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【序章】「壊れてしまった日常」
いつものように過ごしていた、ある日のことだった。
渋谷のスクランブル交差点を人々が埋め尽くし、スマホを眺めたり音楽を聴いたりしては通り過ぎていく。
新宿の高層ビル群の灯り、信号機の音や車の走行音が騒々しく響き、何処を見ても人や建物ばかりの場所が。
深夜零時を境に、完璧な「無音」へと塗り替えられていった。
「っ…?」
急に眩暈がし、蓮は足がふらつきそうになるのを必死に堪え、こめかみを片手で押さえながら空を見上げる。
そこには、異様な景色が広がっていた。
夜空の星々と同化しているため視認しにくいが、青白い光の線が街全体を覆うように、巨大な半球状のドームに広がっていく。
瞬く間に街一帯が半球状のドームに包まれる。脱出しようとした者もいるが、どれだけ衝撃を与えようと、ドームは壊れる様子を一向に見せない。
「…これは面倒臭いことになった。」
スーツを着た背の高い男性が、ポツリとそう呟く。蓮は辺りを見渡すが、365度全てがドームで覆われており、人々は混乱で持っていたスマホを落としたり、突然の出来事に恐怖で叫び声を上げていた。
「…閉じ込められた…?」
蓮も持ち前の状況把握能力と勘の鋭さで、状況を把握する。手に持っていたスマホがバイブ音を鳴らし、そちらの方へと目を向けてみる。
画面は真っ黒に塗りつぶされ、電源オフの状態と見違えるような暗さだが、赤い文字がノイズと混じりに浮かび上がる。
【アナタノノウリョク:足音の完全消去】
と書かれていた。
「は…?」
地味。あまりにも地味すぎる能力に、蓮は呆気に取られて声を漏らした。隣を見ると、別の男性が炎を手から生み出していた。
「すげぇ…!俺、魔法使いになった…!」
目をギラギラと輝かせ、笑みを浮かべて歓喜に震える男性と比べて、自分はあまりにも、地味すぎる能力を持ってしまった。
『本日のルールを発表します。本日のルールは【名前を呼ぶと死亡】です。』
ホログラムでできたモニターが空中に浮かび、機械の合成音のような、少女の冷酷な声が響き渡る。何も聞かされず言い渡されたその残酷なルールに、先ほど歓喜に震えていた男性の表情が凍りついた。
「名前を呼ぶと死…?おい、誰か…!」
震える声で辺りを見渡し、友人の名前を呼ぼうとその男性が大きく口を開いた瞬間─
『ルール違反の確認』
再度、少女の冷酷な声が響き渡る。刹那、男性の胸元、心臓辺りに銃で撃たれたかのように小さな風穴が開き、大量の血を吹き出して倒れた。
男性はぴくりとも動かなくなり、それを見た周囲の人々は、目の前で起こった信じられない光景に叫び、逃げようとその場から駆け出す者がいたが、男性と同様に何処からともなく銃で撃たれ、頭から血を吹き出して絶命する。
「おいおい、マジかよ……。」
蓮は目を見開き、冷や汗を拭うことも忘れて、震える声で絶句する。平穏に過ごしていたはずの自分が、人が死ぬような、まさに漫画でよく見る「デスゲーム」のようなとんでもないことに巻き込まれるなど思っていなかったからだ。
蓮は震える手でスマホを握り、歯を食いしばってモニターの方を睨みつける。
「絶対、こんな地獄から抜け出してやる…!!」