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嘘から始まる本当(読み切り)
夢雲ふわり様からのリクエストです。
リクエストありがとうございます!
「なぁ、明日の休みデートしてくれねぇ?」
ニヤニヤとした連れの視線を感じながら俺―――坂口誠は、とある女子にそう言った。
彼女は本から視線を上げて今どき流行らない瓶底眼鏡越しに俺を一瞥する。
彼女は水谷とわ。地味でボッチな陰キャ女子だ。
そんな彼女になぜ俺が話しかけているのか。
昨日の放課後。連れとのゲームで負けた。
つまり、罰ゲームの嘘告ってことだ。
「⋯いいですよ。」
そう素っ気なく言い放ち、彼女は再び本に視線を戻す。
もう用はないと言わんばかりの態度なのだが、俺は少し驚く。
正直、話すことなんてそんなになかったし、断られると思っていたから。
連れのところへ戻ると、とてもニヤニヤと気色の悪い笑みを浮かべている
「明日が楽しみですねぇ?まーくん♡」
「はいはい。うるせぇうるせぇ」
適当にあしらいながら考える。
明日どこに行こうかな、と。
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「えー。集合場所はここだったはず⋯」
駅前に三十分前に到着した俺は時間を潰すべくキョロキョロと辺りを見渡した。
いくら罰ゲームといえど、相手を待たせるのは忍びないので早く来たのだが。
さすがに早すぎるので近くのカフェにでも入るか⋯。
「坂口くん、早いのですね。待ちました?」
急に背後から声が聞こえた。水谷だ。
さっと振り返った俺は、絶句した。
そこにはとんでもない美少女が立っていたのだ。
ぱっちりとした黒曜石のような目は吸い込まれるかと思うぐらい綺麗だ。
髪も夜を映したと言っても信じられるぐらいサラサラと輝いていた。
そして、それを際立たせるような白いワンピースに白い肌。
え?どなたですか?
思わずポカーンと立ち尽くす。
「水谷、か?」
「えぇ。そうですけど?」
怪訝そうな彼女の態度にますます信じられなくなる。
いや、いやいやいや。
「別人すぎるだろ⋯」
思わず出てしまったが、これは言って許される。
むしろ言わせに来てるだろ。
彼女はコテンと小首を傾げた。
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デートのプランとしては映画を見て、その後カフェでランチ。
その後解散という全く旨味のないプランだった。
映画は、彼女の趣味の小説が元となった恋愛映画だった。
俺はこういうのあまり自分からは見ないので新鮮だった。
ラストは少し感動してしまい、ちょっと泣いてしまったが。
バレてないかと隣を見たが、彼女も彼女で薄く涙を浮かべていた。
大号泣されていたら反応に困ったので、よしとしよう。
むしろ、少し人間らしさが垣間見えて親しみやすさが増した。
続いてカフェ。
彼女はよくわからないおしゃれなパフェを食べていた。
俺はコーヒーだけ頼んで彼女の様子を見守る。
彼女はパフェを美味しそうに頬張っていた。
いたのだが、パフェって案外多いんだな。
途中から苦しそうな彼女の様子をみて少し吹きそうになる。
肩を震わせている俺をみて彼女は恨めしそうな顔をする。
「見てないで手伝ってくださいよ」
「えぇ?」
「はい、あーん」
問、普段全く話さない美少女のあーんにどう対処するべきか。
答え、知るかボケェ
どうすりゃいいのかわからず固まる俺をみて彼女がむくれる。
「ほら、早く口開けてくださいよ」
「いや、人前だし。そもそも俺ら、あんま仲良くないよな?」
俺の至極真っ当な問いに彼女はキョトンとした。
「え?デートなんですよね?」
「まぁ、はい」
「じゃあ、パフェ。受け取ってくれますよね?」
「⋯あ。」
仕方がないので口を開くと彼女は満足そうに俺の口にパフェを入れる。
むせるほど甘ったるいものが口の中に入ってきて思わず顔をしかめる。
あっめぇ。
「おい、甘すぎねぇ?」
「甘すぎるぐらいがちょうどいいんですよ。ほら、もう一口。」
「いや、普通に食えるから。」
「デート。ですよね?」
「⋯はい。」
甘ったるいパフェに甘ったるい時間。
頼んだコーヒーさえ甘く感じるこの時間を俺はなぜか悪くないと思った。
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「あの、本屋に寄ってもいいですか?」
「ん?いいけど⋯ここで解散するか?」
「いえ。一緒にまわりたいです。」
一緒に、という言葉にほんの少しドキッとした。
いやいや、と頭を振ってその感情を振り落とす。
きっと慣れないことをして疲れたんだ。それか彼女の美少女ぶりにあてられたか。
彼女は小説の棚をジッと見ていた。
俺は少年漫画ぐらいしか見ないから少し新鮮だ。
俺も彼女にならい小説の棚を見る。
「おすすめとかある?」
何気なく言った言葉に彼女は顔をしかめる。
「あの、あなたの趣味嗜好も知らないのにおすすめと言われても困るんですが?」
「あー。ごめん」
「いえ。」
こういうところは学校と一緒だ。
なんだか学校での彼女と今の彼女が違いすぎて一致したところを見ると安心する。
と、いうか。多分俺は彼女のことを知らないのだろう。
なんだか、彼女のことを知りたくなった。
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「まーくん♡デートどうだったのぉ?」
休み明け、連れがニヤニヤしながら近寄ってきた。
ウザい。
「別にどうとも。⋯まぁ、楽しかったかな。」
「ひゅー!!」
思わず漏れた本音に外野が野次を飛ばす。
うっぜー。
「それは良かったです。」
急に背後から声をかけられた。
振り返ると、彼女がいた。
彼女は薄い笑みを浮かべつつ、俺に歩み寄る。
「嘘告デート。私も楽しかったですよ?」
俺達がギョッとした顔をしたのを満足げに見た後、彼女は上機嫌に自分の席についた。
多分、彼女には敵わないな、と思った。
俺の心にほんの少しの彩りがついた⋯気がする。
あとがき
難しい⋯。これであって⋯はいないですよね。すいません。