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てらてら
もうまじでいいから原曲聞いてみ?
正解を探す女の子の話です。
「私のために大学、いっぱい探してくれてありがとう!お母さん、お父さん、私、頑張るね!」
ありふれた言葉に、乗っかってら。
「私、将来は中学校の教師になりたいんだ」
盗んだ言葉に、乗っかってら。
自分がどうしたいのかわかんないけど、でも、みんなが笑ってくれるなら正解でしょ。
「……”あたし”、行方知れずだ」
*
「あのねっ、私将来は保育士さんになりたいんだ!」
「そう。あなたは教えることが得意だし、夢も叶いそうね。
……でも、保育士になるのなら教師になればいいんじゃないかしら?」
「え……?そ、そう、かな?でも、私、やっぱり――」
「……|舞夜《まや》。お母さんはね、あなたのことを思って言ってるの。保育士なんかより、中学校かなにかの教師のほうがよっぽど立派だわ」
「……そう、だよね。うん。私も、やっぱりお母さんの意見に賛成かな」
「ふふ、舞夜はよく将来のことを考えていて立派ね」
……あーあ。折角、自分で見つけた道を歩けると思ったのにな。
あたしはどこを歩いてるんだろ?
いつだって、道を踏み外してる。何度も。
毎回こんがらがった頭固まるんだ。
*
「……お父さん」
「どうした?」
「お父さんは、保育士さんと教師、どっちのほうがいいと思う?」
「そう、だな……舞夜は、どっちの職業に就きたいんだ?」
「え?えっ、と……」
言葉に詰まった。
ちょっとだけ考えて、「正解」を導き出した。
「……教師、かな。やっぱり、お母さんの話を聞いていいなって思って」
「そうか。俺も舞夜にはそのほうが向いていると思うぞ」
「そうだよね。ありがとう!」
……大丈夫。お母さん達は、あたしを「愛して」いてくれてる。
このまま、ずっとこのままで、いれば。
--- 嫌われないで、あいしてくれるよね? ---
*
親からもらった、教師の学校の案内だって、全く興味がわかなかった。
「……自由な奴らは、いいな」
自分の好きなようにいれて、愛される奴らは楽してばっかりで。
……自由な世界の空気が愛おしくて。
でも、これが「正解」だからって言い聞かせて。
気づいたら、なにが正解かの疑い方も忘れかけていた。
そんな、毎日は
--- 「正解」かい? ---
*
「舞夜はこの学校のほうがいいんじゃないかしら」
「いや、こっちの方が偏差値は低いが安心だろ」
「あなた、本当に舞夜のことを考えて言っているの!?この名門校に入ったほうが絶対に舞夜のためになるわ!」
「……お父さん、私もどちらかと言うとお母さんの学校に行きたいな」
「ほら!やっぱり私のほうが舞夜のことを1番に考えているの!」
……いない、いない、いない。
--- あたしがいないよ。 ---
あたしは「どこ」?あたしは、なにがしたいの?
またしても、いないよ。
……あたしは、保育士になりたかったんじゃない。教師のほうがずっとずっと向いてる。そうやって、そうやって正解を探してきたのに。正解を歩んできたのに。
ねぇ、「正解」って、なんですか?
*
「図書館に学校の資料を探しに行ってくるね」
「わかったわ。舞夜はしっかりものね」
「うん。受験に向けて気合い入れなきゃ」
ありふれた言葉に、乗っかってら。
「行ってきます。教師になりたいから、勉強も頑張らなきゃだしちょっとだけ勉強もしてくるね」
盗んだ言葉に乗っかってら。
『舞夜、やっぱりこの学校の方が評価が高いからここにしましょう』
「……レビューサイトの星の数で」
なんでもかんでも将来を決めんな。
余計なものまで、乗っかってら。
「……要らない」
あたし、
そんなんなら。
「正解」ってなんだっけ?
あたしはなにがしたかったんだっけ?
心、行方知れずだ。
「……あ〜あ」
*
細ーく引かれた白線を、踏み外したら”エンドロール”。
「舞夜。本番は一回だけだからね。次は二度とないのよ。気合を入れて勉強しなさい」
「……うん」
この白線に沿っていけば、正解にいけるんだよね?
*
って、そんな狂った常識も、それすらも愛おしくて。
自分自身を、縛り付けていた。
「……」
キライ、キライ、キライに
「……なりたく、ないよ」
あたし自身も世界も。
期待したいのはただ、正解に辿り着ける、今ここで鳴らす音。
だけでいいでしょ?
*
「夢を叶えるために、もっと頑張るね」
ありふれた言葉に乗っかったら、
「……成層圏越えられるかな?」
正義は常にノスタルジア、だから疑わしいよね。
「神様の二次創作かな」
あたしを、こどうして作ったんだろう?
こんな要らないあたしなんて作らなくたってよかったじゃん。
「……あ〜あ」
*
「愛されたい」なら、踏み外して。
……たとえ、それが「正解」じゃなくたって。
「……なにが正解?」
ねぇ、ねぇ。
あたしに正解を教えてよ。
頑張って、愛されようとしたって、なにが正解かわかんなくて。
衒って、衒って。
*
ありふれた言葉に乗っかってら。
盗んだ言葉に乗っかってら。
「果てしないだけの場所でなんか見つかりましたか?」
余計なものまで乗っかってら。
--- 「要らない」 ---
あたし、そんなんなら。
「舞夜……?ねえ、なにをしようとしているの!?包丁なんて離しなさい!」
シンクロナイズしちゃったら、
心、行方知れずだ。
正解がなんなのかはわからなかったけど、でも、これが正解なんだよね?
「……あ〜、あ」
…なんか、もやもやする。あたしちゃん自殺しちゃったし。