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死んでしまったのだろうか 1
Guiano様の「死んでしまったのだろうか」曲パロ、第一話です。
第一話、第二話とかにすると私が80%続き書かないから今までやらなかったんですけど、今回は2番入れちゃうと一万文字とかいっちゃいそうなので。
「君が、生きているかどうか?」
僕の馬鹿げた質問に、君は笑って答える。
「……あははっ、どうだろうね?昔っからの死んだ魚の目には変わりはないよ」
「そんなこと言ったら、君も充分目が死んでいるだろ」
そうかなあ?そう言いながら、口元に笑みを浮かべる君。
《《口元》》、に。
ずっとずっと、彼女と出会った頃から変わらず。
その目は、全く感情を灯していなかった。
「……なあ。僕達って、生きているのかな」
「私に聞いて、答えが返ってくるとでも?」
相変わらずな彼女の言葉に、僕は苦笑する。
「じゃあ今から言うことは、全部僕の独り言だと思って聞いて」
空には微かな光を帯びた月が昇っていた。もう冬なのかな、なんて。わかりきったことを。
「……きっと、僕は死んでしまったんだなって」
「うん、そう思うなら死んでるんだろうね。答え、私に聞くまでもなかったじゃん」
「さっき全部独り言だったって言ったじゃねえかよ」
「うん。案外面白そうだったから、独り言から会話に格上げしてあげるよ」
「……勝手にしろ」
「なにを食べても味がしないな、って」
「え、逆に聞くけど今まで味してたの?」
食事なんて、物体を体内に取り込むだけの作業でしょ?当然のように、首を傾げる。
「言い方どうにかできねえのかよ」
「だって、そうじゃん。味とかどうでもいい。ただ、生き延びるために物を詰め込むだけ」
「……よくここまで生きてきたね」
「うん。あんなんでも私の親らしいから、食料は与えてくれる」
彼女は、まるで今日の天気を話すように虐待について触れる。
小さい頃から、それが彼女の当たり前だったからなのか。だから、なにも思っていないからなのか。
僕には分からない。それも、これからずっと、一生だろうなって思った。
「母親の愛をまるで感じないんだ」
「母親の愛、ね……そんなもの、あったのかな」
「どうだろうな」
2人で並んで歩く。交わされる言葉は、ごく少ない。
「私、こっちだから」
「ああ。また明日」
*
流れる雲を眺め思い出す。
気づいたら、もう中学生ではなくて。
気づいたら、照りつける太陽が存在を主張していて。
気づいたら、葉が散り始めて。
このまま、なんとなく季節が過ぎていってなんとなく死んでいくんだろうな、と考えて。
季節に置いてきぼりな僕の心。
「……心?」
心、
心、
--- 心。 ---
そんなもの、僕にはあったんだろうか。
「……わかんねえ、な」
からっぽな胸を張れる訳もなく。
*
「君とこうやって帰ってきて、もう随分たつよね」
「ああ。……5、6年くらい?」
「うん、小5あたりからだもんね」
僕が住む地域は、年々少子高齢化が進んでいている。元々田舎だったのも災いして、今では同学年のやつらは20人弱という始末だ。
「その5、6年の中で、君は僕の名前を一度も呼んでくれたことがないな」
「あれ、呼んでほしいの?私、ツンデレはあんまり好みじゃないよ?ど直球のほうがタイプなんだけど」
わざとらしく眉間に皺を寄せると、「あはは、ごめんって」と返される。
「僕達が大人になったら、どうなるんだろうね」
「……大人になったら、か。君が突然棋士になった未来までは見えたよ」
「…………ごめん、突拍子もなさすぎてツッコミが追いつかなかった」
「あれ、君にはそんな未来、見えなかった?」
ふざけ合いながら帰るこの日々は、いつまで続くんだろうなと考えた。
終わりがいつになるかはわからない。
そのことは、痛いほどわかっていて。
「君、お酒弱そうだよね。遊んでみたいなあ」
「……めためたに潰し返してやる」
「ふふっ、確かに、親があんなんだから私もそこまで強くならないのかな。残念」
……耽るのは妄想ばかりだ。
「でも、君が小学生だったときの思い出がここで帰ってるときだけなんだよね。学校行事とかの記憶全くないんだけど」
「ああ……僕、修学旅行も風邪で行けなくて、運動会とかも骨折って出れなかったりしたから」
「なるほど、つまり不幸体質だったと」
「うるせえな……中学校の修学旅行は出たよ」
