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[潮風が吹くあの海で]
遥か下から、海の波打つ音が聞こえる。
冷たい潮風が服を、髪を揺らす。
「…どうして、どうしてだ!」
俺は声を張り上げて叫んだ。
目の前には、俺が誕生日プレゼントにあげた白いワンピースを着た恋人が居る。
「貴方には関係ないッ……!」
彼女は目に涙を溜め、俺を拒絶する様に首を横に降った。
その切ない叫びを聞いて、胸が張り裂けそうになる。
「関係なくない…!俺はお前のッ…!」
言葉を紡ごうとした矢先、強風が吹いて遮られる。
「もう、これ以上私に構わないで…!」
大粒の涙を目からボロボロと溢しながら、彼女は一歩、後ろへと下がる。
彼女が居る場所は崖だ。もう二歩下がれば彼女は海へと落下してしまう。
「なぜ…!なぜ何も言わず、何も明かさず消えようとする!」
足が震えて前に進めず、問いかける事しかできない自分に腹が立つ。
「貴方は知らなくていいの…!!」
彼女は首を横に振り、またもう一歩下がった。
石が、土がパラパラと音を立てて海に落ちていく。
俺は恐怖を抑え込み、その場から踏み出して駆け寄り、彼女の方に手を伸ばす。
「ッ!!」
彼女はびくりと肩を振るわせ、一歩後ろへと下がる。
地面から足がずれ、彼女はそのまま落下していく。
俺もすかさず崖から飛び降りると、腕を伸ばし、何とか彼女の体を抱き寄せた。
「なんで…!なんでっ…!!」
彼女は悲痛な叫びをあげ、俺の腕を振り払おうとするが、俺は力強く抱きしめたまま、離そうとしない。
「死ぬなら……一緒だと…約束しただろっ!」
俺は嗚咽が混じった声色で言った。
落下する事により巻き起こる風によって服が靡く。
彼女は目を見開いて息を呑み、振り払おうとしていた手を止めた。
ギュッと俺の服を掴み、やがて涙を溢しながら、笑顔を浮かべた。
「……ごめんね。」
彼女の口から発せられたその言葉を聞いて、俺は一瞬驚いた様に彼女を見つめた。
だが、やがて海に落ち、音を立てて高い水飛沫が立つ。
海に落ちていく中、二人はずっと抱きしめ合ったままだった。
付き合った記念に二人で選び、買ったネックレスの半分にそれぞれ分かれたハート型の宝石がキラリと海の中で光り、小さく、カチリと音を立ててくっつく。
二人は額を合わせ、目を閉じてそのまま落ちていき、
二人一緒に、心中をした。