただろう。この家と俺のプライドに賭けて、お前に不自由な思いはさせない」
そうやって強がっている彼の耳が少し赤くなっていることに私は思わずくすっと笑ってしまいました。
「なんだ」と顔を真っ赤にしている様子を見るとどうしようもなく、彼のことが愛おしく思ってしまうのです。
細くて真っ白な私の肩にそっと彼の温かい手が一瞬触れた時、私は不覚にもその耳元に響く低い声と冷淡な目とは違う温かい手にすっかり堕ちてしまっていたのです。
翌朝、私はあのまま寝てしまったらしく、龍弥様の貸して下さった羽織を羽織ったままでした。
そこへ小春がニヤニヤとしながら入ってきて、私にこう言ったのです。
「昨夜はよく眠れましたか?龍弥様が羽織を貸して下さったのでしょう?」
「こ、小春!からかわないでちょうだい!」
「いえ、彩葉様、主人は自分のものに人の手、女の手なら尚更触れられるのを嫌がります。しかし彩葉様にはそうではない……。私が言えるのはここまでですね。小春殿、私たち従者はこれ以上首を突っ込まないようにしましょう」
そこへいつの間にかやってきていた透眞も加わり、確実に、私たちは近付いていきました。