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【第一日目】「名前ヲ呼ブト死」(中編)
「……?」
ふと、さっきまで誰かがこちらをみていたような気がして顔を上げる。振り返り、物陰を見つめるも、そこには誰もいない。
「…?どうかしましたか?」
伊吹が蓮の様子に気付き、蓮が見ている同じ方向をチラリと一瞥すると、蓮の方へと顔を戻してそう問いかける。
「いや…何でもない。何かがいたような気がしただけ。」
物陰の方から目を逸らし、自分のスマホの画面へと視線を移す。探索に没頭していて気づかなかったが、かなりの時間が経っていた。
「…もう直ぐ夜だな。」
「そうですね。ですが、ドームの外に出ることができない。生活場所はどうしましょうか。」
伊吹は顎に手を当て、目を伏せて思考に耽る。確かに、家へ帰ることが出来ないため、生活空間をどうするかを考えていなかった。蓮は使える部屋がないかと歩き出し、近くにあった部屋のドアを開けようと、ドアノブに手をかけたその瞬間─
「ねぇ、使えそうな部屋あったよ!」
廊下の先からいつの間にマンションに入っていたのだろうか。黒と白のギンガムチェックなワンピースを着た、165cmほどの細身で華奢な女性が階段の先を指差しながら、大きな声で蓮と伊吹に呼びかける。
「…!?(声デカ…。)」
蓮はその声の大きさに目を見開き、ピクッと肩を震わせた。だが、蓮はその女性をどこかで見たことがあるような気がした。
「(…YouTuberの、茶湯 看炉か…?)」
そう心の中で呟くが名前を言ってしまい、死ぬのではと一瞬焦りで硬直するも、痛みはない。心の中で言うのは大丈夫らしい。
またわかったことが一つ増えたが、そういうのは大丈夫なら声を出さずとも心の中で会話できるテレパシー系の能力が欲しかったと蓮は思った。
「いつの間に探してたんだ…?」
「結構前だよ!早く行動してみんなの役に立ちたいから!」
何とも前向きだな、と蓮は心の中で思う。役に立ちたいといっても早く行動して勝手に死んだら元も子もないだろうという考えも思い浮かんだが、実際こうして役に立てている。
罠じゃないのかと一瞬疑ったが、茶湯からは悪意などが感じられない。
「………ありがとう。」
何も言わないのは流石に失礼かと思い、首元に片手を当てながらそう小さく呟いた。
「っえ…?ぃ、え…?」
茶湯はその小さな言葉を聞き逃さず、呆気に取られたようにポカンと口を開け、頰をポッと赤らめて驚く。照れ臭そうに人差し指で頰をかき、左下を見て俯いたまま動かなくなってしまった。
「…?、あ……。」
蓮はその様子を見て不思議そうに顰めるも、自分がかけた言葉が原因なのだと気付くと、ほんの、ほんの少しだけ頰を赤らめ、気まずそうに目を逸らし、固まっている茶湯の横を通り過ぎ、階段を上がっていった。
「…僕たちもいきましょうか。」
そのやりとりをさっきからずっと見ていた伊吹は、1番気まずそうにしながらも、固まっている茶湯の近くへと歩み寄り、その細く小さな背中を優しくポン、と叩いてそう促した。
「あ、はい…。」
声をかけられた茶湯はハッとして顔をあげ、目を覚まさせるように、両手で頰を軽くパン!と叩き、タタッと軽快な音を立てて、ワンピースの裾を揺らしながら蓮の後を追っていった。伊吹もそれに続くように歩を進め、階段を登る。
「じゃ、僕は他の人たち言ってくるとでもしようかなぁ〜。」
戻ってきた狛雲がその二人の後ろ姿を見てそう呟き、マンションの扉を開けて外へと出ていった。
【今回の出演者】
・綺堂 蓮
・伊吹 幸人
・茶湯 看炉
・狛雲 琥珀
後編へ続く─