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メルト・アイスクリーム
あなたは、連続殺人事件を知っているだろうか。同じ人物が、あるいは同じ組織が、次々と人を殺していく事件のことを連続殺人という。
今始まる物語は、ある連続殺人を物語っている。この事件は、100を超える人数の子供が、次々と殺され言った事件だ。刺されもしなければ、首を絞められてはいない。内側から殺されていったのだ。その子供たちの共通点は、「心が弱かった」ことだ。その名も、「メルト・アイスクリーム事件」。
(この物語はフィクションです 暴力表現が含まれています ご理解いただいたうえでご覧ください)(このお話は、一話ごとに登場人物が入れ替わります。(例:一話:みさき 二話:まこと 三話:みさき 四話:まこと…)気を付けてください。)
・主な登場人物
・時春 みさき(ときはる みさき):内気で気が弱い女の子。いじめが原因で引きこもりに。こーんと名乗るものからアイスを買ったうちの一人。
・狼崎 まこと(かみさき まこと):あることがきっかけで学校に行けなくなった。すてぃっくと名乗るものからアイスを買ったうちの一人。
・すてぃっく:メルト・アイスの店員。心が弱いものを中心にアイスを売っている。
・こーん:メルト・アイスの店員。心が弱いものを中心にアイスを売っている。
・ナレーター:物語を進める者。
第一話 甘いアイスはいかが?
私の名前はみさき。中学二年生だ。楽しい学校生活を送るはずだった。
今私の目の前に見えているのは、油性のマジックで書かれた文字。「バカ」「4ね」「消えろ」など。いくつもの暴言が書かれた机の上には、透き通るような美しい透明の花瓶に一つの白い花が生けられていた。「ねえあれ見て。今どんな気持ちなんだろww」「また来たの?来なくてもよかったのにww」そのほかにも、上履きの中に無数の画びょうが入っていたり、私が描いた絵や作文を目の前でびりびりに破いたりされた。私に向けられる冷たい視線。周りは見て見ぬふり。先生も見て見ぬふり。学校に私の居場所なんてなかった。
わたしへのいじめは日に日にエスカレートしていった。ついに私は、学校に行けなくなり、引きこもりになってしまった。中一の時よりも、内気な私の心は、だんだんと弱くなっていった。
そんなある日、私のスマホに一通のメールが届いた。中を見てみると、匿名の人物からのチラシみたいなものだった。
「疲れた心に、あま~い癒しを!甘いアイスはいかが?」ポップで大きい文字の横には、アイスを持った人が、満面の笑みで持ち上げているイラストだった。下へスクロールすると、「糖度最高点!こーんさんのアイス!みんな中毒になって、精神が失われるぐらいおいしいアイスだよ!初回限定で、アイスを一本無料であげちゃうよ!お問い合わせはこちらから!」私は迷いなくそのリンクを押した。
リンクの先には、色とりどりのおいしそうなアイスが表示されていた。どれにしようかと下へスクロールしていると、私のイチオシ!と、少し大きめの矢印で指されていたアイスがあった。「チェリーソフトクリーム」という名前だった。少し赤みがかったソフトクリームに、サクランボが乗せられた、いかにもおいしそうなソフトクリームだった。初回限定で一本無料だからと思い、私はそのソフトクリームを購入した。
すると、「ありがとうございました!またのご利用をお待ちしていまーす!」と、画面からあのアイスを持っていた女の人が飛び出してきた。びっくりして声が出せないでいると、「じゃあ、お求めの品、こちらに置いておきますね!それじゃあ、またのお越しを!」そういうと、スマホに向かってダイブして消えた。ポカーンとしていると、ケースに入ったソフトクリームが、キンキンに冷えた状態で机に置かれていることに気が付いた。「ゆめじゃ、ない?」いろいろと謎に包まれていたが、いったん気にしないことにした。
私は、その包みをはがし、さっそくソフトクリームを食べてみることにした。「んっ…!」冷たすぎて、少しキーンと来たが、味が申し分ない!とにかくおいしすぎて、おいしいとしか言えない!私は、そのアイスをむさぼるようにして平らげた。
