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<嘔吐したワードナイフ>
言葉は水のようなものだ。どんな形にも変形し、変貌し、変化する。優しく海のように広がったり、激しく突き立て滝のように打ちつけたり、じんわりと雨のように染みていったりする。決して勝手に乾いたり、固まったりすることはない。何かの圧力によって形を変えていく。
水には味はない。言葉には味はない。それでも何故か、私はその存在しない味を吟味しようとしている。理由は分からない。
そんなものを口に入れたところで、腹が満たされるわけでも、飢えるわけでもない。あるのは、ひとときの満たした気持ちと、胃液になった水だけ。
味はない。存在しない。何も、残らない。
残ったのは、それを口に入れて、残ったという事実だけだった。
<いじめ犯人探し>
笑われることが苦痛でした。泣かれることが苦痛でした。遊ばれることが苦痛でした。視線が、苦痛でした。
皆が一人に罪を押しつけて、押しつけた罪を断罪人にでもなったように処刑する。指差した向こうには死体の山々で、誰もが押し入れに籠りっぱなし。
僕の何が悪いんですか。私の何が悪いんですか。何が悪かったんですか。罪を押しつけて、免罪を刻印したかっただけですか。誰でも良かったんですか。
裁判官は不公平。弁護人は不公平。検察官は不公平。傍聴人は不公平。平等の正義を掲げた悪が高笑い。
どうして僕だったんですか。どうして私だったんですか。どうして君だったんですか。
理由を教えて下さい、裁判官。主犯は貴方です、裁判官。
咎人は被害者です。裁判官は加害者です。傍聴人は観衆です。見て見ぬふりした貴方は傍聴者です。誰も助けてはくれません。誰も助けようとも思いません。
だって、次の罪人になったら大変ですから!
<レッテルの溶けたスープ>
生まれた頃から、何かが違っていた。口を開けば口々に異常だと狂気だとありもしないことを並べたて、積み重なったレッテルが凝固して私になっていった。
自分が異常だとは思っていない。皆が普通だとは思っていない。それだというのに、外見や話し方、果ては生まれ持った性分ですら異常だと理不尽に石を投げる。石に籠もった偏見は離れもせずに皮膚にかすり傷をつけ、流れ出た血に溶けていく。
味のしないスープを大量のスープの中に溢して混ざり合うまでを見続けたとしても、答えは解らない。そのスープをひっくり返して、鍋の外へ放り出しても解らない。解かるはずもない。美しく汚かったものが、汚く美しいものに触れるだけの溢れたスープ。どれも味は違うのに、どこか違う。私たちは違う者で同じ者に過ぎない。
<~~誘い幻想の妄想~~>
`普通であっても褒めてくれる人はいない。異常から普通になれば褒める人はいても、普通から異常になれば蔑む人がいる。`
`普通の集団でも、異常の集団でも、ほんの少し違うだけで水をぶつけ、石を投げ、穴の底へ沈めていく。`
`話が噛み合わない。空気を読まない。一人ぼっち。やる気がない。症の言葉を知っていても理解はされていない。おかげで行き着くのは一人ぼっちの妄想病ばかり。`
`貴方が言う皆に、私は含まれていない。含もうともしていない。`
`結局のところ、理解しているふりをしているだけで、何も理解していない。`
`私を最初から、役に立たない社会の汚れたお荷物だと思っているのだから。`
`口を開けば「うざい」と「手伝ってあげる」の二極ばかりで、疎む者か見下し者しかいないのだ。誰も普通には扱わない。挙句の果てには「お前は楽でいいな」と苦労も考えずに発言する。違うからこそ、何倍も苦労すると言っているのに。それでも、それを言う者も苦労をすると言えば、その通りで何も言い返せない。`
`いつでも、どこでも、金魚の糞ばかりで、誰かの世話をされる腰巾着でしかない。`
`家庭では母が「お前が産まれてこなければよかった」と小言を吐き、父が「まともな人間であれ」と諭す。`
`学校では誰かが誰かに「仲がいいから」と私の世話を頼み、頼まれた誰かはさぞ鬱陶しそうに世話をして、誰も彼もが私を「底辺」だと罵る。`
`職場では同僚が「誰にでもできる仕事しかできない無能」だと苦言を散らし、上司が「始めから人でもない障碍者」と怒鳴る。`
`やってはいけないことを建前に、やってはいけないことを本音にする。`
`そもそも、普通ではない分類と普通の分類がある時点で、社会がどう考えているかなど一目瞭然に過ぎず、分かりやすくした分類の上に浸け込んだ批判と偏見が混じり合って汚らしい色のシールになるのだ。`
`それでも、世界の全てがそうであるとは言えず、いつの間にかシールに埋もれて、シールが作り出した何かの皮を着ている。`
`そうすることでしか生きれなかった。`
`そうして生きることしか、知らなかった。`
<1 → i / l 4 → A 3 → E>
<Th1s → This 1s → is 4 → A Dr34m → Dream>
<Th1s 1s 4 Dr34m.>
<`**This is a Dream.**`>
*元々、違和感があった。思ったことが簡単に分かる、やけに人のような悪魔、ゲームのわりには重苦しい人々、できないフレンド。**リリスは現実にはいない。私の自室の仮想空間にも存在しない。そもそも、`これはゲームじゃない`。*
*シュブも、レヴィも、カイトも存在しない。存在するとしたら、私の頭の中だけだ。*
*「主は妾、妾は主よ」*
*また同じ台詞。確かに、そうかもしれない。*
*周りにポータルはなく、真っ白な空間が広がっている。ログアウト表示も、設定も、何かもがない。始めに願ったフレンドは達成できたかも分からない。達成できてすらいないのかもしれない。そもそも、私がゲームでフレンドなど作れるはずがない。*
