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ことわり
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〈まえがき〉
「夢を見ていたんだ」の続きとなります。
続き、というよりかはこの「ぼく」の居る世界観がわかるものとなっております。つきましては、「ぼく」の夢の少し前となります。「ぼく」が何故夢を見るに至ったのかがわかると思いますので、是非お楽しみください。
18歳、春。
周りが大学に行っている中、ぼくは就職した。とくに行きたい大学もなかったし、なにより自分の好きなものである天体観測の資金が足りなかったのだ。
ぼくが勤めていたのは、『人類宇宙移住計画』に携わる会社だった。CMで「宇宙でも安心!衣食住に困らず金や地位名声という執着するものもなく、お気軽に自由に生活できます!」と謳っていた。21世紀、人類は地球温暖化や相も変わらず環境破壊に勤しみ、熱化が進んだためついには昼に活動できなくなってしまった。よって人々は夜行性になり、可能活動時間は多くとも夕焼けが見れる時間帯ー朝焼けが見れる時間帯、となってしまった。木はほぼなくなり、そもそもの灼熱によって昼間は防護服を着なければ細胞ごと溶け死んでしまう。そのため昼間に活動する人類は僅か1%にも満たなくなっていた。
人類には大きな問題があった。それは農作物が育たず焼け死んでしまうこと。灼熱により水を与えても蒸発してしまうのである。食がなければ貧しく、格差も進む。人類は大飢饉に陥っていた。
さらに、絶え間なく降り注ぐ太陽光による電波の遮断。ネットが使えなくなり、人類は一気に文明レベルが下がっていった。混乱した人々は情報を求め政府の機能する都市部に突撃し、大反乱を起こした。
どうにか対処する方法はないものか、と政府や世界各国は考えていた。そこで考えついた方法は『人類宇宙移住計画』。
人類は宇宙のどこかに浮遊する都市をつくりあげ、そこに住まわせようとしている、と先輩から教わった。ぼくはそんな重大な計画に携わっていたのだ。宇宙は好きだし、ぼくの好きな天体観測の役に立つだろうなと、わくわくしながら仕事をしていた。好きなことだからか仕事をしていても全く苦にならず、寧ろ自分から仕事に行こうとするほど熱心になっていた。
ぼくはそこまでメンタルが強いわけではない。過去にうつ病と診断されてから、学校を休んでは布団からも起き上がれない状態となっていた。
今となっては人並みの生活が送れるものの、まわりのもののデジタル化が進む中、アナログなものが好きなぼくはまわりから浮いてしまっていた。
デジタルなものが嫌いなわけではない。機械的なネオンや街の光は好きだし、なによりも好きなアナログなものが、きえないように保存できるところは非常に好いている。
だが、同時に危険性も備えている。誹謗中傷や批判といった人々のやりきれない感情が、なにも関係のない人に宛てられ届く。人の感情はやり場がなければ誰かに向かって吐き出されるものであるし、それを抑えられる人がいなければ犯罪という最悪な手段にまで及ぶ。ぼくはそれがなによりも怖かった。某掲示板や呟きの投稿できるアプリでぱっとつぶやいたことが、誰かの逆鱗に触れ叩かれたら。拡散されたら。そんなことばかり考えて、他人はもちろん ぼくはぼくのことですら信用できなくなっていた。
ぼくにとってはデジタル的なものも恐ろしく、苦手なものになっていた。人類が作り出したAIは、その作り出した人でさえも恐れるほどの力を持つ。人間ができること以上のものはできないというのに。とぼくは考え、デジタルも、そのデジタルを過大評価する者もぼくは苦手になっていた。
ぼくが会社に携わって二年、ずっと違和感を感じていた。そんな金はどこにあるのか。宇宙空間でどうやって建物を建設するのか。そもそも生態系など地球によせることができるのだろうか、と。ある日会議室の前を通ったとき、たまたまお偉いさんがきていたらしい。なにか重要なことをはなしているらしく、入ってはいけないと思いぼくはおもわず聞き耳を立てた。そのとき、ぼくはこの計画の裏を知ってしまった。
『人類宇宙移住計画』は、世界のトップ達が取り決めた、聡明な者のみを地球に残して楽園と称したシェルターを築き温暖化もなにも関係のないシェルターの中で天寿を全うするという、なんとも傲慢で身勝手な計画であった。また、「お気軽に自由に生活できます!」などと謳っていたものの、実際に宇宙空間で何億人もの人々が吸う空気などどこで集まるのか、そんな大規模な生活スペースが作れるのかなど、今の最新技術を以っても到底できない要素が多いと。ゲームなどでもなければできないようなことばかりをCMにてポジティブに説いていたわけだ、とぼくは絶望した。
ぼくは会社を辞めた。裏を知ってからというもの、仕事は手につかず私生活ですら疎かになってしまったからである。
人々を見捨てた世界の国々のトップにひどく恨みをもち、同時に自分ではどうにかすることもできないという劣等感や自己嫌悪しかもたなくなっていた。
ぼくは希死念慮しか残らないこの世界で、自分を失わず生き抜くことができるのか。いつか滅びるこの世界で、ぼくはどうすることができるのか。将来に対する漠然とした不安が漂い、募って 遂にはあこがれの宙へ飛ぶことを決めた。
居場所がない、と思ってしまったからには、他人が他にも場所はあるよ と教えてあげなければならない。なぜなら当事者は盲目になり、闇から抜け出せない、あとずさりすると落ちる、と思い込んでいるからである。
ぼくにはそんな人はもういなかった。
おとうさんやおかあさんはもういない。学生時代想っていた人もいない。帰る場所はないのだ。そんな世界でどう生きればよいのか。全てに絶望し、ロープを買った。
夢の始まりである。
〈あとがき〉
読んでいただきありがとうございます。
上手く言語化できなかったような気がします。
ですけれども、これですこし「ぼく」の居る世界がわかったのではないでしょうか。
さて、「夢をみていたんだ」シリーズはまだ続く予定です。
次回も是非楽しんでいただけたらと思います。