ソフトクリームを食べていた時、私は少しだけあのつらい日々を忘れることができた。そう思っていると、なんだか力が湧いてきた!2か月ぶりに部屋の外に出ると、お母さんが泣きながら私に抱き着いた。「もう!どれだけ心配したと思ってるの?よかった、出てきてくれて…。」どうやら心配をかけていたらしい。私が部屋へ引きこもった後、お母さんが先生から学校のことを聞くと、不自然なほど話を逸らすので、こっそり教室をのぞかせてもらうことにした(ちゃんと校長先生に許可をとって)。すると、クラスの女子がみさきの話をするではないか。すぐに問い詰めると、娘がいじめを受けていたこと、それを見て見ぬふりをしたことが分かった。何とか解決したが、解決しても、全然部屋から出てきてくれなかったみたいだった。そうだったけ?と思いながら、とりあえず誤った。心配をかけたみたいだったから。
第一話END
第二話 いらない子
僕の名前はまこと。中学一年生だ。小学生から中学生へ上がるときの不安もあったが、みんな仲良くしてくれる。学校生活は楽しかったけど、地獄だったのは家だった。
あいまいな記憶だけれど、僕が幼稚園児ごろのころは、お母さんもお父さんも優しくしてくれた。幸せだったのに、川へ遊びに出かけたとき、事故が起きた。突然の大雨により、川の水が増水して、川の間にある足場に、僕が取り残されたのだ。お母さんは、僕を助けて自分が犠牲になった。家が地獄になったのはそこからだ。
はじめは、僕も悔しかった。あの時、僕がもっと注意していれば取り残されることもなかったのに。お父さんも、お母さんが僕をかばって亡くなった時は、酒に入り浸って、家の中は、あっと今に汚くなった。
お父さんは、夜な夜などこかへ出かけては、たまに癇癪を起して暴力をふるったりして、僕は限界だった。お父さんのことで、僕は楽しかった学校生活を捨てて、家に筆記こもるようになってしまった。このほうが楽だと、僕の心と体が錯覚してしまったのだ。それぐらい、僕は限界だった。酒が入った父は一番最悪だった。「お前さえいなければ千佳子は死ななかったはずなのに!」僕は、ストレスが溜まっていった。
「僕はいらない子なんだ」そう言って、僕は、僕自身の精神がすり減っていくのを感じた。そんな時だった。僕のスマホに、一通のメールが届いた。
僕は、学校に行かなくなってからのスマホには、「大丈夫?」「無理しないでね?」「なんでも相談に乗るよ。」と、友達からの心配のメールが届いた。「ううん。大丈夫。心配してくれてありがとう。」いつもいつも同じ回答をしていると、いつの日か、だれからもメールをもらわなくなった。
僕は、自分が少し喜んでいることに気が付いた。一応、少し気になっていたので、内容だけでも見てみることにした。
僕は、何かの贈り物が届くと、まず誰からなのかが気になる。ページを開き、差出人を見ると、匿名の人物からだった。ますます気になってきた。そして、ロードが終わった後、一枚のチラシが表示された。
「気分がすっきりしない。リフレッシュしたい。疲れた。そんなあなた!あま~いアイスで、一息いかが?」大きく書かれたキャッチコピーに、どんな内容なんだろうと、僕の好奇心がゆらいだ。下へスクロールすると、Q&Aコーナーのように、ソフトクリームを持った女の人が、「一口食べた瞬間、どんな味なんですか?」と、問いかけていた。すると、「少し刺激的な、忘れられない味です!」と、アイスキャンディーを持った女の人が、満面の笑みで答えていた。その下にも、もう一つだけ質問があった。「そのアイスには、愛がこもってるんですか?」と、いたずらっぽく笑う女の人に、「愛が足りない?遭遇したら、口に入れるよ!」さらにスクロールすると、甘くておいしいすてぃっくさんのアイスをお求めのあなた!詳細はこちらへどうぞ!と、リンクが表示されていた。僕は、恐る恐るリンクをクリックした。リンクの先には、色とりどりのおいしそうなアイスが表示されていた。どれにしようかと下へスクロールしていると、私のイチオシ!と、少し大きめの矢印で指されていたアイスがあった。「パチパチ!パニックアイスキャンデー!」という名前だった。少し青い見た目に、中には白い飴を砕いたようなものが入っている、いかにもおいしそうなアイスキャンデーだった。とてもおいしそうだったが、お小遣いは自分の食糧費で使っているので、あきらめようとしたとき、画面一番下に、「初回限定で、どんなアイスでも、一本無料!」と記入されていた。僕は、購入ボタンを押した。
