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♯2 見失う
|亜和《あお》は、母が苦手だ。
いつも期待されている。
良い成績を取ったらとても褒めてくれた。
あまり良くない成績のとき、決まって母は言う。
『もっと頑張って』
『亜和ちゃんならできるでしょう?そうよね?』
『亜和ちゃんのためを思って言っているの』
亜和は、母が苦手だ。
そんな母と、今対面している。
『苦痛』という言葉が一番に思い浮かぶ。
「ねぇ、亜和ちゃん。聞いているの?」
無言で亜和はうなずく。
ただ、それが母の|癇《かん》に|障《さわ》ったらしい。
「もっと頑張りなさいって言ってるでしょう?亜和ちゃんならできるはずよ?ねぇ、今回手をぬいたんじゃない?」
問い詰めるような言い草だ。
「手なんてぬいてないよ」
そこは苦手なとこだから。他で巻き返せば、余裕で5は取れる。
**なのに。**
自分の成績のことは、自分が一番よく分かっている。
どう成績を取れば良いのかも。
どう言えば、どう書けば、先生の信頼が厚くなるのかも。
分かってる。
どう言えば、母の機嫌をそこねないのかも……分かってる。
「手をぬいてないって言うけど、そういうちょっとしたことが積み重なって…成績が落ちていくのよ」
**母さんに、何が分かるの?**
その日は、母の都合があってそれだけで終わった。
---
亜和は、通学路を歩いていた。
その足どりは、重い。
「あ。亜和━━━━━!!」
唐突に、大声で名前を呼ばれた。
ガッと肩を組まれる。
彼女は、|小淵 希乃《こぶち のの》。
「よっ、元気?」
希乃は必ず「元気?」から入る。
「うん、元気。おはよう」
取り繕った、本心を悟られない笑顔をした。
「……おはよう」
少し間があってから希乃が返す。
希乃には、全て見透かされているみたいな気がする。
「良い天気だねぇ…」
よくある会話に困ったときに出すネタ。
でも、希乃が言うととても自然に聞こえる。
本心から、言っているからだ。
私とは違って。
何もかも、私と違う。
ああ、嫌になるな。
こんなことを思っている自分が。
羨ましい、と。
悔しい、と。
なぜ、私にできなくて希乃にはできるのか、と。
考えてしまう自分が、心底嫌いだ。
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体育の授業はバスケだった。
亜和は、運動ができない。わけではなく、むしろ運動神経は良い方だった。
適当にパスを受けて、
適当に上手い人にわたす。
それだけでも、動きはデキる人っぽかったし、どこにパスをすればよいかという空間把握もなかなかにできていた。
いつもと同じように、パスを受けようとした。
一瞬、視界がぼやけた。
次の瞬間には、もう床が目の前にあった。
遠くなる意識のなか、クラスメイトたちが必死に私の名前を呼んでいた。気がする。
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原因は、『ストレス』と『疲労』だった。
体に、疲れがたまっているような感覚は全くと言っていいほどなかったのだが。
でも、自覚がなくても疲れというのはたまっていくものらしい。
ただ、私が自覚していないだけ。
ストレスは、心当たりがないわけではないけど。
そんなわけで、亜和は入院することとなった。
夕方、母は仕事の都合で見舞いにこれなくなった、と連絡が入った。
娘が倒れたのに、『仕事』?
信じられない。
意味がわからない。
ふざけるな。
私は、母さんのせいで。
倒れたんだぞ。
日々、母の言葉、態度にどれだけストレスを与えられているか。
は、もう。
**嫌だ。**
熱はすぐにさめた。
こんな行き場のない怒り。
ただ、虚しくなるだけだった。
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病院には、亜和だけがいた。
亜和は、本を読む手を止めて窓の外、星空を見ていた。
**あれ、私って何してんだろう。**
**私って、何になりたいんだろう。**
**何が、好きなんだろう。**
**あれ、私は、**
**何がしたかったんだっけ?**
**どんな人になりたかったんだっけ?**
**あれ、**
**私、は。**
**あ、**
**今、一番、人生どうでもいいかも。**
死にたい。
でも、痛いのは嫌。
だから、そう。
**消えたい。**
お久しぶりです、「雨に叫ぶ。」です。
長らくお待たせしました!
なんだかんだ言って、一番最初に作ったシリーズなんですよね笑
一番進んでいないシリーズでもあり、一番完結に近いシリーズでもあります笑
なんか、いろいろ矛盾してますけど気にしないでください。
一番、本文とあとがきの温度差が激しいやつかもしれないですね。
内容が内容で、ちょっとネガティブ強めだったりするので書きづらいのはあります。
一応、テーマが「悩み」なので。
今回、ちょっとネガティブ強めでしたかね。
次回は、今回ほどではない…かも…?
ここまで読んでいただきありがとうございました!よければファンレターなど送っていただけると嬉しいです!