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疑心と不安、感を育む。
毎日が苦しみの連鎖でした。些細な言動一つ一つに反応を示してしまい、勝手に不安になっていました。毎晩一人で怒り、一人で泣きもしました。……ある意味、その時が1番楽だったのかもしれない。今はそれがひしひしと感じられます。
昔は自身の感情が上手く分からず、楽しいのか悲しいのか、幸せなのか不幸せなのか。そんな自問自答ばかりを続けていました。
厄介なのは、分からないどころか制御すらもできない所でした。
大人には、よく目が怖い、と言われていました。思春期だからしょうがない、とも言われ続けました。それがどうも、気に食わなかったのです。自身の理解すらまともにできていないくせに、私は一丁前に、知ったような口を叩くな。と思っていました。思春期なんて安っぽい言葉で、この感情を表されてたまるものか、と。
自分は周りとは違う、もっと才能があって凄いんだ。……本気でそう思っていました。側から見れば、物凄く間抜けなことでしょう。何もないくせに、何かあるような顔をする。何も分かってくれない周りに、何も分からない自分に憤慨していました。
怒り、苦しみ……その他全ての感情をぐちゃぐちゃにかき混ぜたような脳内でしたが、声を押し殺しても泣けば少しは気持ちが軽くなりました。
何はどうあれ、当時の私は周りと同じ扱いをされるのが嫌で嫌で仕方がなかったのです。
今は少し違います。簡潔に一文でまとめてしまうと、過去の自分を裏切ってしまいました。
今の私は、いつの日かあれ程までに嫌悪を抱いていたはずなのに、周りと同じを心がけてしまっています。周りの少しでも違う行動をすれば、変に目立ってしまう。周りを少しでも不快にしてしまえば、私の周りには腕を広げられるほどの空白ができてしまう。……それがどうにも怖かったのです。
きっかけはおそらく、偶然聞こえてしまった陰口でしょう。いえ、当人からしたら陰口とは思っていないのかもしれません。
少し意見を言っただけなのです。勿論これも良いけれど、あれの方がいいんじゃないか。こんな風に、ただ自分の意見を述べただけでした。そんな私に与えられたレッテルは、空気の読めない人間でした。何か意見はありますか、なんて言葉はただの形式だと、この時初めて気がつきました。
そこからの話は早かったです。人を傷つけないような言葉を使い、なるべく気を使い、なるべく何も言わないようにしました。全力で、周りに合わせてきました。
……そこまでしても、世間は厳しいもので。少しでも合わせ違えれば視線が皮膚を刺し、笑い声が私の脳を殴りました。
あの時感じていた苦しみよりかは少しばかりマシなもので、いつものように布団に入ったとしても、そのまま朝を迎えるだけでした。……私は段々と、小さな小さな箱の中。一人、大きな大きな心の中の何かを育み続けました。
そして、とうとう私は合わせ疲れてしまいました。私が笑う要素を見つけられなければ、ただの笑い声でも不安と恐怖が脳内を支配しました。こんなに笑いかけてくれている人がいても、私が裏で苦しい思いをしているのと同じように、この人も裏では私のことを笑っているのではないかと思うようになりました。優しさが怖いのか、それともただ単に疑り深くなってしまったのか。傍迷惑な被害妄想ばかりが膨れ上がりました。
そして、挙げ句の果てにはあの頃に逆戻りしました。……いえ、もっと酷かったです。あの時よりかは体も心も成長してしまったせいで、どこか自分を俯瞰して見てしまいました。
嫌な想像嫌な言葉。考えるのがやめられなくて、自分自身の足につまづいてしまいました。
褒め言葉には裏があって、悪口には裏がない。そう思う自分はなんて酷いんだ。その酷いと思っていることですら、心配されたいだけ。そんな自分自身への悪意のマトリョーシカだけが残されて。美味しいはずのご飯も、喉を通らなくなっていきました。
声を出すのも、何をするのも怖い。けれど、何もしないと、そのことに何を言われるのか。他人ばかり気にして、自分の輪郭が定まらなくなっていきました。
とんだ皮肉です。あれほど嫌っていたはずなのに、周りと足並み揃えて歩くようになってしまいました。自然と、周りの顔を。裏を伺うようにもなりました。
そして、あの時のように、常時とても辛いわけじゃない。泣いて、吐いて楽になれるわけではない。
少しの疑心と不安だけが積み重なった、ゴミの山を貪り、理解したくない心の何かだけが膨れ上がる。それが私の、毎日です。
ざっくりとした流れ(説明)
最初:毎晩泣いて苦しんでいるのに、この気持ちを周りと同じように扱わないでほしい。
数年後:周りと同じにしないと、私が苦しくなる。
↓
けれど、私が裏で辛いと思っているように、目の前の人も裏では私のことを笑っているかもしれない。何も信じられない。私は本当に笑えているのだろうか。不安になる。それすら嘘じゃないのか。
疑心と不安を基盤に、理解したくない心の何かだけが膨れ上がるだけの生活。