すると、「ありがとうございました!またのご利用をお待ちしていまーす!」と、画面からアイスキャンデーを持っていた女の人が飛び出してきた。びっくりして声が出せないでいると、「じゃあ、お求めの品、こちらに置いておきますね!それじゃあ、またのお越しを!」そういうと、スマホに向かってダイブして消えた。ポカーンとしていると、ケースに入ったアイスキャンデーが、キンキンに冷えた状態で机に置かれていることに気が付いた。「マジか…」いろいろと謎に包まれていたが、僕は目の前にあるアイスに気を取られて、気にするよりも先に体が動いた。
僕は、その包みをはがし、さっそくアイスキャンデーを食べてみることにした。「ん。普通にうまい!」多分幼稚園児だった時も一回は食べたことあるだろうが、最近はこういうちゃんとした甘いものを食べたことがなかった。僕は、アイスの中に入っていた飴の、パチパチとはじける感覚に魅了され、気づけば平らげていた。
僕は、久しぶりに幸福感にい満たされた気がした。僕は、行っていなかった学校へ、もう一度行ってみようという勇気がわいてきた。
第二話END
第三話 謎の依存
私は、あのソフトクリームのおかげか、自分に自信がついてきた。久しぶりの学校でも、数日はいじめられたが、元気にふるまっていると、友達も徐々に増えて、いじめられることもなくなった。
私は、内気で弱り切ってしまった心が徐々に回復していくのが分かった。私は、あのアイスとチラシをくれた女の人に感謝した。
そんな幸せな日を送っていたある日だ。「ただいまー」と、家に帰り、自分の部屋についた時、異変が起きたのだ。
いじめられていた過去の記憶が一気にフラッシュバックしてきたのだ。
それだけじゃない。なぜか死にたくなってしまうのだ。私は必死にそのおかしな感情を抑え、頭を抱えてしまった。それだけでは終わらなかった。一気に体がだるくなり、一歩も動けなくなった。さらに、謎の激痛と腹痛に襲われた。耐えられなくなり、涙が出てきてしまった。そんな時、また匿名の差出人からメールが届いた。私は藁にでもすがる思いで握っていたスマホを、必死に動かして内容を見た。
それは、説明書のようなものだった。「もしこーんさんのアイスで異変が起きた場合、もう一度メニューを開き、商品を選んで買ってね♪さすがにかわいそうだから、私欲で買うこと以外、つまり、緊急時の時だけ、特別に、一本無料にしちゃうよ♪」というものだった。私はスマホをいじり、前と同じようにアイスを買った。
今度は、女の人は飛び出さず、画面からひょっこり出てはアイスを手渡しし、画面の奥に消えた。
私は、そのソフトクリームを完食すると、また元気が湧いてきた。あんなに痛かった頭も、おなかも、元通りになっていた。
みさきは、それからというもの、頭が痛くなる日を推測しては、自分のお金でアイスを買った。簡単に言って、そう、依存してしまったのだ。
みさきは、アイスのことになると、気が気じゃなかった。あんな苦しみはもうごめんだと言っていた。アイスは500円と、少し値があったが、痛みを我慢するのと比べたら何ともなかった。
そんなこんなでアイスを買ったりしていると、とうとう財布の底が尽きてしまった。不安だったけれど、今日食べたばっかりだったので、次は二カ月後くらいに食べればいいだろうと軽く思っていた。
第三話 END
おまけ スタッフの裏側で~その1~
こーん「おーい。それこっちに運んでくれる―?あーそれはあっちにおねがーい。」
今日もメルト・アイスは大忙し。こーんさんが指示を出すところに、あっちへこっちへと、荷物を運ぶスタッフの姿が見える。
すてぃっく「こーんさ~ん。とりあえず、小峰ちゃんと小林君のぶんのアイスができたよ~。あと、みさきちゃんのも!」
こーん「了解。とりあえずアレと接続して。あ!”アレ”入れた?”アレ”。」
すてぃっく「もちろん入れたよ!”アレ”でしょ?」
こーん「それがないと私たちのアイスクリームを売る意味がなくなるからね。そっちはちゃんとお願いね。」
すてぃっく「りょーかいでーす!」
指示出しはこーんさんの仕事のようですが、どうやら、現場を指導するのは、すてぃっくさんの仕事のようです。あま~い魅力にひかれたお客さんが、今日もホイホイのようにやってきます。甘いアイスにも、”アイス”があることをお忘れなく♪
おまけ END
第四話 幻覚
