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泡沫の契約、永遠の誓い《第三話》微熱の晩夏、波乱の火種
第三話です!
「ちょっとドキドキするように」をイメージして頑張りました!
二人の距離が少しずつ縮まり始めた新緑の夏。
私が龍弥様の書斎へ行こうと廊下を歩いていたら、龍弥様の声と知らない女性の声がしました。それは龍弥様と昔婚約していて、お家の経営が危うくなったら一方的に婚約を破棄したという、由美香(ゆみか)様でした。彼女はかつて自分が婚約破棄した龍弥様が、美しく成長し、お家を成長させていると知って、復縁を迫りに屋敷に乗り込んできたようでした。
「わたくし!やっぱりあなた様ではなきゃダメなのです。あの時の破談はわたくしは望んでいませんでした!もう一度わたくしと婚約して下さらないでしょうか?」
華やかな着物を纏い、由美香様は龍弥様の腕に涙を浮かべて縋り付きました。その姿を少し離れた廊下から見ていた私はどうしようもなく胸が苦しくなって、思わずそこから逃げ出してしまいました。
(龍弥様は昔はあの方が好きだった…。私は愛されていない政略の妻なのに比べて由美香様は…!)
自室に駆け込んでふすまを閉めた私の目からは大粒の涙がぽろぽろと溢れてきてしまいました。その瞬間、ふすまを勢いよく入ってきたのは小春でした。
「彩葉様っ…!」
小春は泣きじゃくっている私の顔を見るなりギュッと抱きしめてくれました。
「小春…私、どうしたらいいの?あの人が龍弥様の本当の…!」
「いいえ!それは違います、きっと龍弥様はっ」
小春は泣きじゃくっている私の肩をさすりながら自分まで悔しそうに泣き始めていました。
「私はっ、誰のおかげで龍弥様が穏やかに笑顔を見せるようになったか知ってます!…毎日彩葉様がお茶を淹れて書斎へ持っていき、真っ先におかえりなさいと言いにいって、その彩葉様の笑顔にどれだけ龍弥様が…いえ、私たちが救われたか!」
小春は私より大きい声で泣きながら、真剣に慰めてくれました。もしかしたら、龍弥様をお慕いできるようになったのはいつも私を思って行動してくれる小春のおかげだったのかも知れません。
「小春…ありがとう」
そう言って小春の涙を拭おうとした時、廊下からドタドタと言う大きな足音が聞こえてきました。
「彩葉!」
ふすまをガンッと開けたそこには息を切らして明らかに怒っている龍弥様と見たことないくらい焦った表情をした透眞がいました。
「ひゃあ!」とびっくりして飛び上がった小春の着物の襟を透眞が掴み上げました。
「小春殿、ここは我々がいていい場所ではありません。下がりますよ」
「ちょっと待ちなさいよ透眞!いま彩葉様が…」
透眞は軽々と小春を抱き上げると足早に部屋を出ていきました。
部屋には私と龍弥様の二人。気まずい雰囲気の中口を開いたのは龍弥様でした。
「なぜ、昼間私の書斎に来なかった!なぜ黙って逃げた!」
「それはっ…愛されていない形だけの妻の私よりも華のある由美香様の方が…!」
私が俯きながらぽつぽつと話すと龍弥様はいつものそっとした手つきではなく荒々しく、私を畳に押し倒したのです。
「馬鹿なことを言うな!俺が今、どんな思いでこの家にいると思っている!誰の笑顔を見たくて帰ってきていると思っている!」
「龍弥様…?」
「俺は!由美香よりもお前の方がそばにいてほしい。俺が今一番愛しているのは彩葉だ」
顔を上げてぶつかった龍弥様の瞳は、冷酷な瞳ではなく、切実な真剣さを帯びていました。
これが、私と龍弥様の想いが通じ合った幸せな暑い夏のことでした。
どうだったでしょうか……?
ぜひ次回も見てください!