昔話にだけは、花が咲いた。
*
生まれたときから分かってたんだ。
深海に沈む船のように、いつか忘れ去られてしまう、って。
「……――じゃあ、この世界に生きる意味って、なんなんだろうな」
いくら考えても分からない。考えれば考えるほど息がしずらくなっていって、思い出だけが過ぎてゆく。
「なあ、僕は」
僕は死んでしまったのだろうか
「どうして、生きているんだ?」
ただ息をして待つばかりさ
「そもそも最初から、生きていたのか?」
泡沫に飲まれ消えゆく日を
--- 「もう全部、わかんねえよ」 ---
--- 戻ることない失った、日々を。 ---
どこかからっぽで空虚な日々。どうしようもなく苦しくて、でもなにが苦しいのか分からなくて。どうして生きているのか、そもそも生きているのか、考えることは簡単でも結論にたどり着くことはできなくて。
『あははっ、遅いよ!早くー!』
『それでね、第5話はすっごく急展開でね!ていうか1話の伏線回収されてたんだよねちょー興奮したっ!!』
いつだって、思い出の中の君は笑っている。
確かに、笑っている。
それに応える僕も、笑っている。
それでも確かに、笑っている。
*
「……え……、死、ぬ……?」
「うん。近頃死のうと思って」
今さら、そんな驚くことじゃなくない?いつものように、笑みを浮かべる君。
12月の公園のベンチは、冷え切っている。ひんやりとした冷たさが煩わしくて、でも僕達にはこれくらいが丁度いいのかな、なんて。
「……急だな」
「感想が君らしいね。止めないの?」
「止めてほしいの?」
「質問の返しも君っぽい」
いつもの軽口に、上手く答えられていたかどうか分からない。
「だから、今日が最後になるかもしれないじゃん?ということで、なんか私に言いたいことがあったら、遠慮なくどうぞ」
そう言いながら、ばっと両手を広げる。僕は少し考えてから、こう答えた。
「君は、今生きていますか?」
君は、少し驚いたように目を見開いた。そして、数秒経ってから、にっこりと笑う。
「……どうかな。わかんないや」
「でも、……でも、」
「確実に、昔の私は……生きていたんだろうなって」
君は、笑顔を崩さず視線を下の方に向けた。ぽつぽつと、綴られる言葉に耳を傾ける。
「お母さんに愛してもらえなくても、それでも楽しいことはいっぱいあって」
「泣いて、怒って、それから」
「いっぱい、笑って」
「小5くらいのときだっけ。君の家で、アニメ見たじゃん」
「あのときね、思ったの。私、今、生きてるって」
「主人公と一緒に、旅をしてる気分だった。はらはら、わくわくした気持ちでいっぱいで」
--- 「でも今は、そんな気持ちが……私に、あったのか分からない」 ---
「生きてた、よ?私は、《《生きていた》》」
「でもさ……今生きているのっていったら、首を縦には振れないよね」
--- 「私、死んじゃったのかな」 ---
気づくと、君の顔から笑顔が消えていた。
不安とか、
恐怖とか、
「死んでしまった」自分への怒りとか。
色んな感情を、浮かべていた。
「わかんない……ねえ、わかんないよ」
「わかんない、な」
「怖い。でも、口ではそうやって言いながら、もう涙も出ない自分もいて」
「……うん」
ただ、君の言葉に頷く。君の口から出る言葉はどれも泣きたくなるほど痛々しくて、でも、耳を傾けなければいけない気がして。
ただ、頷く。
*
一週間後、君が、死んだと伝えられた。
*
『……あははっ、どうだろうね?昔っからの死んだ魚の目には変わりはないよ』
『なるほど、つまり不幸体質だったと』
『私、死んじゃったのかな』
--- ――戻ることない、失った日々を ---
*
本当に関係ないんですけど、私が書く男の子は8割一人称「僕」なんですね。でも最近、プロセカ二次創作書いてる癖で口調が明らかに一人称僕の子じゃないんですよ。そのあたり多分違和感感じた方いると思いますすいません。いっそ一人称「俺」にしようかと思ったけど原曲の一人称が「僕」だったので。はい(シリアス雰囲気を爆速で壊していくスタイル)
そして、色々と完成度低いのは見逃してください。はい。
実は夏休み明けからずっと書いてました()
原曲、聞いてみてください。ファンレターもお願いします。お名前の記載があったら愛のお返しするので((誰もいらねえよ
それでは、私の気が向いて2話も投稿されたら会いましょうっ☆