僕は、最近父がおとなしくなったことに、少し安心感を抱いていた。これもあのアイスのおかげだろうか。僕はあれ以来、アイスを食べていなかった。食べたくてもお金がないからだ。でも、僕はまたあの甘い誘惑に乗ることになった。
それは、ほんの一瞬の出来事だった。僕が部屋に足を踏み入れた瞬間、頭が割れそうなぐらいの激痛が走った。しゃがみこもうとしたときに、いきなり痛みが消えたのだ。
「いっつー…気のせいか?」
不思議に思いながらも、頭を撫でてみた。異常はなかった。そしてベットに寝転ぶと、今度はお母さんが川に流されていったあのころの景色が、目に映った。急いで飛び起きるが、そこにはさっきまで僕がいた自分の部屋だった。
僕は、病院に行こうとしたが、病院に行ってもお金がかかる。お父さんに行っても多分絶対連れて行ってくれる状態じゃないだろうし。僕は、気づかないうちに、スマホにメールが届いていることに気付いた。送り主はあの匿名の人物だった。
さっそく内容を見てみた。だが、リンクを押そうとしたら、スマホがぐにゃぐにゃにつぶれたのだ。だが実体はある。ぼくは、混乱してスマホを落としてしまった。その時だった。いつもお父さんとお母さんが遊んでくれた公園の景色が目の前に広がったのだ。すると、目の前に、僕が昔好きだった女の子がたっていた。「帰ってきたらね、笑顔で告白するよ。『おかえりなさい』!」そう笑顔で消える女の子を僕は眺めた。瞬きをすると、ここは僕の部屋だった。いけない。あれは幻覚なのか?まあいい。とりあえずこの手紙の内容が気になる。そしてリンクを押すと、説明書のようなものが入っていた。「もしすてぃっくさんのアイスで変なことが起きたら、特別サービスとして、アイスをさらにもう一本!無料であげちゃうよ!」とのことだった。
ぼくは、無料ということなら、と、前食べたアイスと同じものを買った。すると、画面の中から女の人がひょっこり出てきたと思ったら、笑顔で渡してくれた。僕はそれを受け取ると、一口一口、大事に味わった。そして、そのあとから、夜の寝る時間になるまで幻覚のようなものを一切見なかった。
僕は、それからも、幻覚が見えるたびにアイスを食べるようになってしまった。これが依存だということを、僕はわかっている。だけど、幻覚を見ている間、僕は謎のだるさに襲われるのだ。だから幻覚を放置していると、きっと普通の生活ができなうなってしまう。僕は、今日もアイスを食べる。普通になれるなら。
第四話 END
おまけ スタッフの裏側で~その2~
こーん「うんうん。初めての客としてはよくやるねみさきちゃん。」
すてぃっく「こーんさ~ん。他の子もスタッフたちが探してくれるから、売り上げがぐんぐん伸びているよ!」
こーん「うん。順調だ。おや。みさきはお金払ってまで危機を乗り越えてるのに、まことだけは異常が起きたときにしかかわないのか。なんかこう、みさきと似た境遇の子だったら買うんじゃなかったっけ?」
すてぃっく「”アレ”増やしとく?余ってるの。」
こーん「いいよ。『子供のような脳細胞へ、合理化一杯だけ』♪ね?」
すてぃっく「了解で~す!」
今日のメルトアイスも大忙し。さあ、果たして欲望に勝てる者はいるのか!って、いるわけないか。
おまけ END
第五話 合理化
最近とてつもなくだるい。アイスだって食べてるのに、気分がすぐれない。
自分がおかしいのかと思うほどに、体がかゆくなった。アイスをこっそり食べてるなんて、お母さんに話せないので秘密にしているが、さすがにお母さんに心配されてしまった。
なので、メールに起こってる症状を伝えた。すると、「申し訳ありませんが、それはアイスの食べ過ぎによるだるさと、体質的にアイスが駄目だったのではないでしょうか?しっかりと検査したうえでまたもう一度お送りください。」と帰ってきた。
私は、どうしようか、悩んでしまった。そこで、天才的な考えをひらめいた。アイスを溶かして、ミルクで割り、チェリーソフトクリームシェイクを作った。どうにもできないなら創意工夫で乗り越える。なんだ。これがよかったんだ。その特製シェイクを飲み干すと、体がいつもみたいに、痛くもかゆくもなくなった。
私は、そのシェイクが効かなくなっても、また工夫すればいいだろうと、検索をしながら、そのソフトクリームをアレンジしていった。
さあ、今日はどんなアレンジをしようかな?
