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6-5「深い暗闇での出会い」
ルイスside
「……。」
あぁ、そうか。
僕には戦う理由が無いんだ。
アリスが死なないために呼ばれた異世界の住人。
この世界が終わろうが、“白紙の文学書”で変えられようが。
異世界の住人の僕には、関係ない。
唯一残っている“あの歌”がある僕の本当の世界は、平和だという。
其処へ戻れたら、いいじゃないか。
--- それでも、“想い”は消えない。 ---
シャルルさんみたいに「誰かのヒーローになりたい」わけでは無い。
コナンさんみたいに「不自由なく生きたい」わけでは無い。
ヴィルヘルムさんみたいに「命を懸けてまで幸せにしたい人がいる」わけでは無い。
アーサーみたいに「もう誰も失いたくない」わけでは無い。
エマみたいに「笑顔が溢れる日常を送りたい」わけでは無い。
戦争を経験して、
万事屋で世界を見て、
探偵社に入って、
過去がない僕には、この世界で経験したことが全てだ。
はじめは隊長の「仲間を全力で守れ」というたった一言だった。
何も持たない僕は《《命令》》を必死にこなしていた。
助けを求める仲間に手を差し伸べ、その為に敵は殺して。
時が流れ、感情を持ち、僕はヒトになった。
いつの間にか“命令”は変化して、“想い”になっていた。
『違うね』
「……。」
『“仲間を全力で守れ”という命令に縛られているだけで、それは“想い”じゃない』
初めてアリスと会ったときと同じだ。
漆黒の闇の世界で、相手の姿だけが認識できる。
ただ、目の前にいるのは僕と瓜二つの少年だ。
英国軍の軍服を着ており、その幼さには大きく見える狙撃銃を抱えている。
視線は自然と違和感のある場所へ向かった。
彼の足についている鎖の先は暗闇に消えている。
「なら、胸を熱くするコレは何?」
『過去に縛られてるだけで、少なくとも“想い”ではない』
「なら、僕が“想い”と思っているコレは何だ」
『……僕達が“想い”なんて手に入れられるわけがない。それは“呪い”だよ。世界の理から外れたキミが、人間になれるわけがない』
「こうやって君と話してる時点で、僕は人間じゃないだろうね。でも、ルイス・キャロルという別世界のアリスは《《ヒト》》だ」
『ボクの話を聞いてた? ちゃんと人に伝わる言語で話してもらいたいんだけど。人間も人も、同じだ』
「何かのために必死になって、命を懸けて戦っている。これが“想い”じゃないのなら……僕は笑えないほどお人好しだよ。感情を持って、一人のヒトとして戦場にいる」
『……あのさ』
「僕は自分のことを|人間《この世界の人》なんて云わないよ。今までも、これからもね」
『──感情を得た|ヒト《人間モドキ》ということ……?』
「うんうん、理解できたようで何より」
『でも、ボクは……ッそれでも、|ボク《ルイス》が感情を持っているだなんて──!』
「|今の君《過去の僕》は理解できないだろうね。でも大丈夫。君の周りの人達は、これから出会う仲間は本当に素敵な人達だから」
多分、彼は過去の僕だ。
だから何かに縛られているのだろう。
此処がワンダーランドではないことは、とっくに分かっている。
世界の狭間。
きっと理から外れている僕だから過去に干渉できたのだろう。