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メズマライザー
(このお話は、前作の「メルト・アイスクリーム」同様、交互にキャラクターが出てきます。今回の場合、ミラとテルが交互になります。)
◇目が覚めた。ここはどこだ?
そこは、緑でいっぱいの草原だった。あたりにはだれもいない。私はさっきまで…いや、考えるのはやめよう。頭が痛い。私は起き上がり、前に向かって歩きだした。
登場人物
・霧島 ミラ(きりしま みら):高校生ぐらいの女の子。最初はちょっと気の弱い子だったが、後からだんだんテルに心を開き、明るい子になる。でも、明るくなるにつれ、現実が見られなくなっていく。
・秋山 テル(あきやま てる):年齢不明(本人が隠してる)の性別がない、特殊な存在。でも、一応人間なので、喜怒哀楽はある。ミラにとって、テルはお姉さん的存在。でも、現実を受け入れなくなったミラが狂っていくのを見るのがつらくなってきて…
・??:このお話の黒幕的存在。今はまだ名前すらわからないが、お話の中で、いつか名前が明かされる。
第一話 ここはどこ?
私の名前は霧島ミラ。ついさっき、知らない場所で目が覚め、じっとしてても何も起きないから、とりあえず奥へ奥へと歩いているの。今歩いてずいぶん経ったと思うけど、ほんと、何もないところだなぁ。そう思いながら先へ進んでいると、奥に、赤い壁がたっていることに気付いた。
私はそこめがけて走り、到着した。じっくり観察したが、それはただの壁でしかなかった。右へ行くと、何もないが、透明な壁のようなもののせいで奥へ行けない。左へ行くと、右と同じで、透明な壁のようなもののせいで奥へは行けなかった。私は、ここに来るまで、ずっと歩きっぱなしなので、少し休むことにした。
はっとして目が覚めた。そこはさっきと変わらない、緑が続く、何もない草原だった。私は立ち上がり、周囲の確認をした。右左、前、そして後ろを向くとき、私の目に、あるものが映った。人だ。人がこっちへめがけて歩いてきている。私は、ここへ来て初めての人に出会えた。とりあえず、その人が来るまで、もう一休みした。
第1話 END
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第2話 はじめまして!
私の名前は秋山テル。ある日、突然ここで目を覚まして、今に至るまでずっとずっと歩き続けてた。この草しかない、まっさらな草原で。ある日、くたくたになりながらいつもの赤い壁へ歩いていると、なにかが見えた。あれは何だ?目を凝らし、少しずつ近づき、その時になってようやくわかった。人だ。人がいる。あの何もない空間に、人がいたのだ。私は、うれしさのあまり、歩くスピードが速くなっていく。
ようやく壁までたどり着き、息を整えながら、さっき見た人影を探した。いない。あれは幻覚だったのか…。その時、赤い壁の向こうから、黒い髪のようなものが見えた。やっぱりいた。
フゴッ!
今すごい音がした。その髪がいるところだ。耳を澄ませれば、かすかに寝息が聞こえる。寝ているのだろうか。私も、あの向こうにいる人が起きるまで、少し休むことにした。
後ろから何か物音がして起きた。いつの間にか眠っていたようだ。ふと振り向くと、私が見た髪と同じさらっとした髪が、目の前にさっと現れた。その人は、身長は大体高校生ぐらいで、性別は女…だな。見た感じ、ここへは初めて来たようだ。彼女はこちらに気付いていないようだったので、声をかけてみた。
テル「えっと、あのーー…」
彼女は驚いた様子で振り向いた。「いつからそこにいたの⁉」と言わんばかりの表情で。私は、
テル「ここに来たの、初めて?」
と、優しく聞いてみた。
ミラ「は、はい。あなたは…?」
テル「あ、私?私の名前は秋山テル。テルって呼んでね。あなたは?」
ミラ「私は、えっと、霧島ミラ。ミラで、いいよ。」
そんなこんなで自己紹介を済ませ、私たちは、見えない壁を間に、雑談することにした。
時は過ぎ、いつの間にか、ずいぶん時間がたっていた。私たちは、壁にもたれながら、眠りについた。
第二話 END
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第三話 ドレスアップ
私とテルさんは、結構仲良くなった。最近は、”歌う”という趣味が合致して、一緒に歌って踊るようになった。そんな時だった。あの何もない、物音ひとつしないこの空間に、突如としてBGMが流れ出した。私たちは混乱した。でも、だんだんリズムに乗って体が動き、隣にいるテルさんも、楽しそうに体を上下にゆらしていた。そして、気が付いた時には、私とテルさんは、リズムに合わせて踊っていた。まぁ、こういうのも、たまには悪くないかもしれない。
BGMもなりやみ、私たちは我に返って、動きを止めた。あれは何だったのだろうという疑問と、少し残念な気がする。私たちは、あれは何だったのか、少し話をした後、踊って疲れたのか、すぐに眠ってしまった。
--- パキン ---
物音がして目が覚めた。テルさんか?と、横を見るも、テルさんはスースー気持ちよさそうに眠っている。それに、なにかを踏むにしたって、ここには草と空以外、ほとんど石すらないからな。(地面はある)私は、不思議に思いながら、床に寝転んだ。
それから数時間もたたないうちに目が覚めてしまった。何もないところと言ってもさすがに太陽はあった。いや、あれはライト…なわけはない。変なことは考えないようにしよう。とにかく、まぶしすぎて眠ることができにくい。テルさんは私が影になっていたから眠れたのだろうか。いいなぁ。
そんなことを考えていると、またあのBGMが流れ出した。いつ聞いても飽きない、ポップで、早いリズムのあのBGMだ。テルさんはBGMに気付き、起き上がった。その時、私とテルさんは、お互いが見えないあの赤い壁の、ちょうど真ん中で体が止まった。なぜ?私は、戻ろうと必死に足を動かす。いや、動かそうとした。
ミラ(何これ⁉体が…!動か…ない!)