第五話 END
第六話 現実逃避
なんだか最近、自分がおかしくなっている気がする。僕は、普通になるためにアイスを食べている。でも、なんだか最近、幻覚を見る頻度が多かったり、聞こえもしないものが聞こえてしまったり、扉の開く音や、僕の目の前で認識している物以外の音に反応するようになってしまった。僕は、そのたびにアイスを食べるが、食べるたびに、気が付かないうちにどこかへ立っていたりしていた。前なんて、学校の屋上たっていた。友達によると、死んだような目をしながら屋上へ行ったと。
僕は、普通になるために食べ始めたアイスを、やめようとしたが、ふとした瞬間に注文されていて、気が付けば幻覚が見えていた。そのせいで、僕はアイスをやめることができなくなっていた。でも、今までは行ったことがある、思い入れのある場所やみたことのある場所の幻覚だったが、最近は言ったことのない幻覚も見え始めた。この前なんか、知らない人の牧場に立っていて、気が付けば牛に囲まれていた幻覚を見た。頭がおかしくなっているのだろうか、最近学校で習ったことを、次の日には一ミリも頭に入っていないのだ。
僕は、また家に引きこもるようになってしまった。家の外に出ると何が起こるかわかったもんじゃない。前は学校の屋上に立っていたが、最近は危ないところにいることが増えた。外に出歩くことが不安になってしまったのだ。一番最悪だった場所は、赤信号の横断歩道に突っ立っていたのだ。幸いにも、運転手がクラクションを鳴らしてくれたおかげでなんとかその場はやり過ごした。次はどこへ行くかわからない。僕は、僕が僕じゃないことをしているのが分かる。だけど、自分にはどうしようもできない。前にあの匿名人物へメールを送ったが、丁寧に誤って、証拠提供をお願いという内容だった。僕は、自分で何とかしろという意味に思えた。
でも、悪いことだらけではなかった。お父さんが正気に戻ってくれたのだ。僕がひきこもり始めて一カ月が経過したころ、お父さんは自分のしたことを考えて、酒をやめていたようだった。お父さんは前の優しいお父さんに戻ってくれて、僕とも話してくれるようになった。
僕は、思い切ってお父さんに相談してみた。「お父さん。僕ね、最近変なものを聞いたり見たりするようになったんだ。前までは何とかなってたけど、最近悪化してて。僕、どうなっちゃうのかな。」お父さんにはアイスのことは話さなかった。お父さんは、一瞬考えて、はっとした表情を見せた。「明日、病院行くぞ。」お父さんは、深刻そうな表情をして僕に告げた。
次の日、僕はお父さんに連れられて、病院に行った。なんで行くのかわからなかったけど、とりあえずついていくことにした。
そして、病院での待合室で僕は言った。「お父さん。どうしたの?顔が少しこわばってるけど。」するとお父さんは「え?あ、ううん。何でもないよ。」そんなこんなで僕の順番がやってきた。
診察されると、「えーまこと君。最近変わったことはないかい?」と聞いてきました。「最近変なものを見るんです。後…」と話を続けようとしたら、お父さんがさえぎって、お医者さんに何かを耳打ちしました。
「分かりました。失礼ですが、ここからのお話はまこと君だけにするので、お父様は待合室でお待ちください。」と、お医者さんが言うと、お父さんは静かにうなずき、診療室を出ていった。「まこと君。まこと君は、”アイス”を食べているかい?」そういうので、「なんでわかったんですか⁉」と言った。「まこと君。もしこれから先、幻覚を見るようであれば、”アイス”に頼るんじゃなくて、お父さんに頼りなさい。いいね?」僕はうなずき、診療室をあとにした。
僕は、心のどこかに蓄積していたモヤモヤが、一気に消えていくのを感じた。やっぱりあのアイスはよくなかったんだろう。僕は、お父さんがなんて言ったのか、知る由もなかった。