*仮にゲームを辞めたところで、待つのは仄暗い部屋と貶すだけの親。学校は私を異常だと指差して咲うばかりで楽しいと思ったことはない。*
*「現実は醒めぬよ、イデア」*
*そうリリスが呟く。いつの間にか、辺りは暗く影を帯びている。*
「……話すことって、難しいかな」
*ただの私の独り言だった。それにリリスは「伝えたいことを懸命に言葉にすれば難しくはない」と返して、鼻で笑った。難しいことはもう言っていなかった。*
*「分かってるんだろう」*
*どうも言えない。現実でも、ゲームでもないことは確かだ。私は人に向かって、流暢に喋ることも、名前を聞くことも、話しかけることもできないのだから。*
「他の3人は?」
*「妾と同じ者よ。醒めれば、自ずと答えは出る」*
「……つまり?」
*リリスがゆっくりと息を吸う。吸って、吸って、吸って、吐き出す。*
*「`起きろ!`」*
冷たい頬に手を当てた。ベランダの風は相変わらず、びゅうびゅうとあたりが強く吹いている。あのテストの紙もとうの昔に風の彼方へ飛んでいってしまったのだろうか。
机の上にはスタンドアロン型のVRゲーム用のヘッドセットが適当に転がって、もう一つの脳は動いていない。ベランダから部屋の中へ入り、手鏡に映った寝癖がひどく鬱陶しい。
言葉が嗤いかける。数字が嗤いかける。音が嗤いかける。誰も、味方ではない。
それでも、まだ完全に誰もが味方ではないのかもしれない。テストの点数は散々で、紙も散々。それでも、普通が背中を押したとしても戻れることはできる。
あれは、夢だった。どこか冷たくて、暖かい夢だった。優しい泥沼に沈んで、喉の突っかかりもとれていた。
手鏡の横に置かれていた学生鞄からはみ出た、捨てきれなかったメモ用紙の中に見覚えのあった。リリス、シュブ、レヴィ、カイト……英語で名前の振られた個性的なキャラクターたちが紙の中で楽しげにしている。
窓からカーテンを揺らして風が吹く。その風が、どうにも背中を押されているようで私の頬が緩んでいくのが分かる。
悠く、悠くへ何もかも思い出せない程に、脳を紙のように薄っぺらにしてでも夢の中へ堕ちてしまった今は、一瞬の内にでも脳を綿飴のように分厚く現実へ足を這い上がってもいいかもしれない。風が冷たく、それでも優しい。
外は、人は、どんなものが待っているだろうか。いつかの友達もきっと、まだ。
**あとがき**
「Th1s 1s 4 Dr34m.」の暗号は、2000年代ネット文化やゲーム文化、ARG(代替現実ゲーム)系、ホラー演出、都市伝説風コンテンツに多く見られる演出です。
今回のタイトルは「P3r50n5 w17h d154b1l17135」で、3 → e、5 → s、0 → o、1 → i / l、4 → a、7 → tに置き換えて「persons with disabilities(障害をもつ人々)」です。人間であることを強調する形の単語になります。
「disabled people」だと「障害者」という意味になるものの、言い方に関しては人によるのでどれでも一緒です。日本語で「障害者」を「不自由な人」と言い換える人がいるようなものです。
最近は「disabled people」の方がわりと多くて、「公的文書・福祉・法律」を「persons with disabilities」、「日常・当事者コミュニティ」を「disabled people」って書いてる人もよくみます。それでも絶対そうかなのかと聞かれても分からないので、「disabled people」の方が日本語の暗記教育では覚えるなら楽かなと思います。
ぶっちゃけ、英語は単語の組み合わせ次第で意味が変わってくることがあるので、単語の意味やスペルを覚えるよりも、それらがどんなことを表すかをイメージして学んでいく方が効率が良いのですが……生憎、私は英語教諭ではないですし、教育の場所でこういったことを言うと日本人は混乱するので何も言いません。たまに本気で英語を学びたいという知人や友人に軽く教える程度です。
本気で英語を学びたくもなかったり、高校または大学入試程度の英語力で大丈夫だったりする方は今までの勉強の方法や本人に合った勉強の方法が一番いいです。
下手に自分に合わない勉強をするよりも、自分の基準に合った勉強の方が何倍も身につきます。効率よりも継続が重要です。
さて、長々と語りましたが「Th1s 1s 4 Dr34m.」にてご参加いただいた方々に改めてお礼申し上げます。その他の褐色肌ののじゃロリな悪魔:リリスと、引っ込み思案で不登校(いじめ)の手帳持ち障害者(軽度の知的障害)の高校生:イデアは私の趣味です。
作品のオチと言われましても、本文の通り夢オチ(少しだけ主人公に自信がついた形)で、主人公以外のキャラクターは主人公の妄想または夢の架空のキャラクターとなります。キャラクターの現実への記載をしていた方には大変残念な終わり方となり、申し訳ありません。自主企画を開催していた時に「夢オチ」だと公言してもよかったのですが、面白味に欠けたのでこういった形で、注意事項に最終回への苦言を呈さない方と記載いたしました。
(シリーズのあらすじを見ていた方なら、メモの結末がそのまま載っていたので分かったかもしれません。普通に消し忘れました。)
主人公の設定に関しては障害者を理由に学校での集団いじめから精神病になるといったもので、ありきたりな設定になっており、リリスはその主人公の現実を知った上でかなり傲慢で棘のある台詞で、主人公の自尊心を育てる形のやや共依存気味な母子風百合です。現実では成立しそうになかったので、夢の中で関係を成立させてもらいました。イデア(幻想)とリリス(有名な悪魔の名前)の名前に特に意味はありません。適当です。
最後に、本作品をお読みいただき、誠に有り難うございます。お粗末様でした。