しゃべったつもりが、BGMのせいで何言ってるのか自分でもわからない。私は混乱し、何もすることができなかった。その時、目の中に激痛が走る。
ミラ(いいい⁉いっ、いっ、いっったぁぁぁぁぁ!なぁ、何これ、泣きたいのに涙も出ない!)
激痛が収まると、いまさらだが、真っ白なワンピースだった服が、だんだんと色づいていき、気づけば一つの立派な衣装になっていた。青と白のストライプのスカートと首を触れば何かがある。チョーカーなのか?なんだか、私から見える服の感じだと、レトロなウェイトレス風の服になっている。
気がする…。
ハッとして気が付く。体が動くではないか。急いでテルさんの様子を見るべく、テルさんが見える透明な壁のところへ向かい、テルさんを探した。テルさんも、私と同じように固まっている。
ピクリとも動かない…。その時、透明な壁に反射して映る自分の姿を見て驚愕した。
--- 誰? ---
この一言だけを残して、私は反射する自分をじっと見つめた。
自慢の茶色い髪は、水色に染められ、黒かった目は、水色に染まり、中には星が描かれていた。そして、私のお気に入りだったヘアゴムも、別のアクセサリーに置き換えられている。信じられない気持ちで、まさかとテルさんを見ると、テルさんのあの綺麗なロングヘア―が、ツインテールではない、よくわからない髪形になっていた。それに、上から、いや、全体から染みるように、髪が黒から赤へと変わっていった。さらに驚くべきことは、あの真っ白だった長袖長ズボンは、まず体中?に線が引かれ、それを塗りつぶすかのように白が、いろんな色へと着色されていった。結果、私とはちょっと違うが、似たような雰囲気の服が出来上がった。
解放されたのか、テルさんはその場に座り込むと、自分の体を見て、こちらに気付くと近寄って、お互いを見つめあった。
第三話 END
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第四話 強制プログラム
「ねえ、テルちゃん!見て見て、この衣装、動くとフリルがひらひらしてとっても可愛いの!」
見えない壁の向こうで、ミラが満面の笑みを浮かべてステップを踏んでいる。
あのドレスアップの日から、ここには定期的にあのポップなBGMが鳴り響くようになった。そして曲が流れるたび、私たちは自分の意思とは関係なく、操り人形のように完璧なダンスを踊らされるのだ。
最初はあれほど怯えていたミラが、今は嘘のように明るい。
水色に染まった彼女の瞳には、きらきらとした星のマークが浮かんでいる。だけど、その瞳は私の姿を映しているようで、どこか遠くの虚無を見つめているようでもあった。
「……うん、本当によく似合ってるよ、ミラ」
私は引きつりそうになる頬を必死に持ち上げ、いつもの「お姉さん」としての笑顔を作った。
胸の奥が、雑巾を絞られるように苦しい。
ミラは|現実《ここが異常な空間であること》を見るのをやめてしまったのだ。
そうしなければ、あのドレスアップの時に脳へ直接流し込まれた「激痛」と「恐怖」に耐えられなかったのだろう。心を防衛するために、彼女はこの狂ったステージを「楽しいもの」だと思い込むことにしたのだ。
(だけど、私は気づいている)
自分の真っ赤に染まった髪の毛を指先で弄りながら、私は周囲の「異変」に目を向けた。
ただの草原だと思っていたこの場所のあちこちに、最近、妙なノイズが混ざる。空が一瞬だけテレビの砂嵐のようになったり、地面の草がデジタル数字の羅列に見えたりするのだ。
何かがおかしい。私たちは誰かに監視され、操られている。
そう確信した瞬間、頭の奥でパチパチと電子音が弾けた。
『──定時プログラム、起動。対象、被検体ミラ、被検体テル──』
冷酷な、感情の籠もっていない「誰か」の声が脳内に直接響く。
名前すらわからない、姿も見えないその存在。この世界のシステムを裏で牛耳っている、絶対的な支配者──「それ」の気配を感じた瞬間、私の背中に冷たい汗が伝った。
テレレレレ、とあの軽快な前奏が鳴り響く。
「あ、また始まった!テルちゃん、一緒に踊ろう!」
ミラが嬉しそうに声をあげる。
(だめだ、踊っちゃだめだ、抗わなきゃ……!)
