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第2話
第2話です!相変わらず長いんですけど許してください笑
2020と書かれたカレンダーの四月と五月のページは、バツ印だらけだった。お外で悪いウイルスが流行っているから、学校はずっとお休み。普段はちょっと弱虫な私だけど、これだけ長い間お家の中にいると、さすがにつまんなくなってくる。テレビをつけても、ニュースのおじさんが怖い顔をして「ウイルスの感染者が……」とお話ししているばかりで、全然おもしろくない。お家の中でできる遊びは、もう全部やっちゃった。 お気に入りの絵本は何回も読み返しちゃったし、お母さんとやったトランプも、私が負けてばっかりで途中で泣いちゃったからもう終わり。「お母さん、学校いつから始まるの?」リビングでパソコンをパチパチ叩いてお仕事をしているお母さんの背中に、私は何回目か分からない質問をぶつけてみた。「もうすぐ始まるって、学校からメールが来たよ。つむぎ、やっと二年生になれるね」「本当!? やったぁ!」 私は嬉しくて、ソファーの上でぴょんぴょん跳ねた。やっと二年生の教室に行ける。新しい教科書ももらえる。何より、大好きなゆいちゃんにまた会えるんだ。私は急いでお部屋に戻って、まだ一回も使っていない二年生のノートをランドセルに詰め込んだ。学校が始まったら、ゆいちゃんと手を繋いで、校庭のジャングルジムまでどっちが早いか競争するんだ。 お家の窓から見えるあおぞらを見上げながら、私はワクワクして、胸を小さく弾ませていた。
待ちに待った、学校が再開する日。「お母さん、行ってきます!」 私は新しい二年生の教科書を詰めたランドセルを背負って、元気よくお家を飛び出した。 お日さまがピカピカ光っていて、風がとっても気持ちいい。「やっとみんなに会える!」と思うと嬉しくて、私の足は自然とトコトコ走り出していた。 だけど、久しぶりにくぐった小学校の校門の先は、私の知っている大好きな学校とは少し違っていた。 校舎の入り口に、見たこともない白いテントが立っている。「はーい、みんな一列に並んでね。おでこをピッとしますよ」 先生たちが真面目な顔をして、手に持った小さな機械で私たちの体温を測っていた。お熱があるとお部屋に入れないみたいで、なんだか病院にいるみたいに緊張しちゃう。 無事にお部屋に入って、もっとびっくりした。 すれ違う友達が、みんなお口に白い四角いマスクをつけていた。「つむぎちゃん、おはよ!」 声をかけてくれたのは、二年生でも同じクラスになれたゆいちゃんだった。 でも、ゆいちゃんのお口にも、やっぱり真っ白なマスクがついている。見えるのは目元だけで、あの大好きだったにこにこの笑顔が半分隠れちゃっていて、なんだかいつもと違う感じがしてドキドキした。「みんな、席は離して座ってね。お友達の机とおしゃべりしちゃダメですよ」 新しく担任になった先生が、黒板の前で大きく手を振っている。 小1の時は、机をくっつけてみんなでおしゃべりできたのに、机はみんな離れ離れ。 学校中が、ツンとする消毒液の匂いでいっぱいだった。「つむぎちゃん、お熱大丈夫だった?」 ゆいちゃんが話しかけてくれたけど、マスクのせいか、声が少しこもって聞こえる。私もお家からつけてきたピンク色のマスクの手触りを確かめながら、「うん、大丈夫だった」と小さくお返事をした。 学校は始まったけれど、何だか私の知っている学校じゃないみたい。 マスクの奥で小さく息を吸い込みながら、私は少しだけ不安な気持ちで自分の席に座った。学校は始まったけれど、悲しいお知らせはそれだけじゃなかった。「みんな、静かに聞いてね」 先生が黒板の前に立って、少し困ったような顔でお話しを始めた。「今年の遠足と運動会は、コロナのせいでなくなりました。みんなの安全のためだから、我慢してくださいね」「えーーーっ!」 教室の中が一斉に、がっかりした声でいっぱいになった。もちろん、私もその中の一人だった。一年生のとき、みんなでリュックを背負って歩いた遠足や、お外でお弁当を食べた運動会がすっごく楽しかったから、胸がキュッと切なくなる。 音楽の時間になっても、「みんなで大きな声で歌をうたっちゃダメです」と言われて、大好きな鍵盤ハーモニカも吹けなくなってしまった。学校から楽しい音がどんどん消えていって、ただ教科書のCDをじっと聴くだけの時間が増えていった。 そして、一番楽しみだった給食の時間が、一番静かな時間になってしまった。「今日から『もくしょく』をします。おしゃべりは絶対にしないで、前を向いて静かに食べてください」机をみんなで四角く合わせちゃダメで、前を向いたまま、一言もおしゃべりしないで食べる新しいルール。おしゃべりしたら先生に怒られちゃうから、私は真面目に、じっとスプーンを口に運んだ。 いつもなら「これおいしいね!」ってゆいちゃんと言い合えるのに、教室の中にはカチャカチャという食器の音しか聞こえない。 マスクを外した開放感から、後ろの席の男の子たちが、ニヤニヤしながらわざと大きな声を出して笑ったり、立ち歩いたりしているのが見えた。先生が「静かに食べようね」って注意しているけれど、なんだか全然すっきりしない。 大好きなお給食のはずなのに、なんだかいつもよりおいしくないな、って思った。 楽しいことが全部ダメになっちゃって、今の学校は、ただお勉強をするだけの場所みたい。 早くコロナが終わって、前みたいにゆいちゃんと手を繋いで大笑いできる日が来ないかな。 私はマスクの下で、小さく、ばれないようにため息をついた。
どうでしたか?次は来週の土曜日公開を予定してます!