第六話 END
おまけ 父の立場
俺は龍一郎(りゅういちろう)。まことの父親だ。まことが小さかった時に、俺の妻、まことの母を失った。そこからなんだろう。俺のせいで、まことは楽しい学校生活を送れず、酒に溺れた俺のそばにいた。俺は、引きこもり始めたまことの姿を見て、ふと思った。俺は、まことのために何をしたんだろうと。千佳子が死んでから、俺はずっとまことを非難し続けた。そんな俺に父親でいていい価値はあるのだろうか。俺は、そう思うと、罪悪感で胸がいっぱいになった。俺は、匿名のまことの部屋に置いてあった買ったアイスを一口食べてみた。まことは部屋から出ていなかったのに、どこからこれを買ったんだろうと気になってしまったからだ。そんな時だ。俺の舌が、とてつもない激痛に襲われた。俺はすぐ病院に行って検査をした。すると、「これ、覚醒剤ですね。それも高度な。」その一言で、俺は固まってしまった。まさかまことがこんなものを食べていただなんて。俺はまことの口から聞けることを信じて、放っておいた。だが、俺も一応父親だ。心配して、まことに聞こうとしたとき、「お父さん、実はね、」と、あのことを話してくれた。
俺はすぐにあのアイスのことだと気が付き、病院へ行くように言った。次の日、俺はまことの異変に気が付いた。昨日言ったばかりなのに、俺が病院へ行くと言ったのを、今日初めて聞いたと言わんばかりに、急いで準備したのだ。俺はスマホで検索してみた。すると、記憶を少しだけ失う可能性がある覚醒剤を見つけた。その名も、〈アイス〉だった。どうやら、これのせいでまことはおかしくなっているんだろうと思った。そのせいか、まことには心配される始末。俺は診察室でまことの今起きていることを、知っている限り医者に話した。俺は診察室を出てからも、落ち着けなかった。まことは一体どうなってしまうのかの不安で埋め尽くされた。でも俺はまことの父親だ。しっかりしないと。俺は、これから、千佳子の分まで、まことを大事にしようと、心に誓った。
おまけ END
第七話 とろける罠
私は、今までのアイスで十分だった。十分だったはずなのに、私の中にある欲が、アイスを買った。 ある日、いつものようにあのメニューを開くと、新商品が追加されていた。「とろけるもっちり触感!当店オリジナルアイス!」だ。私は、いつもみたいに財布から五百円玉を出したが、よく見ると、その新商品は、な、な、なんと、1,000円もするのだ!高い!五百円だけでも十分に高いのに。
私は、悩んで悩んで、まだ決まってもいないのに、財布の中の千円札に手を伸ばしていることが分かった。私は、自分がこれを食べたいのであろう。と感じ、欲に負けて買ってしまった。
私は、そのアイスを恐る恐る口へ運ぶと、 パクッ! 甘くっておいしい!私はそれを平らげた。私は、もう理性が完全に欲に支配されていることを、後悔するほど後に知った。
私は、満足した後、そこから数カ月は大丈夫だった。私は、値段が高い分、効き目が長続きするのだと思った。そう甘く見たのがいけなかった。
第七話 END
最終話1(みさき) すぐに崩れるワンダーランド
私は、そろそろアイスを買っといたほうがいいのかな。と思うようになった。だって、あれから一年が経過して、私は中学三年生になった。その間、私は一度もアイスを口にしてないのだ。痛みが来るときには前兆があった。痛みが来る一時間前は、視界がぼやけるのだ。
頭の中にはてなを思い浮かべ、頭を搔いた。すると、髪の毛がごっそり抜けたのだ。え?頬を触ると、ほっぺたが溶け出した。信じられない気持ちのまま、ベットから起き上がると、そこは私の部屋だった。ごっそり抜けたはずの髪も、溶け出した頬も、全部元通りになっていた。