心の中でどれだけ叫んでも、私の体は裏切りのように軽やかに動き出す。
指先が勝手に動き、口元は自動的に完璧な笑顔の形に固定された。自分の意思が、上書きされていく。
見えない壁の向こうで、ミラが楽しそうに、本当に幸せそうにクルリと回った。
それを見るのが、たまらなくつらかった。私はニセモノの笑顔を貼り付けたまま、心の中で激しく涙を流した。
第四話 END
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第五話 まやかしのハッピー
「ハイ!ハイ!ワン・ツー・スリー!」
ポップで、早くて、最高にエキサイティングなBGMが頭の中に響き渡る。
私はリズムに合わせて、完璧なステップを踏んでいた。水色のフリルスカートがひらひらと舞って、まるで自分がどこかのアイドルのステージに立っているみたい!
ここに来たばかりの時は、何もない草原に怯えて、泣きそうになっていたっけ。
でも、そんなのもう忘れちゃった。だって、お姉さんみたいに優しいテルちゃんが隣にいてくれるし、こんなに可愛いお洋服を着て、毎日楽しく踊っていられるんだもん。ここがどこかなんて、もうどうでもいい。考えたって頭が痛くなるだけだし、楽しいことだけを見ていれば、ずーっとハッピーでいられるんだから!
「ねえ、テルちゃん!今日もすっごく楽しいね!」
見えない赤い壁の向こうにいるテルちゃんに向かって、私はとびきりの笑顔で手を振った。
テルちゃんも、赤色と黒色の可愛い衣装を着て、私と同じステップを踏んでいる。
……でも、なんだか不思議。テルちゃん、楽しそうなダンスをしているのに、なんだか顔がすごく強張っているように見える。私を見るその瞳が、今にも泣き出しそうに揺れているのは、どうしてなんだろう?
(……あれ?)
その時、頭の奥が、ちく、と刺すように痛んだ。
それと同時に、自分でも思いもよらない「感覚」が、指先から這い上がってくる。
(たす、けて)
「──え?」
今、誰の声が聞こえたの?自分の頭の中で、私の声によく似た、でも、私よりもずっと擦り切れたような小さな声が響いた気がした。
楽しすぎて、頭がフワフワして、現実なんてどうでもいいはずなのに。
なぜか私の左手は、ダンスの振付とはまったく違う、奇妙な動きを勝手に繰り返している。
親指を内側に折り込んで、残りの4本の指でそれを包み込むように、ギュッと握る。
パッと開いて、また、親指を隠すように握りしめる。
(たすけて。ここから出して。苦しい。頭が、おかしくなっちゃう──)
そんなわけないじゃん!私は今、こんなに幸せなのに!
早く楽しいダンスに戻らなきゃ。もっと笑顔を作らなきゃ!
でも、私の左手は私の意志を裏切って、何度も何度も、そのハンドサインを繰り返す。壁の向こうのテルちゃんに向けて、必死にメッセージを送るように。
「アハハ!見て見てテルちゃん、このステップ難しーい!」
私は声を張り上げて、頭の中の不協和音をかき消した。
水色の、星が描かれた瞳から、一滴の涙がポロリとこぼれ落ちる。
だけど私の口元は、まるで糊で貼り付けられたみたいに、綺麗な三日月の形のままビクとも動かなかった。
第五話 END
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第六話 システムエラー
「アハハ!見て見てテルちゃん、このステップ難しーい!」
見えない壁の向こうで、ミラが声を張り上げて笑っている。
その水色の瞳からは、一滴の涙が頬を伝って流れ落ちていた。なのに、彼女の口元は歪なほどに綺麗な笑顔のまま固定されている。
その異常な光景に、私の心臓はドクドクと激しく脈打った。
そして、私は見てしまった。楽しげに激しく振られるミラの左手。その指先が、ダンスの振付とは明らかに違う、奇妙な動きを繰り返しているのを。
親指を内側に折り込み、他の指でそれを包み込むように強く握りしめる。そしてまた、パッと開く。
(──ハンドサイン。……SOSだ)
それは、誰にも気づかれないように助けを求めるための、決死のサインだった。
ミラは「楽しい」なんて思っていない。彼女の心は、もうとっくに限界を迎えていて、深層心理の彼女が必死に私へ「助けて」と叫んでいるのだ。
「ミラ……! 動くのをやめて! 聞こえる!? 耳を塞いで──」
叫ぼうとした瞬間、私の喉がガチリとロックされた。声が出ない。
それどころか、私の右手はミラのSOSを嘲笑うかのように、彼女の頭をピストルで撃ち抜くようなジェスチャーを勝手に取り始めた。
止めたい。なのに、体が言うことを聞かない。システムが、私にミラを絶望させるための|役《ロール》を強制している。
(お願い、やめて……! ミラを、私を、もう解放して……!)
