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茜色の体温、銀花のあしあと
読んでみてくだせぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜‼️
第一章:木漏れ日の雨宿り
緑豊かな「はじまりの森」。その奥深くにある、大きなガジュマルの木の下が二人の出会いの場所だった。
焔(ほむら)は、自分の名前に反してとても内気なブースターの男の子。人一倍ふかふかでもこもこな体毛を持っているけれど、初対面の相手の前では緊張のあまり、体温が急上昇して顔が真っ赤になってしまうのが悩みの種だった。
「はぁ……今日もきのみ拾い、うまく喋れなかったな……」
夕暮れ時、焔は森の小道をトボトボと歩いていた。
その時、突然の夕立が森を襲った。激しい雨粒が葉を叩く。
「うわわっ、大変だ、毛が濡れちゃう!」
慌てて近くの大きなガジュマルの根元へと飛び込んだ。そこは天然の雨宿りスポットになっていた。
しかし、先客がいた。
「……あ」
思わず声が漏れる。そこにいたのは、透き通るような氷の体を持つグレイシアの女の子。彼女の名前は凍華(とうか)。その名の通り、凍てつく華のように美しく、周囲には常にひんやりとした涼しい空気が漂っていた。彼女は突然飛び込んできた焔を一瞥すると、ふいと視線を落とした。そのクールな佇まいに、焔は一瞬で心臓が跳ね上がるのを感じた。
(ど、どうしよう……! すごく綺麗で、かっこいいグレイシアだ……!)
焔の心臓はバックバク。シャイな彼は、話しかける勇気など微塵もない。それどころか、緊張で体がどんどん熱くなっていく。首回りのもこもこな毛から、ぽっぽと温かい湯気が立ち上り始めた。
「……あつい」
凍華が短く呟いた。
「ひゃっ!? ご、ごめんなさい! 僕、緊張すると体温が上がっちゃって……!」
焔は慌てて縮こまり、さらに顔を真っ赤にした。
しかし、凍華は嫌そうな顔をするどころか、少しだけ目を見開いて焔を見つめた。
「……不思議な温かさ。私はいつも体が冷えているから。その暖炉みたいなぬくもり、嫌いじゃないわ」
「え……?」
凍華の静かで心地よい声に、焔はすっかり見惚れてしまった。
外は激しい雨が降り続いている。けれど、ガジュマルの下だけは、焔の優しい熱と、凍華の心地よい冷気が混ざり合い、まるで春のような特別な空間に変わっていた。二人はそれから、雨が上がるまで、ぽつり、ぽつりと、お互いのことを話し合った。
それが、二人の静かな恋のはじまりだった。
第二章:氷の彫刻と、溶けない想い
出会いから数ヶ月。二人は時々、森の境界線にある「結晶の谷」で会うようになっていた。焔は凍華のクールな優しさに惹かれ、凍華は焔の不器用だけど真っ直ぐで温かい人柄に心地よさを感じていた。
ある日、凍華は焔を自分の秘密の場所に案内した。
「……見て」
凍華が優しく息を吹きかけると、目の前にある凍った湖の表面に、美しい氷の彫刻が形作られていく。それは、細部まで丁寧に作り込まれた、森の花々の形をしていた。
「うわぁ……! すごい、綺麗だなぁ、凍華は天才だね!」
焔が目を輝かせて拍手をすると、凍華は一瞬だけ、本当に一瞬だけ、耳の後ろをほんのり青く染めて照れた。
「……ただの暇つぶしよ。でも、あなたに見せたくて」
「僕に……?」
「ええ。あなたはいつも、私の氷を『冷たい』って怖がらずに、『綺麗だ』って言ってくれるから」
凍華はいつも冷静で、周囲のポケモンからは「冷たくて近寄りがたい」と思われがちだった。けれど、焔だけは違った。焔の熱は、凍華の心の氷を溶かすのではなく、優しく包み込んで光らせる力があった。
「僕、凍華の作る氷、大好きだよ。だって、凍華の心がこもっている気がするから」
焔が照れながらも、一生懸命にそう伝えると、凍華は静かに微笑んだ。
「……ありがとう、焔」
第三章:はじめての約束、特別なデート
季節は巡り、秋の終わり。森の広場で、一年に一度の「星降る夜の市場(ナイトマーケット)」が開かれることになった。
焔は、何日も前から勇気を振り絞る練習をしていた。
(凍華を、デートに誘いたい。でも、断られたらどうしよう……。いや、頑張るんだ!)
次に会った時、焔は全身の毛を逆立てるほど緊張しながら、ぎゅっと目を瞑って叫んだ。
「と、凍華! 今度のナイトマーケット、僕と一緒に……行ってくれませんか!?」
あまりの熱量に、焔の足元の草が少し焦げそうになる。
凍華は少し驚いたように瞬きをした後、ふっと柔らかく目を細めた。
「ええ、喜んで。楽しみにしているわ、焔」
「え……本当に!? やったぁ……!」
焔は嬉しさのあまり、その場で小さくピョンピョンと跳ねた。凍華はその姿を、とても愛おしそうに見つめていた。
そして迎えた当日。
ナイトマーケットは、イルミネイル(灯火)の光ときのみの甘い香りで満ち溢れていた。
いつもとは違うお祭りの雰囲気に、二人は少し緊張していた。
「あ、あの、凍華……はぐれないように、その……」
焔がおずおずと、肉球を差し出す。シャイな彼にとっては、心臓が破裂しそうなほどの挑戦だった。
凍華は焔の真っ赤な顔を見て、小さくクスリと笑うと、自ら進んでその温かい前足に、自分の冷たい前足を重ねた。
「こうすれば、はぐれないわね」
「う、うん……!」
二人は手を繋いで歩いた。
焔の肉球からは、凍華を寒がらせないための優しい熱が伝わり、凍華の肉球からは、焔の緊張をそっと静めるような心地よい冷たさが伝わる。完璧な温度だった。
二人は市場を巡った。
焔は、凍華がじっと見つめていた、氷の結晶に似た青い木の実のブローチを見逃さなかった。凍華が別の店を見ている隙に、焔は急いでそれを購入した。
「これ……凍華に、似合うと思って」
「……私に? ありがとう。大切にするわ」
凍華はさっそく、自分の首元にそれを飾った。青いブローチは、彼女の美しさをさらに引き立てていた。
その後、二人は市場の裏手にある、丘の上へと向かった。そこからは、お祭りの明かりと、夜空に広がる満天の星が一望できた。
「綺麗ね、焔」
「うん、すごく綺麗。でも……僕にとっては、凍華の方がずっと綺麗だよ」
気がつけば、焔は素直な気持ちを口にしていた。言った後で「あ、また変なこと言っちゃった!」と大慌てで顔を隠す焔。
そんな焔を見て、凍華は一歩、彼に近づいた。そして、自分の額を、焔のふかふかな胸の毛にそっと預けた。
「凍華……?」
「少し、寒くなってきたから。あなたの温かさを、もっと近くで感じさせて」
それは、クールな彼女が見せた、精一杯の甘えだった。
「……うん。いくらでも、暖めてあげるよ」
焔はそっと、もこもこの尻尾を凍華の体に巻き付けた。
炎のぬくもりと、氷のきらめき。正反対の二人の体温は、今や完全に溶け合い、世界で一番優しい、二人だけの特別な温度を紡ぎ出していた。
二人の歩む道のりは、これからもずっと、温かくて白い、幸せな足跡で満たされていく。
(おわり)
読んでくれてありがとぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜‼️