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♯1 本音を隠す
「良いよ」
ぎこちなさを悟られない笑顔で少女は笑った。
彩宮 亜和は、「優等生」である。成績優秀。
人当たりが良く、頼まれごとをされやすい。
そんな亜和は、本音を隠すのが上手い。つまりは、自分を押し殺して他人を優先する。
彼女はそんな人であった。
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窓から夏の青空が見える。あの、夏の雲。
まるで、私を嘲笑うような透き通った青空。
ついさっき亜和に掃除の代わりを頼んだ女子生徒は、笑顔で友達に駆け寄っていた。
「…だる」
亜和は短く毒を吐いた。
口に出したとて変わらない。断らない、断れない自分が悪い。
あんな風に誰かに頼れたら良いことか。
断られたらいいことか。
いつも、いつも、いつも、いつも、いつも。
『お願い』『良いよ』
『頼んだ』『しょうがないな』
『あ、私がやっとくよ』
いつも、いつも、いつも、いつも、いつも。
断れない。頼れない。
無駄に自分から首を突っ込む。
失望させたくない。失望されたくない。
期待されたい。でもプレッシャーをかけるのはやめてほしい。良い子ちゃんでいなきゃ。
嫌われたくない。傷付きたくない。
誰かに頼るということは、こんなに難しかっただろうか。
つくづく、そう思う。
亜和は、静かな教室を見渡す。
「…滑稽だな」
自分を鼻で笑うように、つぶやいた。
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一人、帰り道を歩く。
一歩踏み出すたびに、泥沼にズブズブと入り込んでいるように、足が重い。
一人になるといつも考えてしまう。
私は何がしたいのか。何になりたいのか。
分からない。分からない。分かろうとする手段もない。
ズブズブ、ズブズブ。
私に生きる意味なんてあるのか。どうすればいいのだろう。
いっそ、死んでしまおうか。でも、痛いのはやだな。
ズブズブ、ズブズブ。
泥沼に首までつかったとき。
「…亜和ちゃん?」
突然、声をかけられた。母だった。
「…母さん」
「どうしたの?ドアの前に突っ立って。早くはいりましょう?」
「…うん」
私は、母が苦手だ。
名前の読み方載せときます!
彩宮 亜和→あやみや あお