心の中で血を吐くように叫んだその時、
ピリピリ、と世界が裂けるような強烈なノイズが響き、BGMがブツリと途切れた。
辺りが一瞬で暗転する。
緑の草原も、見えない赤い壁も消え、私たちは真っ黒な空間に放り出されていた。体が動く。私はすぐにミラの元へ駆け寄ろうとした。
「よく気づいたね、秋山テル」
頭上から、パチパチと拍手をするような音が聞こえた。
冷たくて、底意地が悪くて、私たちのことなんてただのオモチャとしか思っていないような、少女の声。
「……誰、だ」
私が声を絞り出すと、暗闇の奥から、ゆらりと一つの影が姿を現した。
その姿は、私たちとよく似た「衣装」を身にまとっていた。
だけど、彼女の瞳には星もハイライトもなく、ただ灰色に濁っている。この歪んだ世界を作り出し、私たちを閉じ込めて踊らせている
**張本人**。
「私の名前は、エル」
エルはクスクスと、壊れた機械のように不気味に笑った。
「現実なんて見たら、絶望して失明しちゃうよ? だから私は、あの子に最高にハッピーな夢を見せてあげてるの。それなのに、余計な気づきはバグの元なんだよねぇ」
エルの指先が、スッと私に向けられる。
「定時プログラム、再起動。バグの発生源(テル)の感情出力を──
強制シャットダウン」
「あ、が……っ!?」
脳を直接ハンマーで殴られたような、凄まじい衝撃が突き抜けた。
思考が真っ白に染まっていく。ミラのために泣くことも、絶望することも、すべての感情が冷たいデジタルデータに上書きされて消えていく。
「テル、ちゃん……?」
不安そうに私を呼ぶミラの声が、だんだんと遠くなっていくのを、私は止めることができなかった。
第六話 END
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第七話 メズマライザー(テル視点から)
……あぁ、何も感じない。悲しいとか、つらいとか、ミラを助けたいとか。さっきまで私の心を埋め尽くしていた感情が、すっかり消えてなくなってしまった。
私の口元は、完璧な笑顔の形に固定されている。
隣を見れば、黒幕であるエルが満足そうに微笑みながら、指をパチンと鳴らした。
「それじゃあ、最後の仕上げ。二人とも、仲良くおやすみ」
エルの声と共に、聞き慣れたあのポップなBGMが、今までで一番の大音量で鳴り響き出す。
私たちの足元に、再びあの鮮やかな緑の草原が広がっていく。
だけどそれは本物の自然なんかじゃない。ただの偽物の、デジタルで作られたステージだ。
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テーレッテレー!と、大好きなBGMが鳴り響く。
暗闇はいつの間にか消えて、また元の広い草原に戻っていた。
「あはは!やっぱりここが一番落ち着くね、テルちゃん!」
私は楽しそうにステップを踏む。
隣にいるテルちゃんを見ると、いつの間にか可愛い赤と黒の衣装に戻っていて、私に向かって完璧な笑顔を浮かべていた。さっきまで泣きそうな顔をしていた気がするけど……うん、気のせいだよね!
楽しいことだけ考えていよう!
現実なんて見すぎたら、眩しくて失明しちゃう。
だから、このままでいいの。ずーっと、ずーっと、こうして踊っていよう。
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操られるまま、私はミラの隣で激しく踊る。
もう心は何も感じていないはずなのに、私の脳裏に、なぜか全く知らないはずの記憶がチラついた。
それが何なのか、考えるだけの知性はもう残されていない。
エルの操り糸に引かれるまま、私たちは笑顔で踊り続ける。ミラの瞳の星が、チカチカと狂ったように点滅していた。
世界のノイズが、限界まで大きくなる。
視界がバグで真っ白に染まっていく。
私たちの限界を察したエルの、冷たい声が最後に聞こえた。
「──エラー蓄積を確認。世界システムを初期化(リセット)します──」
パチン、と大きな音がして、
私たちの意識は、今度こそ完全に、深い闇の底へとシャットダウンされた。
第七話 END
◇
最後まで読んでくれてありがとう!みんな、気づいたかなー。最終話の◇まで行ったら、前書きの◇まで行くんです。そしたらあら不思議。ループします!ぜひそこも見てください!