私は、ここが現実であることを確認すると、急いで洗面台の鏡へ向かった。やっぱり変なところはない。おかしいなと思いつつ、また頭を掻くと、髪が抜けた。これは夢じゃない。現実だ。悲鳴を上げようをすると、自分の体にも異変が起きていた。ちゃんと立っていられず、へたり込んでしまった。「え?なに?どういうこと?」私はその時思った。この原因が、あのアイスによるものだったとしたら。私は後悔した。でも、後悔しても遅い。私の体が、徐々に溶け出しているのだ。おかあさん。おかあさん。どこ?私は、溶けた体を見て、何もできなくなった。
最終話 BUTTEND
最終話2(まこと) 家族
僕は、アイスを食べることをやめた。久しぶりに会話したお父さんの言うことを、僕自身が聞きたいからだ。でも、そのおかげで、少しの間はまだ幻覚が見えたが、それから先、僕はもう二度と幻覚を見ることがなくなった。僕は、アイスをやめた今でも、お父さんに感謝している。僕は、お父さんのおかげで、やっと本当の「普通」を手に入れることができた。
---それから数年が経過し、僕は大人になった。大人になった今でも、あのアイスのことをたびたび思い出す。そんなある日、気になるニュースを目にした。
「では、本日のニュースをお伝えいたします。最近、若い子供を狙った殺人が多発しています。その被害者であるM氏の母親から話を伺いました。」というものだった。僕は、そのニュースに目が釘付けになった。
「私の娘は、昔いじめられていて、引きこもるようになってしまったんです。ある日突然部屋を出てきたと思ったら、学校に行って帰ってくるたび、部屋に行っては何かをしていました。それを放って置いたのがいけなかったんです。ある日、あの子が部屋にいたと思うと、いきなり部屋を飛び出したんです。様子を見ていると、頭を抱えながら嗚咽し始めたの。私がすぐに止めに入ったけれど、私のことが見えていないみたいで、『お母さん』って言いながら涙を流して…。」そこでインタビューは終わった。僕は、僕とは違う形で苦しむ子もいたんだな、と思うと、心が苦しかった。
「このM氏以外にも、同じ最期を迎えた家庭も多くあるそうで、その数100人を超えています。」アナウンサーは淡々と告げる。「さらに、どの親御さんも、『引きこもっていた』『心が弱かった』などと証言しています。どのお子さんのスマホにも、謎の匿名の人物からのメールが届いていたということが分かっています。現在、警察は、この匿名の人物の捜索にあたっています。どのメールの内容も似ている文書ということから、同組織の犯行だと思われています。」ここでこのニュースは終わった。僕と同じだ…。
他のニュース番組を見ると、「子供のゴミ箱には、アイスの箱が大量に捨てられていた。」などと言われていた。僕がもらったアイスの箱と同じものだ。
僕は、静かにテレビを消し、亡くなった大勢の子供たちのために黙祷をした。
最終話 HAPPYEND?
このお話はいかがだっただろうか。みさきは残念だが、助からなかったうちの一人です。いまだ現在、匿名の人物は捕まっていません。メルトは、溶けるという意味。みさきは、とろけるアイスの誘惑に勝てなかった。匿名人物は、弱い心に溶け込んで、じわじわと溶かしていく。そういうやつらだ。本作に出て来る「覚醒剤」という危ないワード。裏のものが言った”アレ”。読者のみんなはそれが何か気になるだろう。例えば、「麻薬」の中に、「チョコ」という隠語があるそうだ。それと同じく、スタッフたちは、”アイス”という隠語を使用し、連続殺人を犯したのだ。僕には、それをやる意味が解らない。僕は、これからも、こうして悩み続けるのだろうか。
END(ナレーター:狼崎まこと)
(追伸:ちなみに、このお話のナレーターは二人います!わかった方はコメントよろしくお願いします!)